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第46話 新たなスキル修得への準備

 ジェロビンとグレイスが数日ぶりにクラン拠点に顔を出した。

 二人が持ってきた情報は、今後のクラン活動にも大きな影響を与えることになる。


 先ずエドモンダ伯爵様の昇爵が内定したそうだ。

 魔班病治療の体制が整ったことで、協力関係にある教会や、実際に治療されたものから情報が拡散し始め、魔班病が治療できることが広く知られることになった。

 そして情報は国王の耳まで届いたのである。

 それに加え、エセルマー侯爵の不正を暴くことに貢献した。

 エドモンダ伯爵様はこれらの功績を国王に認められたということだ。


 あ、セバスさんの夢ってこのことだったのかな。


 元々エドモンダ伯爵様が治めていたマクナルの領地は、長男へと受け継がれる。

 エドモンダ伯爵様は、エドモンダ侯爵様となり、元エセルマー侯爵の領地や権限を引き継ぐことになる。

 今後はエドモンダ侯爵様として王都に住むことになるだろう。



 次はレアスキルの情報だ。

 王都から馬車で10日ほど離れた場所に、ウルカニルという商業都市がある。

 この商業都市に、クラン『灰黒の鉄壁』があり、リーダーのグレアートが【建城鉄壁】というレアスキルを持っていることがわかった。

 クランの名前はリーダーの髪の色と、レアスキル名からとったものらしい。

 スキル名が意味するように防御に優れたスキルのようで、商業都市の防衛を任されている。


 そしてもう一つ、アルパスカ王都に『黄金の翼』というクランがある。

 そのリーダーのマックリンが【一騎当千】というレアスキルを持っている。

 『黄金の翼』は、最近上級クランに認定され、マックリンの圧倒的な攻撃力で攻略の実績を重ね、注目度上昇中とのことだ。

 現在も大規模ダンジョンの攻略と管理を行っている。



 やはりこういう時はクラン会議だ。

 議題を整理し、今後の活動方針を決めよう。


 ちょうど伯爵様、おっと違った。

 エドモンダ侯爵様がクラン拠点に来たので、会議を開くことにした。

 出席者は、俺、ヴェロニア、ミリアン、マーガレット、アリステラだ。

 ジェロビンとグレイスは、情報だけ伝えると、さっさとどこかへしまった。


 「第6回クラン会議を始める」


 おお、やっと連続でクラン会議に出席できた!

 ……よく考えれば当たり前のことだった。


 「わしの事から伝えておこう。既に聞いていると思うが、昇爵が内定した。今後はわしも王都で仕事をすることになる。侯爵からの引き継ぎ事項で忙しくなるから、クランはここにいるメンバーに任せる事になる。そこでクランのリーダーを正式に決めたいと思う」


 あ、そういえばリーダー決めてなかった。

 俺がやる事になるのかな……。


 「リーダーはヴェロニアくんにお願いしたいがどうだろうか?」


 「え、あたしですか?」


 「そうだ。本来はチェスリーくんだろうが、外で活動することも多い。チェスリーくんの理解者で拠点で指示を任せられるのは、ヴェロニアくんが最適だと考えておる」


 「う~ん、あたしリーダーって柄じゃないんだけどなあ。今までそういうのした事ないし」


 と、本人は言っているが、俺も含めみんなが賛成した。

 リーダーとしてこれまでやってきたわけではないが、事の発端や問題のあらゆるところで、ヴェロニアが解決に尽力してきたのだ。

 それにこのクランは、リーダーに任せっきりになることもない。

 俺やミリアンを始め、クランメンバー全員で意思決定すればいい。

 幸い、今のメンバーは良好な関係を築けている。


 「わかったわ。その代わりみんなも協力してね。もちろん侯爵様もね!」


 「ごほっ、……わかっておる。わしは相談役としてクランに協力する。早速、進行役も交代するぞ」


 「いきなりねぇ。では、侯爵様、承知いたしました。ってことで、肩肘張らずにいくわよ」


 全員で拍手し、リーダー就任をお祝いする。


 「それじゃ、ジェロビンが調べてくれたレアスキルの事を決めましょ。チェスリー希望はある?」


 「そうだな、クラン『黄金の翼』のマックリンに興味がある。圧倒的な攻撃力があるみたいで、俺が最も欲しいものでもある」


 「あんた、いつも攻撃力がなくて嘆いていたものね」


 「……その通りだよ。探索で俺は補助に回ってばかりだったからな。戦術を立てても主役になることが皆無だった」


 「その代わり脳筋にならなくて済んだんだからいいじゃない」


 「そうだけどさ。やっぱこう最後にバシッと決めたいじゃない。男らしくね」


 「男らしくねぇ。いいじゃん卑怯に徹すれば」


 「卑怯言うな、戦術だ」


 「まあまあ、チェスリーさんの気持ちもわかります。しかし、どうでしょう。今のチェスリーさんが上級クランに行って大丈夫ですか?」


 ミリアンは心配しているようだが、俺は攻撃力が手に入るのが魅力的で、すぐにでもレアスキルを見てみたい。


 「そうだなぁ、転移が使えれば、クランに入り込めるとは思うし、いけるんじゃない?」


 「あんたねぇ……スキルが目の前にぶら下がると、ほんとポンコツになるわね。いきなり転移のことばらしちゃまずいでしょうが!上級クランよ?新メンバーとなると注目もされるし、ましてあんたは魔班病治療である程度顔も売れてるのよ?」


