改革への道(欧州編)(7)
「大統領! てぇーーっへんだぁっ!」
「またですか。今大統領府を包囲している連中より『大変』な事なのですね。」
「その人数が、どんどん増加しています。一万人を突破しそうです。」
「ふぁぁぁぁぁっ! 何故です。何時の間に、そんなに増えていたのです!」
「それが、昨晩デモ隊に『炊き出し』が、行われたのです。それを目当てに人が、
続々集まっている模様です。」
「そんな物で、パリ市民が目の色を変える訳ないでしょう。」
「こちらをご覧ください。大統領。」
補佐官が取り出した液晶パネルを目にした大統領。
「何だ? この食べ物は? サンドイッチの様だが、何だ。何が挟まっている。」
「果物と生クリームです。こちらはイチゴ、こちらはオレンジです。大統領。」
「そんな! そんなものの為に一万人! ありえない!」
「では、こちらをどうぞ。大統領。」
「…………あぁ……これが、その『果物と生クリームのサンドイッチ』か。」
こうして、『フルーチサンド』を口にした大統領だった。
「ばっ…………ばかな……『果物と生クリームのサンドイッチ』がこんなに……。」
「これが、マスコミ関係者に配布されたと、テレビ放映されました。
結果、大統領府に行くとサンドイッチを貰える。そう考えたのでしょう。」
「誰だ? 誰が、こんなものを配ったと言うのです!」
「日本人です。」
「おのれぇっ! 謀ったなぁっ!」
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「挨拶など不要。緊急報告があるとの事でしたね。まず、報告しなさい。」
「はっ。報告申し上げます。パリのデモ人数が、一万人を超えたそうです。
で、一万人を超えた場合、追加のご指示があるとの事でした。総統閣下。」
「勿論、ありますよ。この動画を複数のアカウントからネットに上げなさい。」
「はっ。こちらのファイルですね。で、内容はなんでしょう。総統閣下。」
「自分で確認したまえ。事務次官。」
「はっ。『当該動画ファイルを複数のアカウントからネットに上げる。』
以上、復唱致しました。総統閣下。」
「宜しい。では、私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
場所は、巴里。群衆防止用のテープで仕切られている大統領府のごく近く。
防衛するのは、警官隊だ。
「あちぃぃなぁ。」
「夏も本格化してきたなぁ。」
「つか、『炊き出し』こねぇなぁ。」
「だよなあぁ。こっちは、それだけが楽しみできてんのによぉ。」
「あの『美味そうなサンドイッチ』。くいてぇ。」
「おい! これ見ろよ!」
「なんだ?」
誰かが、操作してたスマホ画面に映されていた『ある動画』に目を奪われた。
「警官……おいっ! これ!」
「あの『美味そうなサンドイッチ』じゃあねぇか!」
「こいつらぁ……上手そうに食ってやがるぅ……・」
「俺だって食いてぇのにぃ……。」
「俺だって、朝から並んでんだぞ。」
「俺なんか、。夕べからだ。」
「ふざけんな! 俺にも寄こせ!」
「俺にも寄こせ!」
「俺にも寄こせ!」
「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」
こうして、シュプレヒコールが、巻き起こった。
更に、巴里大統領府を瞬く間に飲み込むほどの大合唱になる。
「静かにしろ!」
警官隊の誰かが、言った。が、これは火に油を注いだだけだった。
「ふざけんな!」
「お前らばっかり!」
「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」「寄こせ!」
「押すな!」「下がれ!」
こうなると、警官の制止は、無意味どころか火に油を注いだだけだった。
「ふざけんな!」「寄こせ!」
デモ隊の誰かが、ゆっくり歩を進めた。それが、合図であったかのようだった。
一万人を超える人間の波が、押し寄せる。
それを止める力が、数百人の警官隊にはなかった。
* * *
「大統領ぉっ! てぇーーっへんだぁっ!」
「今度は、分かりますよ。群衆が動いていますからね。」
「既に、警官隊はドミノの如く倒されました。群衆が押し寄せるのも時間の問題です。ここは、一旦退避するより他在りません。大統領。」
こうして、ヘリコプターで脱出したフランス大統領だった。
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「挨拶など不要。緊急報告があるとの事でしたね。まず、報告しなさい。」
「はっ。報告申し上げます。パリのデモ隊が、大統領府を襲撃しました。」
「おや、パリ市警が警備に当たっいたはずですよ。そう報告を受けました。」
「はっ。彼らは、パリのデモ隊に踏みつぶされて見る影もありません。また、大統領は、ヘリで脱出したとの事です。如何致しましょう。総統閣下。」
「ディ・モールト・ベネ!」
総統閣下の「何と言う事でしょう。それでは、仏蘭西革命の再来です。」は、「ディ・モールト・ベネ!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某黄金の風とも無関係に相違ない。
「で。追加のご指示は如何致しましょう。総統閣下。」
「二つあります。一つは、人道食糧支援です。但し品目は一人につき食パン一斤。
もう一つは、説教しなさい。警察官を踏みつぶした件、犯罪ですから。
彼らの罪悪感を可能な限り引き出して、反省させるのです。事務次官。」
「はっ。『一つは、人道食糧支援です。但し品目は一人につき食パン一斤。
もう一つは、説教する事。彼らの罪悪感を可能な限り引き出しての反省。』
以上、復唱致しました。総統閣下。」
「宜しい。では、私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *
今日のリモート会議参加者は、日本帝国総理、外務省事務次官、同省欧州支局長だ。
「挨拶など不要。まず、報告しなさい。」
「はっ。報告申し上げます。パリのデモが、収束致しました。大統領府に押し寄せた群衆は、全員無抵抗で、警察に身柄を拘束されております。」
「宜しい。では、仏蘭西の海外県並びに準海外県の独立承認をさせなさい。」
「はっ。『仏蘭西の海外県並びに準海外県の独立承認をさせます。』
以上、復唱致しました。総統閣下。」
「宜しい。では、私からの指示は、以上です。何か質問はありますか。」
特になかったので、今回の会議は、これでお開きとなった。
* * *




