第三十三話:忍びの闇闘
第三十三話:忍びの闇闘
境川の中洲において、二千余の民兵と地侍が忽然と現れ、朝露の如く消え去ったあの一件から、半月。
青嵐が駿河の茶畑を渡り、安倍川の水嵩が初夏の陽光を浴びて煌めく季節となっていた。
三河の国境を守る松平元康の陣営には、無用な挑発を厳に戒め、土塁と逆茂木を固める堅忍不抜の防衛線が定着し、前線の緊張はひとまず小康を得ていた。力攻めにて尾張を圧殺せんとする愚を捨て、兵を損ぜず、民を損ぜず、領国の内実を富ませて対峙する――翔次が敷いた不敗の理は、いまや駿河・遠江・三河の津々浦々にまで静かな浸透を見せていたのである。
しかるに――東海道の往来にひとまず平穏が戻る一方で、駿府の今川館の奥深き中枢には、音もなく、刃の如き冷気が忍び寄りつつあった。
事の起こりは、勘定方と文庫を取り仕切る三浦家の長老・三浦備後守が、蒼白な顔を小刻みに震わせ、翔次の私室へと訪ねてきたことであった。翔次は太守・義元より、軍略のみならず兵糧や文書の防備を改める権限を託されていた。
「……翔次殿。これをご覧くだされ」
備後守が差し出したのは、東海道の宿々における馬借や人足の割当帳と、遠江の白須賀から駿府へ運ばれた塩の荷受帳であった。いずれも今川家の兵站の根幹を記した秘中の記録である。
翔次は行灯の光の下、帳面の綴じ目を検分した。
「……紙縒の結び目が、極めてわずかに損じられておりますな」
「左様でござる!」
備後守は声を潜め、額の汗を手拭いで拭った。
「戸の錠は破られず、文庫の閂にも傷一つございませぬ。されど、帳面の紐を解き、再び結び直した痕跡が……ここ十日の間に三度。さらに、昨夜半には、文書蔵の番をしておった足軽二名が、物音一つ立てずに昏倒し、夜が明けてようやく目を覚ますという怪事が起きました。……何らかの薬を盛られたか、煙を吸わされたものかと」
翔次は無言のまま、帳面を机の上に置いた。
胸に、冷たい予感が走る。
かつて――永禄三年秋、沓掛の本営において文書蔵から北方の軍略書が盗まれ、仕掛けた罠さえ見破られたあの夜の記憶が甦る。
(……滝川一益配下の、草の者か)
前線における利家の朱槍、藤吉郎の流通工作、小六の水運。それら目に見える刃が翔次の知謀によって阻まれた今、敵は再び、目に見えぬ影の刃を駿府の喉元へと突き立てにきたのだ。
「備後守殿。宿直の番頭を咎めてはなりませぬ。騒ぎ立てず、これまで通りの刻限で見廻りを行わせてください。……敵にこちらの気づきを悟られては、二度と尻尾を掴めなくなりまする」
「は、ははッ……!」
備後守が退出した後、翔次は腕を組み、薄暗い部屋の中で一人、天井の梁を見上げた。
外では初夏の風が吹き抜け、館の庭の竹林がざわざわと重苦しい葉擦れの音を立てている。
(戸の錠も閂も破られてはおらぬ。ならば、侵入の手口は別にある……。内通者か、見張りの隙か、それとも建物そのものに見落とした穴があるのか……)
敵が文書蔵の内側にまで手を伸ばしていることだけは、もはや疑いようがなかった。
守りを固めるだけでは、いずれ綻びが出る。城門を閉ざし、番兵を三倍に増やしたところで、影に生きる者どもは屋根の隙間や床下の暗がりに紛れて潜り込んでくるのだ。
「力づくで捕らえようとしてはならぬ……」
翔次は呟き、墨をすり始めた。
前世で読み耽った兵法や情報戦の知識が、脳裏に一つの策を描き出してゆく。
忍びを狩る最上の手立てとは、網を広げて待つことではない。
