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dragon rider IF それは召喚してはいけない者

「とりあえず、呼び出さないことには話しにならない。来なさい、私にふさわしい乗り手よ!」


 儀式を行うための魔法陣にフィフリアは手を伸ばし、それを合図に魔法陣が起動した。








 のだが。


「な、なに!? この揺れは一体……!?」


 ごごごごごごごごごご、と空間が鳴動し始める。起動した魔法陣は魔法陣としての本来の機能を果たさず、弱々しく淡い光を放つのみ。しかしその上には禍々しいまでの黒い光が、召喚のために使われる力が集まっている。


「っ…………」


 ぶるりとフィフリアが震える。この世界に存在する者としてその力が何なのか、どういう物なのかわからないとしてもそこから感じられる力はわかる。それはまるでこの世界のすべてを破壊しようとしているようなとんでもなく強大で巨大で絶大な力。ともかく大きな力。そしてその力はこの世界を破壊しようとその力を放つ………………と思ったところに。


「えっ?」


 パキン、と何かが割れるような音共にその黒く禍々しい力は真っ二つになる。いや、真っ二つになったのはその力だけではない。そこには亀裂が存在した。壁や床などではなく、空中、空間そのものに亀裂が存在した。フィフリアはそれを見ていた。見てて理解できないと思考を半ば放棄していた。

 その亀裂から手が出てくる。その手はその亀裂を掴み、ぐいっと広げる。


「きゃあっ!?」


 ばぎん、と世界がひび割れるような音がして亀裂が広がる。先ほどの黒く禍々しい力も破壊の力になり得るようなものなのかもしれないが、それ以上に世界を壊す力としてはその手の方が大きいのかもしれない。しかし、その手はごつごつとして大きいが、あくまで人の手に見える。そんな手が世界の亀裂、世界をつなげる道筋である次元の穴を掴み広げたのである。恐ろしい話だ。

 その手の主は広げた穴から出てくる。


「ふはははははは! 我輩参上っ!!」

「…………」


 その亀裂から出てきたのは筋肉隆々のたくましい肉体をした…………暑苦しく汗臭いような筋肉隆々の筋肉おばけな男であった。


「何やら起きていそうな場所があったので正拳突きをしたらこんなところに出てきてしまったな。何やら大変な様子だが、そこの娘っ! 何が起きたのか教えてもらおうか! なあに、何が起きていたとしても我輩が全力全壊で助けてやろうっ!」

「え!? い、いえ、そんな……」

「話せないと申すかっ! なあに心配いらぬ! 我がKARATEを見よっ! 秘技! 精拳一心突き!」

「きゃあああっ!?」


 筋肉男の拳がフィフリアに向かう。その拳はまさに神の如し。一瞬、一瞬よりも速くフィフリアを突き抜ける。しかしその拳はフィフリアを一切傷つけて居ない。突き抜けているのに拳はフィフリアにぶつかることはしなかった。


「なるほど、父親がやられたのか……」

「なっ!? 何故それをっ!?」


 拳を戻し男が話した内容はこの世界で起きた出来事。男が知りえるはずもない事実である。


「我が拳にわからぬものなどないっ! お前の体に、お前の精神に我が拳を当て、すべて訊いたのだ! これぞ我がKARATEの神髄っ!」

「ええっ!?」


 先ほどから悲鳴や驚きの声しか上げていないフィフリア。しかしまあ状況的に彼女がそうなるのもわからなくもない。それくらいに状況は異常である。いや、状況以上に目の前の男がとんでもなく異常なのである。まあ正拳突きをしただけで世界移動ができるような輩が普通なはずもない。


「行くぞ娘っ! 我輩がここで起きている全てを解決してやろうぞっ!」

「ちょ、ちょっと!? 掴まないできゃああああああああっ!?」

「ふははははははははははははははは!!」


 笑い声と共にフィフリアは男に掴まれたまま外へと向かう。城の中、兄の元まで。








「お前は何なんだっ!?」


 思わず叫びをあげる天人。その叫びを向ける相手は筋肉隆々の男。恐ろしい。とても恐ろしい。天人はその相手に恐怖を抱いている。


「我輩はただのKARATEに全てを捧げただけの男! 娘っ子を虐めているようでその制裁ということで我輩が力をぶつけに来たのだっ! 我がKARATEの力をとくその身に受けよっ!」

