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第48話 クラン『黄金の翼』へ

 クラン『灰黒の鉄壁』での治療は、10日で打ち切りとさせてもらった。

 【建城鉄壁】スキルの修得は、5日ほどで終了したのだが、感謝を込めて延長したのだ。

 レフレオンはリベンジしたがっていたが、放置することにした。

 いくらレフレオンでも、あの防御を超えるのは無理だと思う。


 【建城鉄壁】を修得してわかったが、今のところ強度の限界が見えないほど硬い。

 俺の魔力量では、全身を防御することができず、防御したい部分に魔力を集中することで、同等の硬度を持たせることができた。

 ……いつも魔力量のなさに泣かされる。

 魔力量を増やす方法は未だに見つかっていない。



 クランに戻った俺とマーガレットは、次の目的であるクラン『黄金の翼』に入る準備をすることにした。

 マーガレットは、治療で出張している間も、【以心伝心】の練習をしていたらしく、呼びかけた相手からの返信を受けられるようになっていた。

 そのおかげで、ヴェロニアとマーガレットの魔道具開発の状況も把握することができた。


 クラン『暁の刃』が順調にダンジョン攻略を行っており、魔物素材の確保が楽になったようだ。


 そしてついに、変装用の魔道具”変化の腕輪”の開発に成功した。

 素材にワンダーカメレオンという、擬態能力を持つ魔物の皮を使用している。

 この皮を加工したものに魔力を流すと、幻覚を見せることができる。


 変化の腕輪は、実際より老齢化した姿になるよう調整したそうだ。

 他の姿に変わることもできるのかと聞いてみると、返答がなかった。


 老齢化した人物の設定は、クラン内の話し合いで決めていった。


 名前はチェスリーのままとする。

 偽名を使うと俺が混乱し、返って変に見られるかもしれないということだ。

 現在の年齢とかけ離れた姿なら、同名でも同じ人物とは思われないだろうと。


 職業は冒険者で、ダンジョン攻略を行っていたことにする。

 リーダーのマックリンのスキルを視るには、ダンジョン攻略に参加する必要があるからだ。


 スキルは【転移魔法】とする。

 上級クランに入るために、転移魔法が使えることを売りにする。

 転移が使えれば、危機に陥った時の緊急退避、ダンジョン内に確保した拠点への移動、物資の輸送など、上級クランでも必要な場面がいくらでもある。


 おまけで戦術も考えられます、をつけ加えてもいいかもしれない。

 上級クランで俺の戦術が通用するかは不明だが……。



 クランからのサポートは、マーガレットとミリアンが担当する。

 マーガレットの【以心伝心】があれば、いつでも連絡がとれるので、困った時の相談や、アドバイスを受けることができる。


 ミリアンには、新たに開発した隠密用の魔道具”気配遮断のローブ”を使ってもらう。

 グレイスの【暗中飛躍】スキルで、気配を完全に消す、という効果がある。

 この気配を消す効果を研究し、魔道具で実現することに成功したのが、”気配遮断のローブ”だ。

 上手く使えば、他のクランメンバーに気付かれることなく、俺と接触することができるだろう。


 これなら大丈夫そうだな、と俺は思っていたのだが……。

 ヴェロニアとミリアンの、俺に対する心配事の話が止まらない。


 「う~ん、まだ不安ね。やっぱりダンジョン攻略に混ざるのは危険じゃないかしら」


 「でも転移があれば、退避はいつでもできますよね」


 「そこがねぇ。チェスリーが無理して転移の魔力が残ってないとか、他の人を見捨てて逃げられないとか、ありえそうじゃない?」


 「う、否定できませんね。攻撃魔法を使わなければ魔力は大丈夫……でしょうか?」


 「治療の魔法が使えるからねえ。メンバーが危なかったら絶対ホイホイ使うでしょ」


 「なるほど……。転移用の魔力だけ、どこか別に分けるとかできませんかね」


 「魔道具で予備魔力を貯めておく……できるかもしれないけどダメね。その魔力すら使いきっちゃいそう」


 「それならシルビアさんを保険にしておきましょうか。チェスリーさんにシルビアさんの転移陣を携帯してもらうようにして」


 「それいいわね。マーガレットを司令塔にして、【以心伝心】で連絡がつくようにしておけば、緊急対応できるわ。でもこの手を使っちゃうと、いろいろバレそうね」


 「”気配遮断のローブ”を使ってもらえばばどうでしょう?緊急時ですし、転移はチェスリーさんが行なったってことで誤魔化せそうです」


 「それ採用ね。アリステラに、ローブ作るの頑張ってもらいましょ」


 「後は、老齢ならではの病気設定もつけてはどうでしょう?3日に1日は必ず休まないと体がもたないとか」


 「そうねえ。都合のいい症状の病気ってあったかな。ジュリーナ姉に聞いてみようか?」


 「ジュリーナさんなら、知ってそうですね!是非お願いします」


 二人の会話を聞いていると、心がチクチク痛むような気がする。

 俺のための会話なのに、俺の弱点が次々暴露されているような。

 そんなことないよ、と言えない自分が情けない。


 「そういうことで、もうちょっと『黄金の翼』行きは延期ね。マーガレットやアリステラにも再確認したいし」


 「ハイ……りょーかいです」



 クランメンバーが準備を進める中、俺も追加の準備で忙しい日々を送っていた。


 変化の腕輪で20歳ほど老けた姿にするのだが、実年齢と離れるほど魔力消費が大きくなる。

 俺の魔力量は少ないので、ミリアンに定期的に魔力供給してもらうことにした。


 年齢に合わせたしゃべり方をするため、演技指導を受けたり、人物設定の暗記と、話していい事、ダメな事を再確認させられたりと、主に身バレ防止対策だ。

 