敵が欲しがる餌をあらかじめ用意し、その餌を追う者が通る道を、こちらの手で作っておくこと――すなわち、偽情報を用いた誘引の策であった。
その日の刻限下がり、翔次は今川義元の御座所へと足を運んだ。
上段に座す太守・今川義元は、薄浅葱色の直垂をまとい、手にした白扇を静かに弄んでいた。その傍らには、前線より戻ったばかりの岡部元信が、鎧直垂姿で端座している。
「翔次。文庫の異変、備後より聞いたぞ。……尾張の影が、ここにまで及んでおるか」
義元の低く澄んだ声には、取り乱した色は微塵もなかった。
「御意にございます、太守様」
翔次は平伏し、懐より三通の書付を取り出して畳の上に並べた。
「敵は前線から今川の構えを崩せぬと見て、後方の兵站の急所を探り、焼き討ちを仕掛けて我が軍の補給を内側から崩さんとしております。……されど、見方を変えれば、これは敵の手練れを誘い出す好機にございます」
元信が眉をひそめ、身を乗り出した。
「誘い出すとな。翔次殿、草の者というものは風の如く現れ、煙の如く消えるものぞ。見張りを増やしても影すら踏めなんだ敵を、いかにして捕らえると申すか」
「敵の欲しがるものを、こちらから与えるのでございます」
翔次は三通の書付を指先で示した。
「ここに、三通の『兵糧集積計画書』がございます。表題も文面も、義元公の花押まで真物らしく整えた重秘の書状にございます。ただし、記された兵糧の集積地が、それぞれ異なっております」
翔次は淡々とした声音で、その策の骨子を解き明かしていった。
「第一と第二の書状にも、開けば分かるよう、包み紙の折り目と封じ紐に細工を施しておきます。勘定方では出納帳の綴じ込みの間に、馬廻衆の詰所では通達文書を納めた木箱の底へと紛れ込ませ、平素の務めを装って様子を探らせましょう。由比の寺院や安倍川河口に近い用宗の網元屋敷など、実在する拠点を記して敵が手を伸ばすかを探る備えにございます。
されど、真に敵を捕らえる策の要は第三の書状。以前に侵入の痕跡があった文書蔵へこれを置き、敵が読むよう仕向けるのでございます。三通の書状を用いるのは、敵の目を欺き、こちらの備えを悟らせぬため。いずれの書状が読まれたかを調べれば、敵の動きを推し量る手掛かりとなりましょう。内通者の有無までは詮議を待たねば分かりませぬが、侵入の足取りは絞り込めます」
翔次は第三の書状を取り上げ、言葉を継いだ。
「この第三の書状には『東海道の要衝・興津の清見寺の裏手にある寺領の蔵に、前線へ送り出す兵糧の一部を集積す』と記します。清見寺の裏手にある谷筋は狭い隘路となっており、東海道から離れ、伏兵を置くに適した地形にございます。敵がこの第三の書を信じて現れたならば……待ち構える我が手勢によって、包囲・捕縛することが叶いましょう」
義元は静かに翔次を見つめていたが、やがて口元に微かな笑みを浮かべ、白扇を膝の上でパチンと鳴らした。
「……見事じゃ、翔次」
義元の双眸に、研ぎ澄まされた光が宿る。
「盗まれるを待つにあらず、盗ませて敵の足をこちらの庭へ誘い込むか。……元信、聞いたな。清見寺の裏手の谷筋に、そなたの手勢二百を伏せよ。地形を改め、逃げ道を塞ぐ備えを整えるのじゃ」
「ははッ! 元信がこの命に代えましても、影の頭領格を捕らえて御覧に入れまする!」
