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center 光と闇、善と悪

「この世界に隣接する五つの世界にはー」


 中心世界の学園の一部屋で行われる歴史の授業。歴史と言ってもこの世界の歴史はまたいろいろと複雑であり、話される内容は毎回本当に歴史家と言う内容になっている。実際に今彼女が話しているのは彼女たちの住む中心世界、蒼空界に隣接する五つの世界に関してである。


「それぞれの役割としてー、図書館のように各世界への繋がりを示すものー、永遠界のように時間基本となるものー、それぞれ役割がありますがー、紅世界は少々特殊でー、あの世界はあの世界の神である<大火守>が<世界源流>に生まれて彼女が見つけた時点で消え切っていない存在を回収し火の存在とすることのできる世界でー、本来はこちらに関係のない世界ですがー」


 紅世界は本来の成り立ちから少々特殊なきらいのある世界である。それゆえに説明が難しいうえに、現在の様相はその起源から大きく変わったうえに、その世界の住人<フレイアル>から得られる能力は中心世界の六能力に数えられる割りに名前が安定していないと言うさらに厄介な問題がある。

 世界の設定、神がどのようにどの内容を制定するか、それがいまだに決定していないと言う世界における曖昧な部分があるというのは大変なものだ。歴史もそうだが、この世界には未だに揺れ動く部分が多い。能力も六能力から一度大陸を元に四能力にまとめたが、憶えにくいと言うことで六能力へと戻った。恐らくはバランスの問題もあるし、基準的な問題もあったのだろう。実のところもっと分類分けしてもいいくらいとまで言われるほどだ。能力の一つ、<カノン>も魔法、物理、肉体、心などの種類があるが、その分類とは別に異質の分類があり、そこに区分されている能力は他の多岐にわたっている。

 下手に分類を増やすとそれはそれで面倒だが、逆にひとまとめにし過ぎるとそれはそれで多すぎる結果になる場合もある。もう少しなんとかならないものかとも思う所だが、何ともならない。うまく機能するのであればその状態が一番安定する。安定していればなかなか変動はしないものだ。


「双冥界は単なる冥界でー、魂の行き場ですー。転生もありますがー、まあそこまで言っちゃうともう今の私達には関係のないことですねー。裏世界はこの世界の闇を集めた世界でありー、現在の管理している神様には邪神がちょっかいかけてくることもあって大変ですー。さらに今は世界の半分が特殊な<ケイオス>によって奪われていましてー」


 世界が奪われる、というと問題があるように聞こえるが、五つの世界は元々の起源となる世界、性質があり、それ由来の化け物であることもあって問題はない。そもそも裏世界は現実世界への干渉による浸食の役割があり、それを神の代わりに行う悪役が必要なのである。神は神で管理の必要性がある。特に裏世界は中心世界における闇の要素の強い部分で、世界の底に近い役割を持つ。それだけ重要な所でもある。


「五つの世界は増えもせず減りもせずー、今まで安定していますー。これは五芒星のー」


 そうして歴史の授業は続くが、彼女はいつも通り大体話し終えた時点で生徒からの質問を受け付け始める。








 今回の内容はこの質問からだ。


「闇って悪いものなのー?」


 光と闇、善と悪。物事には対立要素がある。この質問の主が闇は悪い者か、と聞いたのは闇が一般的な物語などにおいて悪として取り扱われるのを知っていることや、今回の彼女の授業で裏世界という闇の世界とその内容に触れたからかもしれない。

 それはさておき、光と闇の性質について。


「この世界には神様がいます。神は光、神は善、それと対立する邪神は闇、邪神は悪、そんなふうに規定されています。つまりこれは光は善で闇は悪、と言う風に見える対立図かもしれませんがー、全然そんなことはないですよー? この教室にも闇に関わる能力を持つ人は多いでしょうー。闇、影、黒、関係能力を見ても様々な能力がありますー。ですが別に悪い子ではないですよねー? 世の中の悪人も、闇の能力を持っている人ばかりではありませんー。闇とは悪ではない。闇は単に闇であると言うだけですー」


 そもそも光や闇が善と悪に分けられる事自体がナンセンスである。


「そもそもー、光の能力を持っていても悪人はいますー。物事は二つの要素、光と闇や善と悪のように、対立する図式で分けられますがー、そもそもからして二つの要素はどちらかのみで成立する物ではありませんー。人は善も悪も持ち得るものであり、また光と闇も持ち得るもの。世界の成り立ちから、この世界は元々一つの大きなエネルギーから生まれており、そのエネルギーは全てを内包する混沌であるとも言えます。ゆえに人、この世界にある全てはあらゆる要素を持ち得るものです。もちろんそれの一要素が突出したり、強く表すことになったりとすることもありますがー。まあ、それが人の場合は能力として現れているわけですねー」


 能力は才能のようなものだが、本質的に言えばその能力を持つ者が有する要素である。名前も含め、その者に規定される要素。ゆえにこの世界に能力を奪う能力というものは原則存在しない。能力を奪うと言うことはその者の存在の一部を奪うと言うことになるからである。それは神が動く案件にすらなりえるほどの危険要素である。

 ただし、下層の世界にはそういった奪う能力がないわけではない。それはあくまでその世界の基準においての物で、かなり限定的な形となるものだ。他の世界では通用しないし神が通用させない。


