改革への道(EU非加盟国編)(5)
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、防衛省事務次官だ。
「今日は緊急招集と言う事でした。挨拶は、不要です。まず、報告しなさい。事務次官。」
「はっ。日本時間本日未明、現地時間正午頃、LM11号OPRM。
その人物は、当局の手で身柄を拘束されました。以上です。総統閣下。」
「妙ですね。私の記憶が、確かならばその様な報道はされていませんよ。事務次官。」
「はい。世界中何処の報道機関も報道しておりません。総統閣下。」
「…………ネットで公表しなさい。顔にはモザイク、個人情報は伏せ字、非白人移民男性、
武器の不法所持で当局に逮捕、逮捕日時、武器の内容、以上ですよ事務次官。」
「はっ。『顔にはモザイク、個人情報は伏せ字、非白人移民男性、武器の不法所持で当局に逮捕、逮捕日時、武器の内容をネットで公表。』以上復唱致しました。総統閣下。」
「今後、続報があり次第、報告しなさい。私からは以上です。何か質問は?」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
「……次のニュースです。
本日正午頃、倫敦繁華街でスコットランドヤードは、職務質問中に不法な重火器を所持していた罪で、非白人移民男性を逮捕しました。尚、武装は次の通りです。
PIAT(対戦車バズーカ)10丁
ハーヴェイ・フレイムスロワー(火炎放射器)1丁
現在取り調べ中です。」
* * *
問題ありません。彼は、『件のメール』を読んで武器庫LM11号へ向かった。
そして、保存されていた武器を持ち出した。が、自動車で運搬中に警察にばれた。
また、火炎放射器は、燃料タンクが重い故、一丁しか持ち出せなかった。
故に、武器庫LM11号には、後九丁の火炎放射器が、残っています。
すると、当局がそれらを回収せざるを得ない。そして、罠発動!
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官だ。
「今日は緊急招集と言う事でした。挨拶は、不要です。まず、報告しなさい。事務次官。」
「はっ。日本時間本日未明、現地時間正午頃、LM11号BFSY45。総統閣下。」
「45! 45ですか! 確かに全体から見れば微々たるものです。が、素晴らしい。」
「……あのぉ……如何致しましょう。総統閣下。」
「ネットで公表しなさい。倫敦爆発事故にスコットランドヤード所属警察官45人が巻き込まれた。生死は絶望的。以上です。事務次官。」
「はっ。『ネットで公表します。内容は、ロンドン爆発事故にスコットランドヤード所属警察官45人が巻き込まれました。生死は絶望的。』以上復唱致しました。総統閣下。」
「今後、続報があり次第、報告しなさい。私からは以上です。何か質問は?」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
全て私の『予想通り』だ。
恐らく、警察は、対戦車バズーカなどの違法武器所持で逮捕した人物を取り調べ、件の倉庫……LM11号へ火炎放射器を回収しに行ったのだろう。
そこで、機密保持用に仕掛けた罠にひっかかり、爆発物が作動した。後は、捜査員四十五人が、建物諸共に木っ端微塵となった。こんな所だろう。
当然、罠を作動させる、させない条件は複数存在する。必然、それらを簡単に発見されない様、さまざま手を施してある。自然、連中は七十六個の倉庫全てを『捜査』しなければならない。
何人犠牲者を出すのか。連中の無能さ加減、見物とも言えよう。
* * *
どうやら今現在、倫敦には、シャーロックホームズはいない。
私は断言する。今日、報告が入った。これで、倉庫の『自爆』は、今週だけで二件。
巻き添えになった捜査員の数、七十八人。だが、連中もそこまで無能でも無い。
既にドローン等を投入し対抗しようとしている。
とは言えドローンごときで、火炎放射器を運搬できようはずもない。
その為、押収するには人間が入らざるを得ない。
しかし、爆破されると分かっていて入る者もいない。
だが、そろそろ連中も気付く頃合いだ。
何故、非白人系移民が倉庫の敷地内に不法侵入しても作動しないのか。
更に、スコットランドヤードの警察官が、不法侵入すると作動するのか。
この『唐栗』に、気付く頃合いなのだ。そして、様々な『仮説』を立てる。
が、それを『正解』と証明するにはどうするには、如何にすればよい。
即ち、自ら建屋内に侵入するしかない。
「ほら、大丈夫でしょう。」
としなければならない。しかし、賭けるチップは、己の命。間違っていれば、ズドン!
そんな事が、できようはずもない。凡人ならばな。
シャーロックホームズなら、己の推理に絶対の自信がある。
それくらいなければ、不可能と言うものだ。勿論、罠は幾重にも張り巡らせてある。
もし、いるのならシャーロックホームズとの知恵比べが楽しみだ。
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