翌日、翔次は自ら文書蔵へ入り、第三の書状を以前に改められた痕跡のある唐櫃の底へ納めた。見張りの足軽には一切の異変を告げず、平素通りの巡回を行わせた。勘定方の書庫と馬廻衆の詰所にも細工を施した書状がそれぞれ紛れ込まされ、信頼の置ける役人に執務を装わせつつ、出入りする者の不審な挙動を探らせた。
一日が過ぎ、二日が過ぎた。
駿府は、何事もなかったかのように穏やかな初夏の陽気に包まれていた。
だが、三日目の夜半。文書蔵を見張っていた者より、翔次のもとへ極秘の知らせが届いた。
「……唐櫃の蓋が、指一本分動いておりました。中身の書状は収まっておりますが、包み紙の折り目に、あらかじめ付けておいた目印のずれがござります」
勘定方と馬廻衆の詰所を見張らせていた者たちからは、不審な者の立ち入りも、包み紙の細工に触れられた形跡もなしとの注進が届いた。
翔次は静かに息を整えた。
(第一、第二の書状には手が伸びておらぬ。敵が文書蔵に狙いを定めていたのか、それとも他の二か所を探る必要がなかったのか。今はまだ分からぬ。だが、第三の書状に触れた以上、こちらが備えるべき場所は定まった。
第三の書状に手を伸ばした敵が、次に何をするか。偽りと疑って現地を探るか、それとも好機と見て火を放つか……。いずれにせよ、集積地を狙うつもりなら、荷が前線へ動く前に手を下すはず。敵が動く可能性のあるうちは、こちらも備えを解くわけにはいかぬ)
翔次は元信に手筈通りの出陣を促した。元信は昼のうちに清見寺の裏山を調べ、谷の出口を塞ぐ一隊、左右の斜面を押さえる二隊に分け、さらに後方の尾根道にも少数の兵を配して、夜までに配置を終えていた。
伏兵の配置を終えた翌夜。空は五月雨の気配を孕んだ重苦しい曇天であった。
東海道の要衝・興津。
名刹・清見寺の裏手の山裾、東海道からわずかに外れた谷筋に、寺領に属する古い米蔵が苔むした土壁を晒して佇んでいた。
蔵の周囲には、人為的に荷車が数台放置され、あたかも昼間に兵糧の搬入が行われたかの如き偽装が施されていた。蔵の窓からは微かな灯火が漏れ、番兵に扮した案山子が二体、笠を傾けて立っている。敵に「偽情報かもしれぬが、確かめる価値はある」と思わせるための、計算された舞台であった。
蔵を取り囲む竹林の暗がり、湿った土の中に、岡部元信率いる二百の槍足軽と弓足軽が、身を沈めて息を殺していた。
佩刀の鍔には布が巻かれ、長槍の穂先には泥が塗られて月光の反射を防いでいる。
その本陣の中央、わずかに高くなった塚の陰に、翔次が立っていた。
冷たい夜風が、麻の小袖を揺らして吹き抜けてゆく。翔次は目を凝らし、暗黒の谷底を見つめていた。
丑の刻の半ば。
夜鳥の声が、ぷつりと途絶えた。
木々の葉擦れのざわめきに紛れ、足場の悪い斜面を、獣のような身軽さで影が滑り降りてきた。
濃い藍や煤けた鼠色の粗末な小袖に身を包み、頭巾で顔を覆った者たち。足音は皆無。泥を踏む音すら立てず、水滴が草を滑るような滑らかさで、蔵の土壁へと吸い寄せられてゆく。
その数、八名。
先頭を行く男の身のこなしは、歴戦の武士すら息を呑むほどに研ぎ澄まされていた。背には短い刀を背負い、腰には火薬の入った竹筒と松明を携えている。滝川一益配下の中でも、選りすぐりの頭領格に相違なかった。
影たちは蔵の周囲に立つ番兵の案山子に近づき、それが偽物であると察知した瞬間、鋭い身構えを見せた。
「……罠か!」
先頭の男が身を翻し、斜面の上へと飛び退こうとした――まさにその刹那であった。
「――合図を出せッ!!」
塚の陰から、翔次の鋭い号令が飛んだ。