「なんで翼もなく空を飛べるんだっ!? どうやって浮いているっ!?」

「我がKARATEの力さえあればこの世の全てが思いのままだっ! それこそ我がKARATEの神髄、真の力! 極めた我がKARATEの力を見よおおおおおおおおおおっ!!」


 正拳突き。たった一突きのその一撃。その一撃が天人の船を吹き飛ばす。兵器が存在する船であるが、その兵器ごと、たった一度の正拳突きで消し飛ばされたのである。跡形も残らない。残骸すら残らない。ただ一度の全力の一突き、それだけで彼らの頼りである力が消し飛んだ。


「…………は?」

「はははははははははははははは! 我が力見たか! これこそ我が筋肉、我がKARATEの力っ!」

「う、うわあああああああああああああっ!!」


 天人は逃げる。目の前の男があまりにも化け物ゆえに。


「おっと。逃がすと思ったか?」

「ひっ!」


 しかしまわりこまれた!


「お前たちの住処まで飛んでいくがいい! はあっ!」


 正拳突き。先ほど船を破壊した一撃と変わらないように見える。しかし、その一撃は天人にぶち当たりそのまま天人を吹き飛ばすのみ。吹き飛ばす……とはいうが、本当に空の彼方まで飛んでいく一撃であった。それはそう、まるでギャグ漫画のぶっとばされた人が星になるかのように。


「すべて伝えるがいい。我が力、我がKARATEの強さを…………」


 あの勢いで吹き飛んで生きていられるとは思えないが、そこは男のKARATEの補正なのだろうか。その後も周りにいる残っていた天人は同様に吹き飛ばされ、天人の国に落ちる。そして彼らはその男の話を喧伝する。その恐ろしさ、その存在の異常さ。その話を聞き天人はしばらく行動を控えざるを得なかった、その時出ていた天人が使い物にならなくなり、兵器も失ったのだから仕方がないと言えるだろう。








「お帰り下さい」


 ネイーズがその頭を男に下げている。


「ふむ。しかし我輩がいなければ苦労するのではないか?」

「そうかもしれません。しかし、妹があなたを怖がっているので」

「ふむ……まあ、我輩も少々召喚の異常に少し乗っかってこちらに来たようなものだ。それ自体は構わないと言えよう。しかしそれでよいのか娘よ」

「っ!」


 びくっと震えて男の声に反応するフィフリア。彼女は既に涙目になっている。目の前の男が怖い。自分が召び出してしまったのがどれほどまで化け物であるのか。怖すぎる、恐ろしすぎる。天人の戦いでもそうだが、翼もなく空を走り、空に浮かび、その拳は全てを破壊し吹き飛ばす。男に言わせればただKARATEであるだけの拳の一撃であるそうだが、そんなことは関係ない。やっていることが異常で恐ろしすぎるのである。


「ふうむ……まあしかたがない。では、ふっ!」


 正拳突き。その一撃で世界に穴が開く。次元の穴、世界を移動する穴。たった拳の一突きでそれを行えるのだから本当にこの男は異常である。


「さらばだっ!」


 男はその穴に入り、そしてその穴は男が移動すると同時に閉じる。まるで嵐のような存在であった。

 その後、フィフリアは再度召喚を行う。そうして出てきたのは朱星関人。本来の運命で出会う相手で会った。


「ここは……」

「よ、よかった! あの男が一番相性のいい相手ではなくて!」

「本当にね……」

「そちらさんは?」

「私はフィフリア・ジグリッド! あなたは?」

「え? 俺は朱星関人だ。えっと」

「お兄様、この人を婿として迎えるのは構いませんね?」

「もちろん。いやあ、めでたい話だ」

「えっ」


 朱星関人はこの世界によくわからないまま召び出された。しかし、まあ、大きな出来事がその前にあったため、色々と展開が端折られたようである。しかし、彼の運命として悪い未来にはならないだろう。それが彼の望みに合致する物かどうかは別として。

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