 そして10日経過……。

 ついに『黄金の翼』の面接に行く日がやってきた。


 今回は素性を隠すため、エドモンダ侯爵様の紹介状は使えない。

 クラン入りするには、俺の力が必要だと認めさせなければならない。


 『黄金の翼』のクラン拠点に行くと、リーダーのマックリンが直々に面接するとのことだ。

 さあ、気合い入れていくぞ。


 マックリンは鮮やかな赤の髪色が特徴で、なかなかのイケメンだ。

 見事に鍛え上げられた体をしており、いかにも前衛向きだ。


 「お前さんがクラン入り希望のチェスリーだな。どうして俺のクランに入りたいんだ?」


 「マクナルで活動しておったんじゃが、パーティーが解散してしもうての。わしも若くないから、最後に一旗あげたくてのう。意を決して王都まで来たんじゃ。そこでこのクランの噂を聞いたという事じゃよ」


 「……そうか。知っての通り、俺のクランは上級に認定されている。それなりの力がなければ、クラン入りは認められないぞ」


 「ふふ……わしは【転移魔法】スキル持ちじゃ。クランに欲しいとは思わぬか?」


 「な!?……転移は1日何回使える?それに転送できる量は?」


 「そうさの、1日8回ぐらいは可能じゃ。半径2メートルの範囲内なら、重さは関係ないぞい」


 以前は1日4回ぐらいが限界だったが、熟練する事で魔力消費を減らすことができた。

 転移だけなら1日30回以上可能になったが、変化の腕輪や他に使う魔力を考え、伝えるのは8回としておいた。


 「これは使えるな……。チェスリーはどんな仕事が希望なんだ?」


 「わしは、お主と共にダンジョン攻略をしたいからここに来たのじゃ。当然希望はダンジョン攻略パーティーにいれてもらうことじゃな」


 「転移が使えりゃもっと楽な仕事もあるだろう。何故ダンジョン攻略をしたいんだ」


 「転移の便利屋などご免じゃ。わしはダンジョン攻略が生き甲斐なんじゃよ」


 「そうか……他に何ができるのか教えてくれ」


 「ふむ……冒険者としてそれなりにベテランじゃからの、剣や短剣は扱える。魔法も使えるが、転移魔法を使うなら、攻撃には使いとうないの。あとは……後衛におることが多いから、戦術を考えるのは得意じゃ」


 「わかった。住居は必要か?」


 「不要じゃの。古い知り合いがおって、近くに住むところがあるのでな」


 「俺からはこんなところだな。他のメンバーとも顔合わせしてもらおう」


 マックリンの案内でクランの会議室に通された。

 席に座って待っていると、メンバーを10人引き連れて戻ってきた。


 「全員じゃないがクランのダンジョン攻略メンバーだ。チェスリーが転移使いだってことはもう伝えてある。他に聞きたいことがあるやつは、自由に質問してくれ」


 「俺はバーナルドだ。あんたその年で攻略なんて大丈夫かよ?」


 恐らく30歳前後で、腕っぷしの強そうな男が話しかけてきた。


 「ほっほ、何なら試してもいいぞ。わしは槍も少々使えるでの」


 「……何で俺が槍使いだとわかった?」


 「その肩の筋肉の付き方は、槍が得意な奴に多くての。ちょっとした勘じゃよ」



 「私はリオノーラですわ。転移以外の魔法も使えますでしょ?どんな魔法が使えるのかしら」


 この人も30歳ぐらいかな。

 気の強そうな女性が質問してきた。


 「火、風、闇が使えるぞ。まあ、わしの魔力量じゃ大したことはできんがの」


 「転移の他に3属性も使えるのね……。複合魔法も使えるのかい?」


 複合魔法とは、複数の属性を合わせて使う魔法だ。

 火と風を組み合わせて、火を竜巻状にして放つ、ファイヤーストームなどが代表例だ。


 「使えんこともないが、範囲がおおざっぱで好きじゃないのでな」


 「私の得意は複合魔法です。馬鹿にする気かしら?」


 「いやいや、有効に使える場面もあるじゃろう。ただ、わしのは威力が弱くて使えんし、それに頼る戦術を好まんというだけじゃ」


 以前攻略した未発見ダンジョンのモンスター部屋は、コボルド200匹が相手だった。

 もしファイヤーストームが使えれば、殲滅だけ考えれば簡単だったかもしれない。

 しかし、ファイヤーストームは魔力消費量も多く、放った後は制御もできない。

 ダンジョンの壁は土や岩なので、制御を間違えれば崩落の危険もあるのだ。

 さらに、魔法が消えた後も高熱が残り、味方にも邪魔になる場合がある。

 ダンジョンでは、高威力の魔法を使える場面は意外と少ないのだ。


 その後もいくつか質問はあったが、ベテランの冒険者として相応の返答をしたことで、受け入れてくれたようだ。

 マックリンの他にも、優秀なスキルを持った人がいそうだし、これからの冒険が楽しみだの。


3章が終わり、次話から4章に入ります。


次回は「転移お披露目」でお会いしましょう。


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