塚の陰で、待機していた兵が高く掲げた松明を大きく振った。
それを合図に、左右の竹林から松明が一斉に掲げられ、漆黒の谷底に赤い光が広がった。闇に紛れていた八名の姿が、一度に浮かび上がる。
「退け! 囲まれておる!」
忍びの頭領が叫び、地面に叩きつけた筒から白い煙が激しく噴き出し、足元を覆った。
頭領は一瞬にして左右の斜面を見定めたが、すでに松明の列と弓足軽の影が退路を塞いでいた。散れば各個に討たれる。ひとところを押し破るほかないと判断した刹那――。
「狼狽えるな! 煙に踏み込むな! 退路の竹矢来を倒せッ!」
翔次の下知が響く。
谷の出口を塞ぐ一隊が、あらかじめ道の脇に伏せてあった竹矢来を道へ倒し、出口を完全に塞ぎ止めた。
竹矢来に阻まれた先頭の者たちが足を止めた瞬間、斜面上から重石の付いた麻網が投げ落とされ、逃れようとした三名の足と腕に絡みついた。背後の尾根道へ抜けようとした者たちの先にも、待機していた押さえの兵が立ち塞がっている。
地の利を奪われ、光に晒され、退路を断たれた影たちは、もはや闇に溶け込む術を失っていた。
「掛かれェッ! 生捕りにいたせッ!」
元信の号令とともに、槍足軽たちが間合いを詰めた。
槍の穂先は終始、敵の身体ではなく退路を塞ぐことに用いられた。短刀を振るう者には柄で手元を打ち、倒れた者には複数の兵が組み付いて刃を奪う。
忍びたちは必死の抵抗を試みたものの、周到な陣立ての前に、致命傷を負わされることもなく八名全員が組み伏せられた。
「……おのれッ!」
頭領格の男が自害せんと短刀を喉に向けた瞬間、塚から駆け下りてきた元信の剛腕がその手首を押さえ込み、短刀を取り落とさせた。
カラン、と短刀が泥に落ちる。
「自害は許さんぞ。太守様の御前へ引き据えてくれるわ!」
静寂が、興津の谷に戻ってきた。
煙が晴れ、松明の光が照らし出したのは、泥にまみれ、頑丈な縄で縛り上げられた八名の忍びの姿であった。
周到な配置と合図が功を奏し、味方に重傷者を出すことなく、敵の精鋭八名を生捕りにしたのである。
元信は荒い息を吐きながら太刀を鞘に収め、翔次のもとへ歩み寄ってきた。
「……翔次殿」
元信の声には、確かな感嘆が籠もっていた。
「敵がどこを狙うかを見定め、先に退路を塞いでおくとは……。敵の動きを読み切ったというより、敵がいかなる手を選ぼうとも、こちらが後手に回らぬよう備えたのだな。某はかような忍び狩りを見たことがないぞ」
翔次は静かに首を横に振った。
「敵が手練れであったからこそ、こちらも備えを怠るわけにはまいりませぬ。あの者らが偽書を疑い、別の手を選ぶことも考えておりました。ゆえに、現れた敵を追うのではなく、現れ得る場所を先に押さえたまでにございます」
翔次の声音には驕りはなく、ただ仲間たちを無傷で守り抜いたことへの、静かな安堵があるだけであった。
翌朝。
朝光が駿府の町を染め始めた頃、今川館の大広間には、捕縛された忍びたちが引き据えられていた。
上段に座す今川義元は、押収された刀や火薬筒を冷徹な眼差しで見下ろしていた。広間に並ぶ前線の将・三浦上総介義就や朝比奈泰朝ら重臣たちも、息を呑んで末席の翔次を見つめている。
捕らえられた忍びの頭領の口から、厳しい詮議の末に白状された事実は、今川の首脳陣を戦慄させるに十分であった。携えていた符牒や道具の仕込みからも、清須の滝川一益が放った直属の手練れであることは疑いようがなかった。
