第五話 VS女騎士フェルナ
フェルナがギルドへとやってくる日。
俺は密かにギルドの入口の近くで待ち伏せをしていた。
柱の陰に身をひそめて、フェルナが現れるのをじっと待つ。
フェルナは二週間に一度、城の方からギルドへとやってくる。
どういうわけかは知らないが、彼女は二週間分まとめて依頼を受けては、二週間分まとめて報告すると言うことをしている。
よっぽどのめんどくさがり屋でギルドへ来るのが面倒なのだとか、とにかく人と会いたくないからギルドへ来ないのだとか、他の冒険者からはいろいろ言われていた。
そうして息をひそめていると、フェルナが姿を現した。
銀ピカのミスリルフルアーマーを着込んだ彼女の姿は、ギルドに出入りする冒険者の中でもかなり目立つ。
俺のほかにも彼女の姿を発見した冒険者たちが、にわかに盛り上がった。
フェルナは自身に近づいてくる冒険者たちを適当に相手しながら、ギルドの扉をくぐった。
それからしばらくすると、二週間分の依頼用紙を抱えて彼女がまた出てくる。
俺は出てきた彼女のあとを、こっそりと追いかけ始めた。
歩き始めて三分もすると、ギルドからすっかり遠ざかり彼女の周りから人が消えた。
彼女自身もあまり人目につかないようにしたいのか、細い通りを選んで町を歩いているようだ。
何故だか知らないが、こちらにとっては好都合である。
「さて、そろそろだな……」
人気のない路地裏。
事を起こすには絶好の場所についた。
俺はこの日のために新調した片手剣を手にすると、一気に彼女の背後へと忍び寄る。
「何者!?」
兜から伸びる紅の髪を振り乱し、フェルナが俺の方へと振り返った。
気配で察するとは、さすがに王都で最強と目されるだけのことはある。
彼女は腰の剣を即座に抜き放つと、俺の剣を弾く。
キンキンキィン!!
激しい剣劇を交わす俺とフェルナ。
彼女も上級剣術を持っているらしく、なかなか勝負はつかない。
それどころか、単純な剣の腕では俺の方が劣勢だった。
仕方ない、あの手で行くか。
俺はとっさに考えた作戦を実行に移す。
「ウォーターボール!」
巨大な水の球がフェルナに向かって放たれた。
しかし、彼女はそれを避けようともしない。
「目くらましか? 無駄だ!」
フェルナは水の球を勢いよく突っ切ってきた。
全身がずぶ濡れになったが、特にダメージなどはないようだ。
逆に彼女が上げた水しぶきによって視界が利かなくなった俺は、その攻撃を上手く盾で流せない。
「ぬっ!」
バランスを崩した俺は、地面に倒れることとなってしまった。
さらに、右手に持っていた片手剣を取り落としてしまう。
そんな俺の上に、フェルナは容赦なく剣を振るう。
とっさに盾で防いだが、剣は重く、右手を刃が貫いた。
白い刃は俺の腕を貫通し、しっかりと地面にまで達する。
「うああああっ!」
「ふん、勝負あったな。お前、いったい何者だ?」
「やべえ、クソッ……!
なんてね」
「何!?」
「俺は魔法を使えるんだ。今の状況がわかってる?」
そう、俺はこの状況を計算して造り出していた。
フェルナを確実に戦闘不能にするためにな。
腕はすんごい痛いけど、白魔術を使えばすぐに治るし。
「魔法だと? 言っておくが、私の鎧はミスリルだぞ。生半可な魔法など、一切効かぬぞ!」
「そんな銀ピカの鎧、見ただけでわかるよ。あんたの体、びしょぬれだろう? この状態で雷属性を撃てば、水を通って鎧を貫通する」
「おのれ、ただ目くらましではなかったのか……! だが、貴様とてずぶ濡れ。撃てばともに感電するだけだ」
確かに、俺の身体もかなり濡れていた。
しかも地面には水たまりまでできていて、互いにそこに身体をつけてしまっている。
だけどな、甘いんだよ。
「アースって知ってる?」
「はッ!――」
「サンダーボルト!」
フェルナの手が右腕の剣、つまりアースを引き抜く前に俺のサンダーボルトが炸裂した。
彼女の身体を青白い電撃が走り抜ける。
地面の水たまりを伝って俺もわずかに感電したが、アースを伝ってくれたので問題になるほどではない。
「よーし、上手く行ったぞ! これで奴隷ゲットだぜ!」
俺は早速、フェルナの兜を脱がせようとした。
奴隷捕獲術は相手の眼を見ないと発動できないスキルなのだ。
だがここで、ふと思う。
「そういえばフェルナの顔って誰も見たことないけど……ブサイクじゃないよな?」
考えても見れば、戦場でもないのにフルフェイスの兜を被っているのはおかしな話だ。
それに、徹底的に人目を避けると言うのも……気になる。
後ろめたいこととかをしているわけではなさそうだし、人目を避ける理由と言えばそれぐらいしか考えられない。
「もしゴブリン並みだったとしても……腕はいいからしょうがないか」
俺は覚悟を決めると、フェルナの兜を脱がした。
すると、そこには絶世の美少女が居た。
「うわ、普通に超美人じゃん……ってあれ、この人……姫じゃねーか!!!!」




