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最終章:新たな物語と断罪されない未来
それから数年。
私は、王立図書館の司書として働きながら、異世界の知識を活かして教育改革に携わった。
農村の子どもたちに読み書きを教え、女性の教育機会を広げる。
エリゼとは、毎週お茶を飲みながら語り合う仲になった。
イザイアは、エリゼと結婚し、穏やかな治世を築く。
そしてある日──
「アリゼ先生、この本、面白いです!」
小さな男の子が、私が書いた本を手に走ってきた。
表紙には──
『悪役令嬢ですが今回は逃げました』
私は微笑んだ。
夜、ベランダに立つと、頭上には星空が広がっている。
「……あのとき、逃げなかったら」
牢獄の中で、人生を終えていたかもしれない。
でも、私は逃げた。
そして──
「逃げたからこそ、ここまで来られた」
運命に従うだけが正解じゃない。
逃げることも、戦うことと同じくらい、勇気がいる。
「次は……私が、誰かの光になれるように」
風が、髪をなでた。
──悪役令嬢の物語は、ここで終わりじゃない。
新たな物語の、始まりだ。
THE END