第12話
「なんだぁ?」
定食屋に向かう途中、思わず横山は声を上げた。
ノブも横山の視線の先を追う。
黒い半袖に白い手ぬぐいを首にかけ、膝までの短パンを履いた男が、公園周りをゴミ拾いしていた。
「知り合いスか?」
「いや……、アイツ確か、梅雨の時も俺のアパート前を通ってたんだよ。」
「その時も、ゴミ拾いスか?」
「あぁ。おそらく。」
不意に、みゆきママとの会話を思い出した。
「えっ!?私もその人、見たことあるわよ!!多分、同じ人よ。お店に出勤する前に、よく見るもの。私の住んでるアパートの近くで。」
「ほんとかよ〜。夜道危ねぇから、送ってやるよ。」
「もう!横ちゃんたら!そうやって色んな女の人口説いてるんでしょ!その手には乗らないんだから〜。」
「ははは。ママはガードが固いなぁ。」
「やだ!高嶺の花って言ってよ。」
「はははは……。」
(アイツ、こんな場所でも拾ってるのか……。)
横山はくるりと向きを変え、自販機へ向かった。
「え?どうしたんスか?定食屋はあっちですよ?」
「ちょっと待ってろ。」
ガコン ガコン
コーヒーとスポーツ飲料を持って、横山はその男の元へ近づいて行った。
「よう、あんちゃん。若いのにえらいな!」
男は自分に言われているとは思っていないらしく、地面から目を離さず、黙々と拾っていた。
「おい、あんちゃん!聞こえてるか?」
その声で、ようやく男は顔を上げた。
「っつ……。」
男の雰囲気に、一瞬横山はたじろいだが、続けた。
「あんちゃんさぁ、いつも拾ってんだろ?暑いのにえらいよ。ほら、これ、差し入れだ。休憩に飲めよ。」
「……。」
男は話さない。
右手にトング。
左手に袋。
「……っつ、ほらっ!!」
半ば強引に、横山は男に飲み物を押し付けた。
それでも男は何も話さなかった。




