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朝食を食べているとエルフがやってきた。

「うーん。よく寝た! おはようポチ」

「おはようダン」


 朝起きると俺たちのまわりにはシルバーラビットの死体がいくつか転がっていた。


「これはどうしたんだ?」

「俺の魅力に勝てなくて、どうやら寝込みを襲ってきたらしい。俺も寝てたから気が付かなかったが」


「すごいな。自動で防御でもできるのか? よし! 朝からウサギのステーキだ。こいつの肉はメチャクチャ美味いぞ。次にシルバーラビットが来たら捕まえてくれ。たくさん繁殖させるて食料にするから」


「わかった。起きてれば手加減できると思う。美味しい肉のために頑張る」


 俺は早速シルバーラビットを解体する。

 血抜きができていないので少し味は落ちるが、かなりの高級食材だ。

 

 毛皮は敷物に最適で、額に生えている角は槍としても使えるし、煎じて飲めば精力剤としても使われる。

 そして身体の肉はほっぺが落ちそうなくらい美味しい。


 まさか、こんなところでシルバーラビットに会えるなんて、朝から非常に幸運だ。

 これは幸先がいい。


 俺の手によってシルバーラビットはあっという間にステーキに姿を変える。

 なかなか食べごたえがありそうだ。


 味付けは……まずはシンプルに塩コショウだな。

「ほら、ポチできたぞ。塩コショウのシンプルなバージョンだ」


 ポチは一緒に生活していたせいか、肉は生よりも焼いた方が好きなタイプだ。

 次の味付けはそうだな。リンゴベースで作った甘辛ダレにするか。


 独り身が長く、食事くらいしか楽しみがない俺はいつのまには料理はプロ並みになっていた。近くの、冒険者食堂の冴えないオッサンから冒険者を辞めて料理人になれと誘われたことがある。


 でも、俺はもちろん断った。


 冴えないおっさん2人の冒険者食堂になんてお客が来るわけないからと。

 可愛い女の子の1人でも雇えば、おっさんの不味いメシでも客がわんさかくるからと言って。


 そのあと、本当に可愛い女の子を雇ったら、今じゃ街一番の食堂になっていた。

 もちろん、今でも味はクソ不味いけど。


 それから、俺は甘辛ダレ、生姜焼き、照り焼きと作り続けた。

「相変わらずダンの飯は美味いな。昨日の夜の飯が味気なかったからな。余計に上手く感じるぞ」

「俺もポチがいい食べっぷりだから嬉しくなるよ。シルバーラビットを繁殖させれば沢山食べられるからな。楽しみにしていてくれ」


 ポチは俺の言葉に返事をせず耳をピクピクと動かす。

「ダン……来客のようだぞ」

「ん?」


 俺は後ろを振り返り、後方を警戒する。

「ダン……そっちじゃない。俺の後ろだ」


 森の中を見渡すと、そこにはエルフの姿があった。

 こんなところでエルフに会うとは珍しいものを見た。

 

 エルフとは森と共に生き、森と共に死んでいく種族で滅多に人の前に姿をあらわすことはない。

 森の中でのエルフは最強とも言われ、人間から独立した地位を築いているのも、エルフの森への知識があるからだ。森のエキスパートと言っても過言ではない。


 エルフは俺たちの方にゆっくりと近づいてくる。

 もしかして、森を勝手に開拓したからそれのクレームとかなのか?


「何用だ? 俺たちは許可を得て森を開拓している」

「いや、悪い。敵対するつもりはないんだ。ただ……腹が減って死にそうなんだ」

 

 エルフのお腹からは『ぐぎゅるる』とこの世の音とは思えないほどの音がなる。

 なんか非常にダメな奴の匂いがするが大丈夫か?


 俺はポチ用に焼いてあった肉を食べさせてやることにする。

 エルフは喉に詰まらせながらも、思いっきりかき込むように食べていく。

 途中何度も喉を詰まらせていたので川から水を汲んできて渡してやった。


 もちろん、ゴブリンナイトよりも上流の水だ。

 俺はポチのようにひどくない。


「いやー生き返った。本当に美味しくて途中から涙がでそうになったよ。ありがとう、助かった。私の名前はエルフ族の戦士ジャミルだ。森の中で迷ってしまってな。まさかこんなことで人に会えるなんて思ってもいなかったよ」


 ジャミルはエルフ族特有の中性的な顔つきをしている。

 服装も……男のようだが女性なんてことはないよな?

 女性と言われても驚きはしないが。


「失礼なことを聞くが、ジャミルは男だよな?」

「あぁもちろんそうだが、どうかしたのか?」


 ポチが俺の肩に手を置き首を振る

 そして口をパクパクとしながら、声を出さずにこう言っていた。


『諦めろ』


 うるせぇ! 

 まじでこのわんこ。


「いやなんでもない。それよりもエルフと言えば森の民と呼ばれるくらい、森に精通しているはずだろ? 迷子になんてなるのか?」


「あぁ普段の森の中なら迷わないがここの森は特別でな。エルフの持っている方向感覚がずれるんだ」


「なんで、そんな方向がわからなくなる森の中に入ったんだ?」


「この森とエルフの森は隣接しているんだが、先日この森からミノタウロスが迷いでてきてな。俺が追い返すことになったんだが、なかなか帰ってくれないからヘイトを稼いで単独でこの森の中にはいったんだ。ミノタウロスは無事にひきつけることはできたんだけど、今度は帰り道がわからず今に至るって感じだ」


「そうか、それは大変だったな。ミノタウロスって斧を持った魔物か?」

 ポチはミノタウロスを知っているようだ。


 街の近くでは一度も見たことはないはずだが?


「そうだ。さすがにあんなのを相手に勝てるわけないからな」


「あれか角が2本あって顔が牛の魔物か?」

「そうだよポチ。それにしても良く知ってたな」


 ポチが前足で指し示す。

「あぁ俺も初めて見た」


 ポチの視線の先には鼻息を荒くしたミノタウロスが斧を持って立っていた。

 このエルフ、ミノタウロス連れてきやがった!

ポチ「美味しいお肉好き」

ダン「次は何を作ろうかな? 煮込むか」

ポチ「エルフも食べるのか?」

ダン「いや、それは展開次第だな」

ポチ「……冗談のつもりだったんだが」


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