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四戦目

 


 先日同様、サリエンツ・アレーナは満員で賑わっていた。


 私の次の相手はカナエ・アルフィズ、経歴は未だ謎が多い相手だが、唯一、彼女が凄腕の錬金術師であるという事はわかっている。


 どんな錬金術を扱うのか、警戒しないといけないだろうな、下手をすれば私の方が返り討ちにされてしまうだろうしね。



「こうして貴女とこの場で対面して戦う機会に恵まれるとは思いませんでしたね」

「はは……。買い被り過ぎだよ」

「あら? そうですか? 私は以前から貴女の話を聞いていましたから、楽しみにしていたんですよ」



 そう言いながら、腰に携えている日本刀に軽く手を掛けるカナエ。


 おそらく、彼女を見るにあれがバレッタである事はすぐに私にはわかった。


 何というか、彼女が纏っていた雰囲気が日本刀に触れた途端にガラッと変わっている。これは気を引き締めないといけないだろう。



「そんなに警戒しなくても、まだ試合開始の合図はなってませんよ、キネさん」

「よく言うよ、その武器に手が触れた瞬間、殺気をそんなに出してさ」

「ふふ、……あら? よく気付きましたね?」



 私の指摘に対して、満面の笑みを浮かべ答えるカナエ。


 冷たく背筋が凍りつくような殺気をしていた。あれは、普通の錬金術師が放つにはあまりにも異質なものだ。


 それなりの場数と戦場に身を置いた錬金術師が持つような殺気である。間違いなく、カナエはその戦場に身を置いていた錬金術師である事をすぐに私は感じ取った。



「まあ、殺気くらいでは、相手は殺せませんけどね? 

 もっとも、お手合わせいただければすぐに判明するとは思いますけども」

「……へぇ」

「一つアドバイスするなら、私の『間合い』に容易に踏み込まない事くらいですかね」



 殺気を身に纏う彼女からの一言に私の頬からは冷や汗は静かに流れ落ちる。


 間合いに容易に踏み込めるほど、正直、隙があるようには全く見えなかった。


 カナエの構えはいつどんな時であってもすぐさま私に対応できる体勢を作っている。


 こんな構え方をされたなら、悪いが遠距離から仕掛けた方が無難だろう、わざわざ、あの刀という武器の錆になるリスクを負う必要は無い。



「それでは! 第四試合! 代理人、クロース・キネス対カナエ・アルフィズ様! 両者構え!」



 そう告げてくるアナウンスだが、私とカナエは既に臨戦体勢に入っている。


 いつ戦闘が始まったとしても、私とカナエはすぐにでも対応できるだろう。


 互いに錬金術師同士、錬金術師との戦い方については戦場で何度も経験した事がある。


 そして、すぐにその時はやってきた。



「はじめっ!」



 アナウンスの声が会場に響き渡る。


 そして、それは一瞬の出来事であった。私が瞬きをする間にカナエの姿が目の前から消えたのである。


 バチィ! と何やら電撃が走った様な音が聞こえたかと思うと、彼女の姿は既に私の懐に入ってしまっていた。


 眼を見開いた私は思わず頬から冷や汗を流す。



(これはマズイッ! 斬られるッ!)



 咄嗟に腰を落とし、私は義手を使って防御を試みる。


 いつの間にこんな近くに接近を許したのか、動きが速すぎて全くわからなかった。


 だが、容赦なく腰から刀を抜いたカナエは私の義手の上からでも関係無いとばかりに凄まじい速さで刃を叩きつけてきた。



「ぐぅ!」

「ほぉ? 今のを防ぎますか」



 興味深そうに笑みを浮かべ、私に告げてくるカナエ。


 だが、またもや彼女の姿が消えたかと思うと、私は背後から殺気を感じ取った。



「……っ! あっぶなっ!」

「ふふ、これにも反応するのですね」



 勢いよくカナエから振り下ろされた刀を間一髪のところで身を翻して躱す私。


 だが、完全には躱しきれてはおらず、軽く服の表面がパックリと割れ、斬られた箇所からは少量ながら出血する。


 さっきから全然姿が捉えられない、こちらが攻撃を仕掛ける前に何度も先制を取られてしまっている。


 この状況はあまりよろしくはない、なんとかして対策を打たないとこのままではずっとカナエのペースで試合が運ばれてしまう。



「とりあえず錬成して間合いを……!」

「そんな暇は与えませんよ」

「ぐぅ!」



 また、唐突に私の側面からいきなり現れたカナエからの斬撃を辛うじて避ける。


 速すぎる動きに私も人息つく暇さえ与えて貰えない、かなり厄介な相手だな、カナエは。


 もしかして高速移動が何かの錬金術か手段を使って、仕掛けできているのはなんとなく理解はできた。


 だが、問題はこのままだと、私はいつかカナエから斬られてしまうだろう。



「はあっ!」

「……ぐぅ」



 またも、カナエからの斬撃を私は義手で防ぐ。


 会場には金属が激突したような鈍い音が鳴り響く。カナエからの直撃はなんとか凌ぎ切った。


 私は今しかないと思いバレッタを使わず、その場でメモリアを義手で握りしめてそれを咄嗟に地面に叩きつけた。



「release! (解放)」



 その瞬間、私の周りには鋭い樹木の枝が一斉に生えたかと思うとカナエに向かい飛んでいく。


 流石にカナエも部が悪いと感じたのか、すぐに私との間合いを取るように後方へと飛び、私が展開させた樹木からの攻撃を避けた。


 私もこれで、カナエを倒せるとは全然思っていない。


 だが、カナエは警戒はさせれた筈だ、私の狙いはそこである。


 単純にカナエとの間合いを取り、仕切り直しを計りたかったのである。



「考えましたね」



 これには、カナエも素直に感心していた。


 カナエが間髪入れずに次々と攻撃を仕掛けてくるので、敢えてこうする事でカナエが不用意に間合いに入ってくる事を防ぐ。


今は余裕が無くこれが精一杯ではあるが、こうすれば、少なからず時間は稼げる。



「今のうちに対策を考えないと」



 私の錬金術をどう使えば効果的に戦況を変えれるのかという事を考えておかないとこのままじゃジリ貧だ。


 それにまだ、正確にカナエがどんな錬金術を使って来ているのかが全くわからない。


 なんとかして見極めないといけないな。


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