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center 名前がない神様たち

「世界の生まれは色々ありますがー、この世界が中心世界と呼ばれる発端は最初に生まれた世界であるからで―」


 世界の始まり。この世界でも世界を作り出す起源は色々諸説あるが、明確に言われているのは最初に生まれた五つの神。世界存在とも呼ばれる五種の世界孫座によって作られたという神話の話が主に言われていることである。とはいえ、実際にそうであるのかは否定的な意見も多い。この世界は他の世界とも比べ特殊であり、そもそも中心世界とも呼ばれる理由にこの世界が世界の最初であると言うことがあるからというのも理由である。

 始まりの五つの神も、そのうちの一人は世界結縁存在は中心世界、蒼空界に付属する世界の一つ、図書館の<司書>として活動している。他の世界存在も、上層に二人、中層の神所世界に二人と別れている。本当に最初にその五神が生まれているのならばもう少し体裁を整えた立ち位置にするものではないだろうかということだ。それぞれの役割はうまい具合に繋がっているのに、それぞれがいる場所はまったく違う。それは少し奇妙に見える。

 それに、その話があるのならば天層と呼ばれる創造主の存在する世界とその層についてもおかしな話になってくる。世界における創造主、神に邪神。これらは他の多種多様に存在する神を凌駕する特殊な存在であり、一部の神や関係者しか知らないが全ては創造主である神に帰属するものであるとも言われており、そういう点からもこの世界に存在する創世神話についても反論的な議論は多い。

 まあ、多くの者にとって創世神話とかそんな自分に関わりの無いことはどうでもいいことであり、興味を持って調べる研究者や学者でもなければそうそう意味の無いことばかりである。もっとも、そのあたりの話は世界の構造や成り立ち、神の在り方や役割についての知識にもなるので全く授業で触れないと言うこともない。


「せんせー」

「はい。なんですかー?」

「なんで神様に名前ないのー?」


 神様に名前がない。神、邪神、世界存在に関しても多くは個人の名前が存在しない。例えばこの世界でも四つの世界存在は世界の管理者、世界の維持者、世界の破壊者、世界の創造者と呼ばれている。神所世界には二言の神と呼ばれる『伊達と酔狂の神』を筆頭に個人の名を持たない神が多い。


「名前はありますよー? この世界でも、世界の管理者とか、世界の維持者とか、世界の破壊者とか、世界の創造者と呼ばれている人たちがいますがー、神様の場合それが名前です」

「えー? でも私たちの名前とちがうよー」


 多くの世界に住む人々の名前は主に姓名を持つ名前、『○○ ○○』や、『○○○○・○○○○』みたいな形になる。厳密に詳しく言うと複雑になるが、つまりは固有の個人の名前を持つと言うことである。しかし、神の場合仰々しい名前、『○○の管理者』、『○○と○○の神』、『世界○○存在』など、いうなれば個人の名前ではなく役職や役割、力の形態をそのまま名称としているのである。それは名前と言うべきものか。


「そうですねー。私たちの名前とは確かに違いますがー……ではー、この後質問の時間はなくして、今回は名前について話しましょうかー」








 授業も教えるべきところは終わり、次に移る。まあそもそも彼女の行っている歴史の授業はそれほど重要ではない。予習復習さえしっかりやっていればどうとでもなるものである。


「ではー、名前に関してお話ししましょうかー。そうですねー、名前とは個人の存在を示すもの、というのが一般的な名前の役割です。例えば、同じ名前の人はほとんどいないでしょう? 私の場合、『天羽風那』という名前を持っていますが、私と同じ名前の人に会ったことはありません。よくある名前かそうでないかでも違ってはきますが、つまり名前とは個人を示すものなのですねー」


