ミノタウロスとの決闘
ミノタウロスは斧を振り上げジャミルに向かって振り下す。
「おい、なんでミノタウロスなんて連れて来てるんだよ」
「悪い、巻いたと思ったんだが巻けてなかった」
巻けてなかったと簡単に言ってくれるがミノタウロスなんて俺が10人いても倒せない。だがポチと一緒ならなんとかなるか?
逃げるか。いや。
この判断の遅れが命取りになりかねない。
ミノタウロスが斧を振り回すと鉄鋼木に斧が食い込んだ。
あれは!
「ポチ、戦うぞ」
「肉が美味いのか?」
「いやあの斧が欲しい。あれがあれば俺も木こりになれるかもしれない」
「おっいいな。草刈りからランクアップだな」
「お前らふざけてるのか? そんな理由でミノタウロスに戦い挑む奴見たことないぞ」
「なんだ逃げないのか?」
「飯をご馳走になって、こんな危険な魔物まで引きつけて逃げるわけにはいかないだろ」
「よし。わかった。お前の骨は拾ってやる」
俺はジャミルを捕まえると、ミノタウロスの方は投げつける。
「ノ―――――!」
ミノタウロスの狙いはやっぱりジャミルだったようだ。
ジャミルが飛んでくるとは思わなかったのか、一瞬動きに迷いが見える。
その迷いが命取りになるんだよ。
ジャミルがミノタウロスの斧に切り裂かれる前に、ポチがミノタウロスの腕に噛みつき、斧が地面に落ちる。
ジャミルはミノタウロスの顔面にお尻から当たり、地面に頭から落ちていった。
長寿のエルフだからな。
きっと大丈夫だろう。
ポチはミノタウロスを転ばせ首筋に牙をあてる。
「一応人型だから聞いておく。俺の言葉がわかるか? もしわかるなら助けてやらないこともない。でもわからないなら死んでもらう。わかるか?」
ミノタウロスは一言だけ呟く。
「殺せ」
「話せるのか? なんで襲ってきた?」
「俺は強さを求めただけだ。俺よりも強い者を探していた」
なるほど。思春期にありがちなストレスだな。
「ジャミル、お前の村に被害はあったのか?」
「いや、誰も被害はなかった」
「被害がないなら特ににこのミノタウロスに恨みはないな」
「まぁないわけではないが。別に襲ってこないなら」
「よし。今日からお前はうちの雑用だ。しっかり働けよ。名前はあるのか?」
「名前はない」
「じゃあタロスだな。短くないと覚えられないし」
「いいのか? またお前たちを襲うかもしれないぞ」
「ポチ、タロスに負ける可能性はあるか? 正直に言っていいぞ」
ポチは少し考える。
「正直に言って子供とじゃれつくレベルだな。手加減するのが難しいくらいだ」
「だってよ。じゃタロス俺たちはここに今街を作っている最中だからそれに協力してくれ。まぁ暴走されるのは困るけど、たまにポチとじゃれつくくらいなら許してやるから。でもあれな、寝る時ポチと寝るのは俺の特権だから、それは譲らないぞ」
「いいのか? 俺のような者を受け入れるというのか?」
「なんだ? お前のような者って。結局子供が、かんしゃく起こして駄々こねて暴れただけだろ? ストレスの発散方法を誰も教えてくれなかっただけだよ。ここならお前の持っているパワーを存分にいかせるからな。まぁもし嫌なら逃げるのもお前の自由だ」
「まさか人間に情けをかけられるような時が来るとは思わなかった。俺はお前を襲うかも知れないんだぞ? それでもいいのか?」
「襲う気なのか? その時はポチが相手になるぞ。俺にはお前のストレスを受け入れてやるだけの力がないからな」
「俺はここにいてもいいのか?」
「くどいぞ。いいって言ってる……だろ……なんだお前泣いてるのか? どうせ変な物でも食べたんだろ」
ミノタウロスは空を見上げながら大声で泣き出した。
「仕方がないな。ほらこの肉でも食べて元気だせ」
俺はタロスの口の中にシルバーラビットの肉を入れてやる。
タロスはゆっくりと味わうように何度も咀嚼して食べる。
「俺は悲しくて泣いているわけじゃないからな。このウサギの肉がうますぎて感動しただけだからな」
肉を食べる前から泣いていたが、からかう空気じゃないのでやめておいた。
俺はもう一枚肉を口の中にいれてやる。
タロスにも何かあったのだろう。
魔物とはいえ、こんな森の中を1人でさ迷っているくらいだからな。
それからタロスはしばらく泣き続けた。
「悪かったな。みっともない姿を見せた」
「なに気にするな。それで少しはスッキリしたか?」
「あぁ。もう一度確認するが俺のことを仲間にしてくれるのか?」
「くどい。お前はもううちの仲間だ。それよりもお前の腕の傷大丈夫か?」
タロスの腕には大きな噛み傷ができており、かなり出血をしていた。
「大丈夫だ。そのうち治る」
「今は回復できる奴がいないからな。俺もポチも怪我することを想定していなかったから、回復薬も買ってないんだ」
「それなら俺が回復しようか?」
ジャミルが俺に提案してくる。
だが、こいつはエルフの村を襲おうとした奴だぞ。
「いいのか? お前をずっと追いかけ回していた奴だぞ」
「あぁ、俺もヘイトを稼ぐのに、こいつに攻撃したしな。それにダンの仲間になるなら、過去のことは水に流そう」
「そうか。エルフって言うのはもっと頭の固い連中かと思ったが意外といい奴なんだな」
「意外とは余計だけどな。それじゃあタロス腕を見せろ」
タロスは大人しくジャミルの言うことに従っている。
「傷が残ってしまうかも知れないがいいか?」
「あぁ、もちろんいい。この傷は俺の戒めとして残しておいてくれ」
「わかった」
ジャミルが魔法を唱えると両手から緑色の光が放たれる。
いつ見ても回復の光はきれいだ。
見ているだけで心が安らぐきがする。
「さて、2人はそのまま回復しててくれ、俺とポチは今から家を建てるから」
「今まで気が付かなかったがここに伐採されているのって鉄鋼木だよな?」
「そうだぞ」
ジャミルは化け物を見るような目で俺の方を見て来る。
辞めて欲しい。
俺はこいつ等とは違うただの一般人なのだから。
タロス「俺は泣いてないからな」
ダン「わかってるよ。あれは心の汗だからな」
タロス(キュン)
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