表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

身内の敵味方

「だろうな」

リクヤが応じる。俺たちが散々議論と推論を重ねた答案は見事満点だった訳だ。

「…だが、従うわけにはいかん」

向こうも断られることは予測できていたのだろうが、心底意外なふうを装って片眉を上げて見せた。

「あれぇ?誰も私達の下に入れなんて言ってないでしょ?」

気味の悪い声が俺たちの耳を撫でる。

「と言うか、見てるものは同じだと思ったんけどなぁ」

「そりゃそうだ。同じところに立って同じ方向を見ていりゃ風景は一緒だ」

リクヤがはぐらかす。

「…やけに喧嘩腰ねぇ。優しくしてあげてんのよ。今のうちに首を縦に振りなさい」

すぅ、と元々細い目がさらに細められて僅かに覗く瞳が鋭い光を宿す。

「冗談じゃねぇ。最初に言ったはずだぜ、嫌だってな。殺されてねえだけ感謝しな」

イツカが前傾姿勢で突っかかって来たのを契機に、リクヤも喰いつく。

「じゃあ質問させてもらうわ。ルーナは勝てるの?」

「質問の意味がわかんねぇな。兵士がそれを言ったらお終いだろう。逆にガロウにつく利点が見当たらない」

イツカの核心を撫でる質問だが、返ってきたのは全く違う言葉だった。

「…いい?この国はどう足掻いても勝てないわ。この下り坂の異常事態に貴方達はなにに忠を尽くして、何を信じるの?」

俺はふと考えさせられた。なにに忠を尽くすのか。何を信じて戦うのか。

「アタシがガロウについたのは、ガロウに未来を見たからじゃない。自分に忠を尽くしたからよ。この事態に信じられるのは自分自身だけ」

「…随分さみしいな」

リクヤが捻り出した皮肉は、笑い飛ばされた。

「アハハハハ、それで?あなたは何を信じるの?」

「俺たちは俺たちを信じる。この国が好きだという気持ちが根底にあることを信じる」

総意一致。誰も異論を挟まない。

「…そう」

イツカの顔から笑みが消えた。

背筋がゾッとした。

いけない。あれは恐ろしい表情だ。

「あなたにはまた会えそうね。ルーナ最強の戦士イアン君」

こっちから願い下げじゃ‼︎

「こっちにもこっちの事情があってね。この事を知られて帰ってもらうわけにはいかないの。だから-」

イツカが右手を上げると廃墟の中からぞろぞろとルーナ軍人が出てきた。50人は下らないだろう。

「…なんでこんなに」

隣のアテネが呟いた。同感だ。


「行け!」


耳に馴染んだリクヤの声。

「俺が何とかする」

無理だ。

「アンタのスコアはイマイチだろう」

同じ事を感じ取ったリタが言う。そうだ。この人は根っからの指揮官だ。

「俺も残る」

はあ!?

「ふざけるな。俺の後はお前しかいねえ」

リクヤが反論になっていない反論をする。

「俺の最期の命令だ」

こちらに背を向けたまま、そう言った。

「…待ってる」

最初にクレルが走り出した。

「俺は隊長なんかなんねえからな」

次いでリタが走り出した。

「ごめんなさい、隊長」

リタを追うようにアテネも走った。

俺がリクヤの後ろに一人残った。

「お前は行かねえのか?」

「俺の命はアンタに預けたはずだぜ」

そう言って、ふた振りの剣を抜く。それを見たイツカが、

「あ、そーだ。その剣はね、ガロウの技術で作られたのよ。ガロウに繋がった政府の偉い人が作ったのよ。なんて名前だったな…たしか-」

言い切る前に俺はリクヤを残して走っていた。

そんな馬鹿な。

裏切り者がこんなに自分に近いところにいたなんて。

だとすれば、ヒエラは-。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