「……狙いは、前線へ送り出す兵糧の中継拠点を突き止め、放火によって今川の物資輸送を滞らせることにあった由。……もし翔次殿の策がなければ、我が今川家は、戦う前に兵站の急所を焼かれ、足元を崩されるところでございました!」
元信が誇らしげに言上した。
広間に、どよめきが走る。
上総介が佩刀の柄に手を置き、呟いた。
「あの名だたる滝川一益の配下を……味方を損なわずに生捕りにしたというのか。……なんという差配じゃ」
泰朝もまた、深く息を吐いて頭を垂れた。
「正面の合戦にあらずして、闇の暗闘においてすら敵の裏をかくとは……。鍋蓋殿の眼には、まことに夜半の動きすら通っておるのか」
義元は静かに立ち上がり、広間の中央で平伏する翔次の前へと歩み寄った。
その顔には、威厳と、深い信頼の光が湛えられていた。
「面を上げよ、翔次」
翔次は静かに顔を上げた。義元はその肩に力強く手を置いた。
「見事であった。……敵の影の刃を逆手に取り、兵站の急所を守り抜いたその功績、一軍を破る武功にも勝るものぞ。そなたの知恵、今川の備えをさらに堅くするであろう。予もまた、そなたの見立てを聞いたうえで、天下の形を見定めようぞ」
「太守様……勿体なきお言葉にございます」
「元信」
義元は振り返り、厳然たる声で下知した。
「捕らえた者どもの素性や詮議の内容は口外するな。館内の厳重な牢へ繋いでおけ。……清須へ使者を送り、こちらが捕縛したことだけを伝えるのじゃ。『今川の備えに隙はない』とな」
「ははッ!」
軍議が引けた後、翔次は館の裏手にある櫓へと登った。
初夏の陽光が、駿府の町並みを眩しく照らし出している。安倍川の河原では人足たちが穏やかに堤防の補修に汗を流し、遠く駿河湾の波頭が白銀に輝いていた。
翔次は欄干に手を置き、遠く西の空――尾張の方角を見つめた。
滝川一益の手練れを捕らえた。兵糧集積地への焼き討ちを未然に防いだ。
局地戦において、今川は間違いなく完全な成果を収めたのだ。
――されど。
翔次の胸の奥底からは、手放しの歓喜は湧き上がってこなかった。
(……これで、終わりではない)
翔次は自らの掌を握りしめた。
滝川一益の手練れを捕らえたところで、尾張の怪物の歩みが止まるはずはないのだ。
利家の朱槍、一益の影、小六の水運、藤吉郎の商いと流通。
四人の手練れが、それぞれの持ち場で互いの弱みを補い、休むことなく今川の足元を揺さぶり続けてくるのだ。
(信照……)
翔次は初夏の風に吹かれながら、心の中で好敵手の名を呼んだ。
清須城の奥深くに沈黙を守る、あの見えざる魔王。
自らは指一本動かさず、ただ座しているかに見えながら、これほどの手練れどもを次々と動かしてくる男。
(お前の放つ刃は、俺がすべて防ぎ止める。
水を用いようと、影を用いようと、民を用いようと……俺の目の黒い内は、駿河の平穏を一歩たりとも侵させはしないぞ)
その数日後――。
甲斐の躑躅ヶ崎館において。
駿府の動向を探らせていた透破の報告を聞き届けた武田信玄が、愛用の軍配を膝の上で静かに回しながら、低く唸るような声を漏らしていた。
「……今川の鍋蓋翔次。忍びの業すら逆手に取り、草の者を絡め取るか。前線の防衛、兵站の引き締め、そして今回の備え……。あの軍師がいる限り、東海道の今川は岩盤の如し。軽々しく手を出すべからず――」
西の魔王の浸食と、東の不敗の防波堤。
忍びの闇を退けた今川の前に、次なる敵は水路そのものを戦場へ変えようとしていた。




