第二章《破滅の死神》 Ⅴ
いつも、区切りのいいと思うところで切ってますけど、もうちょっと長くしたほうがいいと思いますけど。まあ、次の章から一話をもう少し長くしようよ思います。
レイアは後方に下がり、左手を空に掲げる。
「――氷剣領域」
再び空中に数十本の氷の剣が出現して、青く輝く刃の雨がアリスちゃんに飛来する。
アリスちゃんは屋上から飛び降りてこれを回避する。4階建ての校舎の屋上から飛び降りることは常人では自殺行為だけど、無原罪者である彼女たちにとっては何ら問題ない。
落下してるアリスちゃんは宙返りして校舎の壁を蹴りグラウンドに飛び出た。レイアも屋上から飛び上がりゆっくりとグラウンドに着地する。
二人は武器を構え見つめ合う。わずかの沈黙の後、レイアが口を開く。
「ねぇ、アリス、そろそろ終わらせようね・・・・・・」
「やっと、死んでくれる気になったのね?」
「違うよ。私は、私たちは貴女を倒す・・・・・・」
「私たち? まさか、フレアお姉ちゃんも戦わせるの? 魔女には人の心がないのね」
「・・・・・・これ以上、何を話しても無駄ね」
「それじゃあ、決着を付けよう」
互いに武器を上段に構える。レイアの剣は青く輝き、アリスちゃんの大鎌は闇に包まれる。
「水に沈みなさい! アクア・ブラスト」
「闇に沈め! ダーク・ブラスト」
レイアの剣から放たれる水の衝撃波と、アリスちゃんの大鎌から放れる闇の衝撃波が激突して、グラウンド全体を水と闇が呑み込む。
初めは互角だったが、やがて均衡が崩れ始めた。
「くっ・・・・・・」
魔力量でアリスちゃんに劣るレイアは、魔力を大量に消費しそうな攻撃をしているため表情に余裕がない。しかし、アリスちゃんは余裕の表情で口元に笑みを浮かべてる。
水の衝撃波を闇の衝撃波が呑み込みつつある。
「こうなったら・・・・・・、これならどうかしら?」
レイアは剣から左手を離して横に伸ばす、そこから氷の剣が六本出現する。剣一本一本に意志があるようにアリスちゃんに迫る。
「なっ・・・・・・」
迫り来る剣を見てアリスちゃんから余裕が一瞬消える。しかし、すぐに表情を戻して嗤う。
「相打ち覚悟かもしれないけど、死ぬのはレイアだけだよっ!」
アリスちゃんは一旦攻撃を止めて、大鎌を振りかぶって一回転し、六本の剣全てを破壊する。そして、回転し終わると同時に再度、ダーク・ブラストを放つ、最初に使った時とは比べものにならない威力だった。
闇が水をレイアを呑み込んだ。グラウンドは激しく削られており、地形が変わってると表現が正しいかもしれない。そして、そこにレイアの姿はなかった。
「どうしよう!? レシティア、レイアが・・・・・・」
わたしはレシティアに声を掛けたが、そこにはレティシアの姿はなかった。
「あれっ? レシティア・・・・・・?」
屋上を見回してもレシティアはいなかった。どこに行ったんだろう?
「レイア、死んだのかな? あっけなかったな~」
アリスちゃんは大鎌を肩に担いで勝利の余韻に浸ってる。そこに、艶っぽい少女の声が響く。
「アリス、まだ勝負は終わってないわよ~?」
「その声は、レシティアお姉ちゃん・・・・・・?」
アリスちゃんが声のした方向に振り向く。
「――スプラッシュ・ブルー」
水属性中級魔法・スプラッシュの応用魔法。圧縮した水流が解き放たれアリスちゃんを襲う。
「うわっ!」
アリスちゃんは飛び上がり水流から逃れる。着地してレティシアを睨む。
レティシアはレイアと瓜二つの少女で、違うところは髪の色が蒼色なのと、瞳の色が青色だということと、左目の下に泣きぼくろがあるの。レイアと比べて大人びてるというか色っぽいという感じだけど、性格はかなり子供ぽいところがある。そのレシティアが半透明の幽霊のような姿ではなく、実体を持ってたたずんでいた。
「妹に向かって、随分な挨拶だね」
「嫌だな~、ただの水遊びじゃない、戯れよ、戯れ」
「戯れたいなら、アリスと火遊びしない?」
「素敵なお誘いだけど、その歳で火遊びなんてしてたら、ろくな大人にならないわよ?」
「軽薄女のレシティアお姉ちゃんに言われたくないよ」
「酷い、私そんなに軽薄かしら?」
レシティアの視線がこっちに飛んできたので、反応に困っていると。
「相変わらずね・・・・・・、レシティアは・・・・・・」
「えっ!? レイア?」
声がした方を見ると、わたしの横に半透明のレイアがいた。
「今度はレイアが幽霊になってる!?」
「幽霊・・・・・・? まあ、似たようなものね・・・・・・」
「そうなの?」
「この姿は霊体と言って、精霊に近い存在なの・・・・・・、私に実体がある時はレシティアが霊体で、レシティアに実体がある時に私は霊体なの・・・・・・」
「なるほど。レイアとレシティアは運命共同体、ってことね?」
「そう、私はレシティアがいないと存在すらできないの・・・・・・」
「えっ・・・・・・?」
「いいえ、気にしないで・・・・・・」
レイアは悲しげに微笑んでいた、その姿が痛々しかったのでわたしまで悲しくなった。
「私は大丈夫・・・・・・、レシティアが代わりに戦ってくれるわ・・・・・・」
「そう・・・・・・」
わたしは悲しい気持ちを紛らわすようにレイアに寄り添った。触れることはできないけど確かにそこにいるレイアのことを感じていたかった。
次回、レシティアとアリスの戦いです。次で第二章も終わると思います。




