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fragment (幽霊とか妖怪を撮影した男)

「とおおっ!?」


 男性が攻撃を回避する。その回避動作は極めて大げさで奇異で妙な動きである。とはいえ、攻撃を回避できていることに間違いない。そもそも攻撃を回避ということは攻撃されていると言うことだが何に攻撃されていると言うのかとツッコミを入れたいところであるが。

 さて、そんな奇抜な超次元的動きでの回避を行っている彼はカメラマンだ。手にカメラを持っているから多分そうだろう。何故カメラを持っている彼が攻撃をされてその攻撃を回避しなければならないのか。疑問は尽きない。それよりも、攻撃をしている存在に関しての方が色々と問題があるだろう。何故ならその存在の体は透けている。向こう側が見える。別に水とかビニール袋とかセロファンとかそういうわけではない。透けている以外にも浮いていることから、多分これは恐らくもしかしたら幽霊かもしれないと思われる存在である。文章に疑問的な内容ばかりだ。


「くっ、大人しく撮られるんだ!」


 男性はどうやらその幽霊を撮影しようとしているようだ。なぜこんな状態でも撮影をしようとするのか。カメラマン根性だろうか?

 いや違う。それこそが幽霊を退治するための手段なのである。彼の持つカメラには幽霊を除霊、浄霊するための力を持っている。どこかで聞いたことのあるような力である。まあ、そういう力を持っていることもあって幽霊と戦っているのである。やっていることは写真に撮影することなのだが。


「よしっ!」


 カメラのフラッシュが光り幽霊が浄化される。果たして撮影されたから浄化されたのか、光を浴びたから浄化されたのか。そもそも除霊か浄霊のどちらなのか。まあ、そういう疑問はさておき、幽霊を撃退した……のはよかった。しかしそれですまなかったのである。


「なにっ!? またかっ!」


 また幽霊の出現。それが攻撃してくる。襲い掛かってくる。しかも今度は数が増えて二体になっていた。


「こなくそっ!」


 奇抜で妙で変で頭のおかしい、可笑しな動きで彼は攻撃を回避する。その動きは一体どこで身につけたものかわからないが、そんな動きをしながら撮影のチャンスを探す。


「うりゃあっ!!」


 気合を入れた撮影。気合を入れようが入れまいが撮影は撮影である。剣を振るったりするわけでもないのだからあまり意味はない。まあ、相手が霊的な者であるのならば何か効果があるかもしれない、ないかもしれない。

 ともあれ、その撮影によって一体が消え去る。


「次ぃっ!」


 攻撃の回避、絶妙なシャッターチャンスを狙い相手を撮影。消え去る。


「ふう…………」


 幽霊たちがいなくなり束の間の休息である。


「なんかどんどん来るようになったなあ……もしかしたらこの場所は彼らのような幽霊が来やすい場所なのか? 霊道とかそういうものなのかもな……って、またかっ!」


 幽霊がいなくなってもまたやってくる。ゆっくりと休むには場所の移動をしなければならないのではないかと思うくらいである。


「くっ! たくさん来てしまったか! 流石に数が多い!!」


 数体というには多い、しかし十体には満たない数の幽霊がやって来た。


「うおおおおお!!」


 いくら気合を入れようと、やることはその奇妙で奇抜で面白おかしいギャグ的な動きでの攻撃の回避とカメラによる撮影だけである。


「とおっ!」

「そっちか!」

「まさかその刀が本体かっ!」


 幽霊、幽霊、幽霊。最初一度に来た数は十にも満たない数であったのに、徐々に数を増やしていた。そしてそれらを撮影していく。撮影していく。撮影していく。この調子でいけばフィルムが足りなくなるのではないかと思うくらいである。


「どんどん写真が増えていくなっ! 幽霊ばかりだけど……っ!?」

「……!」ビクッ


 今度撮影されたのは猫耳の着物の少女である。幽霊っぽいような幽霊っぽくないような、どちらかというと妖怪のような感じである。


「どうなってるんだ!!!」


 そう彼は叫んだ。











「面白い写真ですね」

「っと! いつの間に!?」

「あら、先ほどからいましたよ……それは合成写真ですか?」


 男性はアルバムを見ていた。奇妙でおどろおどろしい幽霊ばかりが撮影された写真が納まったアルバム。そんな変なアルバムを見ているところに女性が後ろから覗いてきたのである。当然その写真を見て合成写真と思うのも仕方がない。俗にいう心霊写真を撮れることはあり得ないと考えられているし、仮に撮れてもこれほどたくさんの心霊写真が、しかもはっきりと写っているものをどうやって撮ると言うのだろう。その疑問ももっともであると言わざるを得ない。


「いや、普通に幽霊たちの写真だよ」

「……そうですか。そういえば、奇妙で大変な体験をしたという話をしてくれたこともありましたっけ?」

「ああ、あったかな」

「あれが事実だった……と言われても信じがたいです。ところで、その猫耳で着物の少女はあなたの趣味ですか? 私もこの格好をして迫ってみたほうが?」

「い、いや!? 違うよ!? 本当に違うから!?」

「あら、似合わないと思われますか?」

「そ、そんなことないと思うけど……はい、この話終了!」

「ふふふ……」


 アルバムを閉じて無理やり話を終了させる。そんな二人の夫婦の会話であった。仲が良いようで大変よろしい。なお、その後彼女が猫耳をつけて着物を着て迫ったかどうかは定かではない。

夢ネタ

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