 同姓同名、世界のあちこちを探せば見つからないこともない。とはいえ、様々な名前の形態が存在しているこの世界、カタカナと漢字の混じりで例えば『マクラトン・祐司』、『天名・ハミルトン』、『原井クリスティア』など、名前の現し方もいろいろとあるこの世界。そもそも『介ルトン』とか明らかにこれは個人名でつけられている物ではなく何か別の名称からとった物だと思われるような名前もある。結婚で名前の形が変わることもあるし、偽名を本名にするケースもある。また、神様のように役職名が付加されたりとそれこそ名前に関して自由な点が多い。それゆえに同一名を持つケースは殆ど無く、かなり少ないことになる。

 また、そこにはある理由もある。


「それに、名前とはその存在を示すものです」

「存在を示す?」

「はい。私を例に出すと、『天羽風那』。この名前の形態、漢字を有する名前ではよくあることなのですがー、名前に存在する漢字、この言葉、文字は表意文字であり、その字そのものに意味が存在します。天、羽、風。これらから連想するものとして、空や鳥、場合によっては<アンジェリア>が存在しますねー。事実、私の能力は<天使>ですし、私の血筋に彼等の存在があるということからもありますがー、それゆえに私の名前は『天羽風那』となっているのです」


 それは少し奇妙な発言である。名前、下の名前として存在する『風那』はともかく、『天羽』は名字ではないか。まあ、彼女の家系に<アンジェリア>、俗に言う天使が含まれるのであれば関連する名前を有していてもおかしな話ではない。しかし、名前が変われば事変わるのならば結婚すればその在り様も変わるのでは? と考えることもできる。


「名前、特に最初につけられた名前はこの世界では大きな意味を持ちます。他の世界では名前はただの個人の呼称にすぎませんが、この世界ではその存在を示す、その存在のありようを示す、その存在の起源を示すものです。まあ、名前が変わることもなくはないので絶対にそうだとはいいません。問題はその時点の名前ではなく、名鑑に記載されていることが大きいですからー」

「名鑑ってなにー?」

「多くの場合は<創造主の名鑑>と呼ばれるものです。創造主は世界を作りました。しかし、世界以外にも、その世界に住む、存在する種もいろいろと作り出しているのです。多くの場合、ただ作り出すのではなく、その人物に関してどういう存在か、どういう力を持つのか、どういう人生を有するのかを創造主は自身の作り上げる名鑑に書き上げたうえでそこから作り出すのですよー」


 これを、創造主はキャラクター辞典と呼んでいたりする。少々世界観にそぐわない名称だと思う。しかし、この世界においてその事実を知るのは創造主のみである。なのでまあ、問題はない。


「え!? 私達って作られた存在なの!?」

「神様ってすごーい!」

「えー!? なんかやだー!」


 自分たちが作られたものである、と言われると当然だが怖い。世界シミュレーション仮説。世界が誰かに作り上げられたものであり、自分たちも作り上げられたものであると知り、そしてその人生の何もかもが操作されている。そういう考え方だ。しかし、それは恐ろしいものである。自分と言う存在がぐらつくほどには。


「大丈夫ですよー。神様に作られた存在はもう大昔の話になりましたー。今の世界の人々は、そんなことはありませんからー」

「どういうことー?」

「そもそも、名鑑自体が今では機能していない、存在していない状態です。それに、世界も何度も流動していますからー、余程重要な立場や神様に関するくらいでない限りは創造主が関連して作られた存在と言うことは殆ど無いものなのですよー。さらに言えば、仮に作られた存在でも、その存在が生まれた時点でその存在は独立していますー。創造主もよく、勝手に動き出して困るとぼやいているらしいですからー」

「へー」


 あえて聞くならば、その情報はどこから手に入れたのかと質問したいくらいである。相手が子供だからか、そこまで情報を漏らしている彼女はいったい何者かという疑問には至らない。いや、至っている者もいるかもしれないが、それほどに頭のいい子ならば下手に聞くのはまずいと察していることだろう。ゆえに彼女の発言に対するツッコミは入らない。まあ、しないほうがいいことでもある。諸々面倒にかかわるのはごめんだから。


