第十二章 光の魔術師
レオン
元気かね。
この映像が流れているということは、我々がシャンデリアの中に仕込んだ君の母、マリア・クリスティーヌの像を目にしていることと思う。
そしておそらくは、我々ガラス職人の犯した罪、そして君自身が犯した罪も、明るみに出たことだろう。
14年前。君がモレロにやってきた時の我々の衝撃は、相当なものだった。
私は周囲の反対を押し切り、単身日本へ渡った。それは只、14年前の我々の罪を謝罪したかったからだ。そのためには『あの時』の事を洗いざらい、世間に公表しても構わん、と思っておった。
しかし君の答えは違った。
『謝ったところで許しはしない。母の命と祖父母の命、教会で犠牲になった関係の無い子供たち、神父夫婦。そして僕の逃亡にかかった14年を、貴方方の血とモレロの伝統とやらで返してもらおう。覚悟しておけ』
私は戦慄した。君の心の闇は、ここまで深く、重いものだったのかと。
そして私刑が始まった。
私が村へと帰りこの事を伝えた翌々日、仲間のうちの4人が、君が差し向けた殺し屋に命を奪われた。しかもその遺体を広場に見せしめにするという事までやってのけて…。その4人は昔、君達親子が助けを求めに行った4軒の家の家主だったことが、後から分かった。
その後我々は何度も、外で見張るいくつもの眼をかいくぐり、話し合いの場を持った。しかし、有効な解決策は何も出て来はしなかった。その間にも会社の方針に従わない仲間が何人も殴られ、瀕死の目に遭っていく。
我々はついに、口を閉ざした。
そして我々の得た結論はこうだった。
君の心の闇を、受け止めてやろう。
そして我々の贖罪の心を、形にしようと。
その女性の像は、少ない資料から、君の母、マリア・クリスティーヌの劇場で歌っている姿を像としたものだ。日本時間で1月9日、未明にその像は我々の仲間によって搬入され、仕込まれたはずだ。フルレッドクリスタル製、我々の技術の粋を結集した作だ。
なあ、レオン。
失った命は、もう戻って来ない。
しかし時は過ぎゆく。夜は明ける。嵐は去る。物事も心も、ひとところには居らずいつかは…いつかは、動き出し、戻ってゆくものだ。
どうか。
どうか、君の心にも、光が灯らんことを。
2001年1月3日
Jamel Auteuil




