57、尽きた魔力
57、尽きた魔力
何処に存在するのか分からない異空間でパニックが起こっていた。
「早くドローンを自爆させるんだ このままではここをシモンに破壊されるぞ 」
「くそっ、厄介な瞳を持ちやがって…… 」
「もう少しだ…… 」
一人の使徒が床を這いながらドローンの自爆スイッチにたどり着く。そして、ボタンを押していた。
ボンッ!!!
ドローンは爆発して粉々に飛び散っていた。異空間のモニターからも映像が消える。倒れていたフィリポは、頭を押さえて立ち上がっていた。
「シモンの奴、完全に我々の敵にまわるつもりか くそっ、ノヅチの培養装置が全て壊された 残っているのは数体か だが、いくらあの小動物が規格外の魔力を持っていたとしても、もう魔力が尽きるのは間違いない 魔力が尽きてしまえば、あんな小動物なんの力もない 簡単に始末出来るだろう 」
「しかし、あの小動物の仲間も相当な力を持っているようだぞ それに、シモンやユダまで加わっては大丈夫なのか 甘くみると火傷するぞ 」
「確かに力は感じるが、所詮小動物の力を利用している烏合の衆だろう 小動物が倒れれば、散り散りになるさ 残ったノヅチを全て投入する そして、アークエンジェルとサラマンダーも全て投入する 一国をも楽に滅ぼせるほどの戦力だ いや、それどころか北の大地を全て破壊出来るだろうよ 魔力を消耗している小動物など問題ないわ 」
フィリポは自信たっぷりに呟くと、転送装置を使用し次々に、魔物を送り込んでいく。その様子を見ていた他の面々は、その強大な戦力を見て、それまでの不安が消され笑みさえ浮かべていた。
* * *
村では、私の仲間たち全員がノヅチを相手に奮闘していた。それぞれが自分の力を出し切って、強大な力を持つ不死身の化け物ノヅチを相手に一歩も退かず食い止めている。
・・・ごめんなさい、私、1体ずつしか行動不能に出来ないから…… ・・・
私がみんなに謝ると、アリスがポーションをぐびぐび飲みながらふらついた足で笑顔を向けてくる。
「何を言っているんですか、キノコちゃま そんな事、気にしないで下さいよ 私なんか2、3体凍らせただけで、もう無理なんですから 私たちは、みんなキノコちゃまに勇気を貰っているんです キノコちゃまがいてくれれば、それだけで力だ出るんですよ 」
アリスはふらふらの体で呪文を唱えていた。不死身のノヅチには、特大の呪文でなければダメージを与えられない。それでもアリスは残った魔力でノヅチの周囲の地面を崩し、ノヅチが村に迫って来れないように足止めしている。アリスだけじゃないよ。みんながノヅチを止めるために獅子奮迅の活躍をしてくれている。
「底のない奈落の暗闇の沈むがよい ”アビス・フォール” 」
イブリースの地殻魔法だ。アリスの魔法を参考にしたようだよ。不死身のノヅチを倒す事は出来ない。ならば、その動きを封じるしかない。1体のノヅチの下の地面にぽっかりと穴が開く。その奈落のような深い穴にノヅチが落ちていった。やるじゃない、イブリース。私が感心していると、イブリースは、まだです、キノコさんと厳しい顔を崩さない。しばらくすると、とても上がってこれないだろうと思っていた奈落からノヅチが這い上がってくる。だけど、ノヅチが穴を這い上がる前にナガトが”たんじんの術”を使っていた。ノヅチが落ちた穴の周りが崩れ、ノヅチがまた穴に落ちていく。そして、ノヅチがまた這い上がってくる前にアリスの魔法が炸裂していた。
「宇宙の暗闇を静かに流れる星ぼしよ 私の命に従い顕現せよ ”ミーティア・シャワー” 」
アリスの魔法で流星がノヅチの落ちた穴に降り注ぎ、その穴を塞いでいく。いくらノヅチでも、これなら穴から抜け出すのに時間がかかるだろう。3人で協力して、しかも魔王と人間が協力する。こんな感じでみんなが協力していけるようになれば、きっと良い世の中になると思うよ。でも、その為にもこの局面を乗りきらないと……。
「ピイィィィーーーッ 」
・・・第四の円”ジュデッカ” ・・・
さすがに体が重くなってきたけど、ここで負ける訳にはいかない。私は、自分自身を奮い立たせてノヅチに対峙していた。そして、なんとかノヅチを行動不能にした瞬間だった。私も含めて全員が目を疑っていた。
「ピッ 」
ノヅチだけじゃない。アークエンジェルやサラマンダーが大量に現れていた。私は、すぐに飛び出そうとしたけれど、足がもつれて倒れてしまった。
「キノコッ ダメだっ、もう無理するな 」
ナアマが私を抱き起こしてくれたけど、私はそれを振り払って歩こうとした。けれど、気持ちとは裏腹に体が思うように動かない。
「キノコさん、無理しないで下さい 」
イブリースも心配して駆け寄ってくる。でも私は、倒れる訳にはいかない。みんなを、この村を守らなきゃ。私は、魔物たちを睨みつける。物凄い数だ。私が、頑張らないと……。そう思いながら私は目の前が暗くなり、意識が遠くなっていった。
* * *
「キノコッ こんな小さな体で無理して…… これも私たちが不甲斐ないからだ おいイブリース、お前、命を捨てる覚悟はあるか 」
「僕はキノコさんに命を預けました キノコさんの為なら、いつでも捨てる覚悟はありますよ 当然じゃないですか…… そうか、なるほど、あれを発動するつもりですか 」
「よし、ならば人間 お前たちの中で魔法が使えて命を捨てる覚悟のある奴、私たちに協力しろ 」
「私がやるわよ このままじゃ終われない 勝算はあるんでしょうね 」
「待ちなさい、アリス あなたはもうその状態では無理です 私かユダしかいないでしょう 」
「冗談じゃないぜ なんで俺が命をかける必要がある こんな村、滅びようと俺に関係ないからな 」
「なるほど、所詮あなたはその程度の人間 キノコ様のお心など理解出来ない もとより、あなたに期待などしていません 私がやります 私はキノコ様に命を救われた身、キノコ様の為になら命など惜しくありません それで、どんな方法なんですか 」
「”デビル'ズ・トライアングル” 使用する者の命を奪う極大の合体魔法だ お前の命も貰うぞ、シモン 」
ナアマがシモンに告げていた。




