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第六話 方針決定

 奴隷にしようと思った女騎士が、何故か姫だった。

 さっぱり意味がわからないよ。

 どうする、どうする俺!

 死亡フラグなんてレベルじゃねーぞ、死亡確定フラグ?だぞ!

 俺はもう何が何だか分からなくて、現実逃避に突っ走りたくなった。


 この国の第三王女、ルルーシャ姫。

 武勇を重んじるこの国のお国柄を反映してか、女だてらに騎士団長などを務める武闘派の人である。

 彼女がお忍びでギルドへ来ていることがあると風の噂で聞いたことはあったが……まさかフェルナだったとは。

 いろいろとアグレッシブすぎるだろ、姫。

 三女だからそこまで重要じゃないってのはわかるけど、姫としての仕事はどうした。


「さて……」


 今更解放しても、許してもらえるわけがない。

 激怒とかそんなレベルじゃないだろうからな。

 間違いなく打ち首だ、市中引き回しになっちまう!

 俺は断頭台に立ったところを妄想して、首筋をひやりとさせた。


 ……ここは、気付かなかったことにして予定通り彼女を奴隷にしよう。

 そうすれば暫くの間は俺に危険が及ぶことはない。

 危険な依頼を大量に受けていたはずだから、帰ってこなかったら真っ先に依頼で死んだと思うだろう。

 すぐさま奴隷の調査に乗り出すことはないはずだ。

 その間に何とかしなければならない。


 とはいっても、何とかするって……。

 俺は必死に頭をひねる。

 運がいいことに、この国はそんなに大きくない。

 脱出するにはそれほど手間はかからないだろう。

 一度国外へ脱出してしまえば、あとはどうにかなる。


 けれどそれだと、国に残した家族のことが心配だ。

 連座制度とかバリバリ残ってるしな。

 あんなのでも家族だし、俺のせいで処刑されたら寝覚めが悪い。

 かといって、経緯を話したら俺が衛兵に突き出されちまう。


 いっそ、潰すかこの国。

 大陸全体で見れば中小国家だし、総戦力も大したことない。

 大陸最強クラスの化け物、SSランク冒険者なら一人でも普通に滅ぼせるレベルだ。

 今の俺はまだAランク相当ぐらいだが……修行次第ではいけなくもない。

 それに潰してしまえば、そのあとは絶対的に安心だ。


「仕方ない、やるか」


 心を決めた俺はフェルナの顎に手を掛けると、無理やりこちらを向かせた。

 そしてその蒼い瞳を覗き込む。


「うぐッ……許さん……!」


「許してもらえなくても結構。汝、我が手の内に墜ちよ!」


 めちゃくちゃ抵抗していたが、<奴隷捕獲術>は無事に発動した。

 やれやれ、ちょっとほっとしたぞ。

 これでフェルナ、いやルルーシャ姫は俺の奴隷だ。

 厄介事を大量に背負ってきたぶん、それなりに活躍してもらわないと。


「これで君は俺の奴隷だよ。これからはお前のことを人前ではアリスって呼ぶから、ちゃんと返事して」


「……勝手にしろ」


「言っておくけど、逆らうとためにならないよ。痛いのは君だから」


「ふん……」


 フェルナは黙って俺から離れようとした。

 すると次の瞬間、彼女の身体がびくんッ!と跳ねる。


「ぬあッ!!」


 激痛のあまり、喉が裂けんばかりの雄たけびを上げるフェルナ。

 うわ、予想以上だよ……。

 見ているこちらまで痛くなってくるような光景だ。


「言っただろ、痛いのは君だって」


「クソッ……!」


「ついてきて。さっさと家に戻って出発の準備をしないと」


 当初の予定通り、俺は<火焔回廊>へ向かう。

 そしてそこをクリアし、Aランク冒険者となったところで隣国のフェルバーナという街へ向かうのだ。

 タイミングのいいことに、フェルバーナでは一ヶ月後、Aランク以上の冒険者を対象にした武道会が開かれる。

 その名も武皇決定戦。

 かつて大魔王を倒し、そのあまりの強さから武皇と呼ばれることとなった英雄を記念した大会で、SSランクも含めた大陸中の猛者が集まる武道会だ。

 本当は目立ちたくないから出るつもりなんてなかったのだけど……この際、出るしかない。

 出場者たちのスキルをまとめて手に入れることができれば、間違いなくSS級の強さが手に入るのだから。


「それでSS級の強さになったら、この国との戦争だな」


「……貴様、正気か?」


「もちろん。これが一番俺にとってリスクがない方法だし」


「まるでかつての<贋物王>のような発想だな」


 フェルナは冷やかな眼で心底呆れたようにそう言った。

 確かに、そうかもしれない。

 俺が持っているスキルは贋物王こと、この国最大の反逆者に『仕立て上げられた』男の持っていた<倒した相手のスキルの一部をコピーできる>スキルとほぼ同じなのだから。


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