 「ま、まずいかな?マクナルにいた頃と違って、王都ではスキルが【転移魔法】じゃないとは知られてないだろうし」


 「自覚ないわねえ。あんたが魔班病治療師だってことは、既に隠せないの。それにマックリンのレアスキルを視るために、ダンジョン攻略に参加するでしょう?しかも大規模ダンジョンにね。手を抜けない状況で、あんたが武術や魔法を隠すわけないじゃない」


 「う……しかし【転移魔法】スキルで転移が使えて、さらに武術や魔法も全部鍛えました、じゃダメかな?」


 「……あんた【百錬自得】がどうして、みんなにバレたか、もう忘れちゃったのかしら?」


 「あっ!そうか……6属性の魔法が使えるとか、その辺りから問い詰められたんだった……」


 「そういうことね。チェスリーが『黄金の翼』に行くには、いっそ秘密をぶっちゃけるか、何か対策をするしかないの。わかった?」


 「……はい」


 ミリアンもこういうことに気づいてたんだろうな。

 そしてヴェロニアにきっぱりとダメ出しを食らうという流れか。

 

 「チェスリーさん!『灰黒の鉄壁』なら、私の知り合いがいますわ」


 「マーガレット、本当かい?」


 「ええ、同じ貴族学校に通っていた人が、『灰黒の鉄壁』にいるというお話を聞いていますわ」


 「知り合いの伝手が使えるのはいいわね。ミリアンどう思う?」


 「はい、商業都市の防衛がお仕事であれば、治療師として紹介頂くことができますね。私も少し治療ができるようになったので、助手としてついていけます」


 「私も助手としてついていきたいですわ。治療以外にも、【以心伝心】を使って内緒でお話できますわよ」


 「ちょ、ちょっと2人も助手がいるのは問題なのでは?」


 そう言った瞬間、何かがバチィッと弾けた気がした。


 「「それでは私1人で」」


 「「え?」」


 ミリアンとマーガレットが見事なシンクロを二言続け、動きが止まった。

 これは……あれがきちゃうのか?

 うん……きちゃったね、目で会話してるわ。


 「それじゃ、二人は放っておいて、続けるわよ。チェスリーは非常勤で働くほうがいいわ。治療師なら、常時いなくても許されるだろうし、都度こっちの指示もできるしね。模擬戦なんかがあれば、スキルを視る機会もあると思うわ」


 「……ああ、ダンジョンに行くわけじゃないから、危険も少ないだろうしな。それに鉄壁と名の付くスキルだから、防御力を高められそうだ。これも重要だからな」


 「うぅ……私も行きたいけど、我慢しますわ。魔道具でお役に立つよう頑張ります」


 「アリステラありがとう。心強いよ」


 「てへへ」


 「チェスリーくん、わしからも1つ言っておくが、治療以外の行為は慎むように。特に転移は、クランで用意した場所以外では使わんようにな」


 「ええ、わかりました」


 「本当に頼むぞ。わしの力で抑えきれる範囲に留めてくれ」


 「は、はい」


 俺の目標はダンジョン攻略だ。

 それが思う存分できる状況になるまでは、変に目をつけられないようにしなければ……。


 「それでだ……ミリアンくんとマーガレットくんは、いったいどうなっているのかね?」


 「あ、エドモンダ侯爵様は、初めてですか?」


 「そうだな。何なのだこれは」


 「えっと、俺もよくわからないので、ヴェロニア説明してあげて」


 「エドモンダ侯爵様、女は大事なことは目で語るのです」


 「は?え……え?そう……なのかね?」


 これが普通の反応だよな。

 うん、仲間が増えた。

 そもそもこの特殊技能ってヴェロニア発祥じゃないのか?


 「ということで、続けましょ。エドモンダ侯爵様は、『灰黒の鉄壁』への紹介状をお願いしますね」


 「あ、ああ。わかった」


 「『黄金の翼』のほうは、あたしの方で対策を考えておくわ。アリステラも協力お願い」


 「了解しました。何を作るか、いろいろ想像できて楽しみですわ!」


 アリステラは物作りが本当に好きなんだな。

 こちらもどんな物を仕上げてくれるのか楽しみだ。


 お、ミリアンとアリステラが動き始めた。

 やっと現実に戻ってきたかな。


 「チェスリーさん、私がご一緒することになりましたわ!」


 「今回は待機させていただきますね」


 どういう経緯で決まったかはわからないが、マーガレットが助手に決まったようだ。

 二人の表情を見る限り、特に遺恨はなさそうだし、平和的に解決したのかな。

 今回は王都から離れた場所に行くわけだし、転移で戻れるとはいえ頻繁に使いすぎるのも考え物だ。

 そうなると【以心伝心】で、王都に連絡が取れるマーガレットが助手でよかったかもしれない。


 「議題はこんなものかしら。後何かある?」


 「そういえば、レフレオンはどうしてるんだ?」


 「わしから話そう。レフレオンくんは、探索で必要なら呼んでくれ、とのことだ。それまではマクナルでスキルを鍛えながら待機すると言っておった」


 「レフレオンらしいな……」


 「では第6回クラン会議は終了!各自準備に励みましょ」



 クラン会議は終了か。

 俺は『灰黒の鉄壁』に行く準備を整えよう。



次回は「防御の秘密を探れ」でお会いしましょう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] クラン会議ですが40話で第6回会議があり連続出席となっていたので、今回7回で2連続出席ではないでしょうか?
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