「しかしー、闇が悪、光が善とされるのにはー、やはり色々と理由がありますねー。そうですねー、世界にもよりますがー、闇は負であり光は正であるとされることが多いのが要因でしょうかー。まあ、世界の起源、語られる始まりでも、元々世界には何もなく、そこに神が光あれと叫ぶことで光が生まれたとされるものがありますがー、このことから光は有る物とされます。逆に何もない状態、闇は無い物です。無と有はある種の対立要素でありー、光と闇の対立要素とも関わります。しかし、有るということは正であると言うことでもありー、正に対する対立要素は負でありー、そこから光と闇は正と負に分けられることとなったのかもしれませんー。また、心象において光は心の良い部分。闇は心の悪い部分。ここが善悪に繋がるところであるのかもしれませんしー、またなんとも言えないところですがー」


 様々な光と闇を決定づける要因が存在するが、この世界においての最大要因は神と邪神が大きいだろう。


「やはりー、神が光、邪神が闇というのが対立要素、正負を決める部分としては大きいでしょうー。はっきりしてわかりやすいですからねー。でも、神も邪神も本来は同じ起源の物ですからー、闇だから悪い、光だから良いと決めつけるのもよくないことです。でもー、それでは色々と納得できないでしょうからー、もう少し詳しく話しましょうー。闇という者に関してー」


 特に大きな理由として、光よりも闇の方が色々とわかりやすい。何故なら、この世界には闇を集める機構が存在する故に。


「闇は負の要素の強い物ですー。ですがー、決して負は悪とは限りませんー。そもそも善悪は精神の性質を示すものでありー、闇でも善であるものや、光でも悪である物がありますー。そもそも光と闇は属性や正負であって善悪とはかかわりの薄い物、もっとも全く関与しないと言うわけでもありませんー。先ほども言いましたがー、闇とは負の要素の強い物ですー。特に心象においてはその要素は顕著ですねー。心が闇に囚われる、心に闇が生まれる、神ですら起こりえるその事象は精神的に大きな影響を与えますー。負に落ち込んだ精神は時に悪に走る。そういう意味では闇が悪を生み出すことはあるのでしょう。ですが、それは闇が根本的に悪いと言うわけではありません。結局はその人がどうであるか、が大きいですからー」


 あくまで光や闇とはその本人の持つ性質を後押しするものである、ということだ。もともと悪の性質を持つ者が悪を抑えこんでいたのなら、負の影響で一気に悪に転がり込むみたいなことはあり得るだろう。その逆もまたある。悪人が誰かに助けられ、改心する。そういったケースもまたあり得るのだから。そういう点では善悪はそれが決まってしまった時点で最後まで一貫する物でもないと言える。光や闇の属性要素とはまた違う変動的な性質のある物だろう。


「この闇は、授業でも言いましたっけー? 裏世界に集められるものですー。別に裏世界が悪と言うわけではありませんがー、やはり闇は負の性質の強いものでー、そういうこともあって裏世界はかなりの悪い物が住み着いていたりしますー。そのうえ、裏世界はこの世界への侵食もありますからそこから余計に悪い物という認識をしてしまうかもしれませんがー、重ねて言いますが裏世界は悪いものではありません。いいえ、厳密に言えばこの世界をよくするものと言うことになります」


 よくすると言われてもよくわからないと言った顔で生徒たちは教師を見つめ続きを促す。


「この世界にも闇はあります。様々なもので、人の心から生まれる闇はかなりの物でしょう。負の性質、例えば怒られた、物を失くした、その程度でも精神的な負は生まれます。時にそれはその人が受け入れられる負の容量を超える。あまりに高まった負はどれだけ善い者でも悪に変える危険がある。それを危険視した神は、受け皿を超える闇を集める機構を作りましたー。天の神に、底の邪神。<底層>である闇の底。邪神の住まう世界ですー。そこはあらゆる世界の溢れる闇の受け皿でありー、そこに闇が集められるからこそ多くの世界で悪人の発生が減るわけですー。この世界でもまたそうですがー、この世界では裏世界と言う別の受け皿がありますのでそちらで受けてそちらが受けきれないものが底に行く感じでしょうかー」


 世界のすべての闇を集める。それが邪神の持ち得る役割である。もっとも、彼女は場合によっては世界を闇に塗り替えることもする。そこには彼女なりに色々と理由があるわけである。しかしその彼女の持ち得る役割故に、あらゆる世界において悪人の発生が減少しているのは大きい案件だ。中心世界を含め、悪人少なく善人が多いというのもそういう理由からだ。

 とはいえ、闇を少なくしすぎるのは世界として不安定に過ぎる。必要に応じ世界における闇の要素を高めなければならない。それを担うのが中心世界では裏世界と言うことになる。世界への侵食で集まった闇を戻す。もちろん過度に戻しすぎるとよくないので適度に戻す形になるのだろう。


「闇はわかりやすいですがー、逆に光はわかりにくいですねー。光の要素、善悪における善ですがー、光と闇の起源でもそうですがー、光は有るもの、光は正であるもの、私達は基本的に正でありある物である。自分のいる立場に在るからこそ、そういう物に対する認識が薄いと言うのがあります」


 人とは善である。これは基本的な原則としてこの世界に存在する。善とは表である。神と邪神は対立する者、神が正であり邪神が負、神が光で邪神が闇、この対立図は多くの他の者にも合致して、神とは表であり邪神は裏である。世界とは基本的に表であり裏ではない。すなわち世界とは善であり光であるということである。裏世界は裏であるがゆえに、闇であるということだ。ただし悪ではない。そのあたり面倒で複雑な色々があるのだが。


「皆さんもー、ちゃんと自分がどういう者で、どういう立場で、どういう役割を持ち、どう生きるのかー。考えろ、とは言いませんがー、ただ意味もなく無為に過ごすのではなく、意義のある人生を過ごしてくださいねー」


 ちょうど授業終了の鐘が鳴る。


「それではみなさん、宿題はやっておいてくださいねー」

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