「さてー、まあ私たちについての話は今は関係ない話ですねー。神様について、神様の名前について話しましょうかー」


 本題である。というか、そこに至るまでに名前についての話があったので結局はどちらも本題ではあるのだが。


「私達は多くの場合個人名を持ちますが、神様はほぼ個人名を持ちません。厳密に言えば、神様として生まれ、神様として役割を作られ、神様として君臨する神様の場合、ですがー」

「よくわかんない」

「神様の神様?」

「そうですねー。種族的に、神様は<ワールド>と呼ばれる存在であり、世界の運営にかかわる種族なのですねー。ですがー、彼らは生まれつき、最初生まれた時から神様である者とー、特殊な成り立ちと在り様、人生で神様になった、元々神様でない存在がいますー。厳密に言うともうちょっと違うことになるのですがー、まあ大雑把なのでこれくらいでいいです。そういうのは本来研究職になってから調べることなので今はいいですねー」


 つまり、最初から神様である存在と人間から神様になった存在の差だ。この世界の人間、人間に限った話ではないがこの世界にいる者は存在を持ち、名前を有する。それは神になったから捨てられるわけではない。ゆえに、多くの場合名前を持つ神様はもともと神様でない存在と言うことになる。逆に名前を持たない神様は元から神様であると言うことだ。例えば、『伊達と酔狂の神』とか。


「では、なぜ神様は名前を持たないのか? それは名前とは存在を固定する、固有の物としてしまうからです」

「えー? どういうことー?」

「名前とは呪いでもあります。親が子に名前を付ける場合、個に望みを託し名前を付けます。この子に希望がありますように、でのぞみ、と名前をつけたり、和やかな人間になってほしいということで和成と名付けることだってあるでしょう。勇気を持ってほしいなら勇也と名付けたり。他にも歴史の偉人にあやかったり、自分の名前の一部を託したり、様々な名前の付け方がありますがー、それはつまりどういう存在になってほしいかという願いがこもっている物です。それは一種の呪いとなり果てるのです。とくにこの世界では、他者の想念を受け特殊な影響をもたらす可能性は低くないことです」


 名とは呪いである。例えば呪術でも相手の名前を知ることから干渉したり、忌み名と呼ばれるその存在の本来の名前を知ることで支配したり、逆に名前を奪うことでその存在を亡失させたりと様々な作用がある。特にそういったことに関しては悪魔の部類は大きいだろう。よくある悪魔の支配に関してその本来の名を知ることが語られることはよくある。また、使い魔などに名前を与えることで実世界での形を持たせることなどもよく聞かれることだろう。それほどに名前というものは存在に対する作用が大きいのである。


「特に神様は、役割を持つと言う大きな実体です。名前を持つことで固定されるとその在り様に大きな影響が出てしまう。だから多くの場合神様は名前を持たないのです」


 紙に名前を持たせると、その存在は固定される。ゆえに神はその役割を名前に持つことが多い。だからこの世界の神は『世界の○○』と言う形で世界における役割を名前として使っているのである。



「また、神様の場合は他にもちょっと特殊な事例があります。多くは能力にかかわる部分になりますがー、名称を名前として有しそれを自分に関わるものとすることで、対象を広げる、大きな範囲を力とすることになるのです」

「……?」

「下手をすると能力関連の授業になりますので詳しくは言いませんがー、神様は能力、自分のかかわる分野を名前に持ちますー。それはつまり、その範囲、その全てがその神様の担当となるのです。まあ、一部の神様は違いますがー、例えば『維持と管理の神』はそのまま、維持と管理の能力が極めて高いと言うことになりますー。厳密には高いとか低いではなく、そのものに等しいと言う扱いですがー、まあそういうことを言い出すと面倒なことになるのでー」


 こういった話は複雑で長く面倒で、そして色々と大きい物事に関わる。一授業のあまり時間、その位置授業内で語るにはあまりに多様な内容となってしまう。なのでこれ以上はあまり語らない。


