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第三話 ダンジョンへ

 俺はその後三日間、ギルドの訓練場でスキルをパクっていた。

 おかげで今の俺のスキルは<上級剣術>・<上級槍術>・<斧術>・<盾術>・<格闘術>・<黒魔術>・<白魔術>となっている。

 本当はもっと上級スキルをパクリたかったんだが、さすがにAランク以上の冒険者はそうそう現れてはくれなかった。

 まあ、これでもチートレベルなんだけどな。


 さて、冒険者のランクを上げる方法は二つ存在する。

 一つは地道にクエストをこなして上げて行く方法。

 もう一つはダンジョンを踏破する方法。

 クエストでは一つずつしか上げて行くことができないが、ダンジョンの方は踏破したダンジョンのランクがそのまま冒険者のランクとして認められるという特徴がある。


 俺はダンジョンの踏破をして、一気にランクを上げることにした。

 潜るダンジョンはこの町の地下にある<死霊の墓場>。

 アンデッド系のモンスターが生息するBランクダンジョンである。

 ここを踏破してボスの討伐証明部位を持って帰れば、一気に兄ちゃんと同じBランク冒険者だ。


 適当に依頼をこなして小金を貯めた俺は、武器屋で装備を更新し、道具屋で回復アイテムを買い込んだ。

 さあ準備万端、あとは出発するだけだ。

 俺は町の中央広場にあるダンジョンの入口へ向かうと、衛兵さんにギルドカードを見せて中へ入ろうとする。

 もちろん、ランクと名前ぐらいしか明かさないが。


「おいおい、Fランなのにこのダンジョンに潜るのか?」


「はい、駄目ですか?」


「駄目ってことはないけどよ……。まあいいぜ、気をつけて行きな」


 世の中無茶をする奴はたくさんいるのか、衛兵さんはうんざりしつつもあっさり通してくれた。

 大丈夫だぜ、俺は死なないからな。

 名もなき衛兵さんに手を振りながら、俺はダンジョンの闇へと潜っていく。


 しばらく進むと、マミーが現れた。

 包帯で全身をグルグル巻きにした、下級のゾンビである。

 昔の俺ならビビってただろうが、今の俺なら全く問題じゃない。


「そりゃッ!」


 ビュンビュン!!

 剣が唸り、あっという間にマミーたちの身体を切り裂いた。

 首を切り飛ばされたマミーたちは一瞬で倒れてしまう。

 予想以上に歯ごたえがないな、うん。

 この調子ならドンドン潜っても問題なさそうだ。


 階段を下り、階層を下へと降りて行く。

 モンスターはマミー、ゾンビ、ブラッドゾンビと徐々にランクアップしていったが、俺の敵ではなかった。

 そうして二時間ほどもすると、俺は無事に最深部の扉の前へとたどり着く。

 五メートルほどもあるゴテゴテとした悪趣味な扉だ。


「意外と大したことなかったな」


 俺が扉を開けようとすると、扉が勝手に開いた。

 中から物凄い勢いで三人の男たちが出てくる。

 彼らは血まみれで、全身ズタボロだった。


「ボスにやられたのか?」


「ああ、一人死んじまった! まさかお前、一人で行く気なのか?」


「そのつもりだが」


「やめとけ! 命を粗末にするな!」


 必死に止める男たち。

 俺は黙って手を振ると、彼らの制止も聞かずにボス部屋へと入った。

 まあ、スキルだけで行けばAランクを遥かに超えてるからな。

 Bランクのボス相手なら、最悪でも逃げ切れるだろう。


 ボス部屋は玉座の間のようになっていた。

 毛足の長い紅絨毯が敷かれていて、その奥にある金ぴかの椅子に王冠をかぶったゾンビが腰かけている。

 こいつの名はリッチ、アンデッド系の上級モンスターだ。


「カカカッ!」


 気味の悪い高笑いを上げながら、リッチは電撃魔法をぶっ放してきた。

 俺はそれを盾で防ぐと、一気にリッチの方へと駆け寄る。


 ビュンビュンビュウン!!!!


 剣が唸る。

 しかしさすがにボスだけあって、剣で俺の攻撃を防いだ。

 だが甘い、俺には魔法スキルだってある!


「ファイアーボール!」


 ガボーン!!


 リッチの身体がぶっ飛んだ。

 隙あり。

 俺は再び剣でラッシュを決める。


 ビュンビュビュビュン!!


 今度は杖で受け止めることさえできなかった。

 リッチの身体を俺の片手剣が切り裂いていく。

 一瞬でその骨だけの身体はばらばらになり、動きを止めた。


「よっしゃ!」


 俺は討伐証明部位である王冠を回収すると、ボス部屋を出た。

 するとまだ治療中だった男たちが、俺のことを驚きのまなざしで見る。


「すげえ、一人でリッチをやりやがった!」


「あんた何者だ!?」


 口々に俺のことを称賛し、俺のことを聞こうとしてくる男たち。

 うーん、名乗ってやってもいいけど絶対後々面倒なことになりそうだよな。

 FランのくせにBランクダンジョンを踏破とか、絶対に前人未到のことだろうし。

 だいたい、野郎に自分のことなんて詳しく教えたくないしな。


「名乗るほどのもんじゃねえよ。それじゃな」


 俺は男たちを振り切るとすぐさまダンジョンを脱出し、ギルドへ戻ったのだった。

 しかしその時の俺は知らなかった。

 あっという間にギルドの中で「名無しの超凄腕冒険者」として俺の噂が蔓延することになるなんて……。

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