転校
ざわざわ・・・ざわざわ
教室がにぎわっている。
「今日は転校生がやってきたので紹介します。皆さん静かに!」
しばしの沈黙の後に入ってきたのは、昨日少女が見ていたあの人・・・椋路寺諒。
「私は椋路寺諒と申します、よろしくです」
黒板に名前を書こうとしたときにふとあの少女がいることに気が付いた。
「!!・・・なぜ・・・」
「どうかしましたか?」
「あ、いいえ、すみません・・・」
黒板に名前を書き終えて教室を眺めた、みんな笑顔だ・・・あの少女以外は・・・。
どうも名簿によるとあの席にいるのは椎奈繭。名前がわかれば後は「イグシステンス」のおもちゃだ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、試すか。
「ねえねえ、どんな能力が使えるの?」
その時繭は顔が引きつった。人心掌握の能力で繭の心境を今なら見れる!
・・・・・・・・・・・・???
はじかれた?
謎の力で人心掌握能力が繭に働かなかった。も、もう一度・・・
すると少し教室がざわざわしてきた。教室には謎の空気が流れだした。
仕方ない、これならばその発言した人の人心を掌握してみる。
繭とは違いあっけなく読み取れた。名前は五味千早、か。
(・・・あれ、もしかして、「こいつも繭と同じく何もできないの?」)
・・・・・?? 繭は私の能力を凌駕するほどの能力者。だが誰も知らないのか?
まあこのまま何もできないことを勘違いされても面白くない。「本気でやつらと繭を試す」ことにするか。
「ん~、いろいろ能力がありますから・・・ではここではぬいぐるみに憑依しましょう」
ぬいぐるみを無から取り出した。そもそもこの時点でおかしい話だが、彼女は目を輝かせていた。
「じゃあやってみるね・・・。憑依、このテディベアに!」
・・・・・・嘘だ。今はテディベアに諒が入っているように仕向けて自分は姿をくらましただけだ。私は繭に近づいて行った。
後ろの席。その後ろには花瓶が置いてある。情報を提供している球磨洋スター家の長、龍いわく「市のおきてで殺された」らしい。
繭と同じく「能力がない」扱いをされてひどいいじめを受けていたという。繭はそのいじめを受けていた人とは唯一の友達だったらしい。
私は繭の後ろの席に座った。繭は前を向いてボーっとしている。
・・・・わかっている。さっき「憑依したと嘘をついた」テディベアを向いていない。気づいてないふりをしているのだろう。
「・・・・・あなたにはあたしの能力が貫けるのでしょ?繭」
「ひぃ!!」
繭は小声を上げて私の方を向いた。やっぱり私の本能力「イグシステンス」を破っている。しかし本人には気づいていない。
「つ、貫いてるってどういう・・・」
「あたしは貴方の能力を突破する。本来なら完全にあり得ない話だ。周りをよく見ればいい、あなた以外はすべてあの偽物のクマを見ていることを」
「え・・・」
繭は周りを見渡した。テディベアが物を持ったり宙返りをしているところを見て「すごい!」と言っている。
「あの熊は何?」
「あの熊はサイコキネシスで操っているただの置物よ。哀れな人はみんなその妄想で遊ばれているのよ」
「で、でも・・・私に能力なんかないよ・・・・」
「あなたは気づいてないだけだ・・・あたいがあなたの人心掌握を使おうとしたが、はじかれた。普通あたいほどのレベルの高い人心掌握は、はじけないのよ・・・」
「そんなこと言われてもわからないよ!」
繭の隣の人が訪ねてきた。
「誰に話してるの?」
「え・・・見えないの・・・?」
「・・・俺がめくらだといいたいのか?」
「そ、そんなこと・・・」
ちっ、めんどくさいことになった。そろそろテディベアで遊ぶのは終わりだ。
「クケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
教室がざわついた。
「て、テディベアが壊れ始めた!?」
その後テディベアは大きく爆発した。材料の綿が大量に飛び出し首だけになった。
「ちょっと諒さん、大丈夫ですか!」
「お、おい!誰か救急車を」
私は能力を解除した。
「うるさいわね、あたいはここにいるわよ」
「う、うわあああああ!」
繭の隣の席に人は変な悲鳴を上げてひっくり返った。
教室がさらにざわついた。
「い、いったいどういうことなんですか!?いつの間にか繭の後ろの席に・・・呪われるからやめた方がいいですよ!いや、呪われたからわからなかったのかも!」
「ふん、 バーーーーカ」
教室がかなりざわついた。繭が泣きそうな顔で私を見ている。
「何がバカなのよ、私ら神威市の人たちは強力な能力者ばかりなんだから!」
「ふふ、なら、次のあたしの位置を見破ってごらんよ」
諒は再びイグシステンスを使った。
「え、・・・何だったんだ・・・?さっき花瓶の席に誰かいたような」
千早は肩に重いものがのっかった感触がした。
「え、何!?」
「バーンww」
指でっぽうで遊びで撃ったと思ったら・・・足から血が出ている!
「い、いやあああああ!やめてやめて!」
教室でみんながおじけづき始めた。机の下に隠れたり、友達を盾にしようとしたりした。
「ふん、この程度で君たちはお友達を盾にするの?笑えるわね?」
諒はあざ笑って見ていた。
「これが鞦韆一族を倒すための最強の技術だ。尤も、それの影響を受けない強敵がただ一人・・・」
諒は繭の目の前に立った。繭は涙目の状態で諒を見上げ、みんなは繭のことを見ていた。