「先生ー」

「なんですかー?」

「じゃあ、神様や邪神はー?」

「神様……ああ、創造主、神のことですねー?」


 この世界の神、その中において神と邪神は少々どころではない特殊なものだ。名称からもそうだが、固有の物をもたない。邪神は少々違ってくるが、それでも範囲が広すぎる存在である。


「そうですねー。では、みなさん神と聞くと何……誰のことを考えますかー?」

「冥奈様ー!」

「世界の管理者!」

「世界創生存在ー」

「伊達と酔狂の神!」

「イエス様ー!」


 少々個人名もあるが、それはともかく。最後はちょっとこの世界では言っていい名前のか怪しいが、それはともかく。神様と言う存在は多種多様に過ぎる。それは別にこの世界に限った話ではない。世界によっては一神教であることもあるが、多神教で存在する世界では様々な神様がそんざいし、神となるとつまりはその存在全てを意味することである。


「そうですねー。たくさんいますよねー、神様。それらはすべて、『神』と総称することができますー。一神教においては神様は一人、一柱しか存在しないので個人の名称は必要とせず、単に神と呼べばいいだけですが、この世界ではそうではありませんー。でも、この世界に存在する神は神と呼ばれる存在です。それはなぜか。これは先ほど、神の名前に関しても話したことですがー、つまりは神とは総称のことであり、総合的な存在であると言うこと。厳密にいえば、この世界における神に与えられる力は神と言う存在の力であると言うことです」

「よくわかんなーい」

「これは、そうですねー。よっ。ここに羽でできたバケツがありますねー? このバケツが神様です。いえ、このバケツは神様と言う存在、その力の塊を入れておく器とでも言いますかー、えっとー、このバケツの中にある光が神様の力ですねー」


 能力を使用し器用にもわかりやすいようにする。普通にバケツと水を持って来れば楽なのに、と思う所だがこの程度で無駄に力を使った所で問題ないのでいいようだ。まあ、能力に器用でなければできないのだが。


「それでー、神様の多くの持つ力はこうやってコップに移した力なわけです。つまり、神という総称、存在の総合的な部分にあたる神と言う在り様にある存在はこの力の塊と言うことなのですねー。神とはつまり、すべての神そのものです。性格にはその持ち得る力の大本なのですが、ようは全ての神様を総合した存在が神です。しかし、この世界において神は一種の個でもありますー。まあ、それゆえに創造主とも呼ばれるのですがー、詳しい話はいいですねー。神様に名前がないのは、神の力であると同時に、すべての神様を総合するためでもあります。個を持つとその個に縛られる。名前は個を示すものであり、名前がない限りは個であっても個に縛られない。それゆえに、名の無い神は神と言う全ての物であることができる。ゆえにこの世界の神に名前は存在していないのですよー」


 神もそうだがそれは邪神もまたそうだ。もっとも、邪神は神に対する者、敵対者、光に対する闇に近しく、神に対する存在として生み出されているので厳密な部分では異なる。ただ、天に対し底に存在し、光に在るのに対し闇に在り、その役割としてこの世界のすべての闇を集め監督する立場を有するものとして存在する。実のところ、彼女は創造主の力の一端であり、神もまたその力の一端、創造主自身であると同時に力の一端とされているが、またそういう詳しく複雑な内容は別の話、一授業のちょっとした話でやるには長すぎるものである。


「あ、鐘がなりましたねー。では、ちゃんと予習をしておいてくださいねー」


 タイミングよく授業の終わりの鐘が鳴る。教師である彼女は宿題は出していないが、ちゃんと予習をしておけと生徒に伝え教室を出るのであった。

神様話と名前に関しての話。名前とは呪いである。

特にこの世界では影響力の高いもの。ただし漢字名の場合。

外国風の場合影響力は少ない。ただしないとも限らない。


実際、キャラ名を作る時に名前を意識することはある。

ただし基準が作者なのでわからないだろうけど。

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