50 時空転移
自分が死ぬ3日前に転移する事に成功した。先ず自分を探す事に苦労した。自分に会って自分が自分である事を説明する事に辟易した。自分が何者であるか説明する事に本当に困った。
50 時空転移
高度に進歩したマリエールの転移には時空転移も可能なはずだ。異世界転移も可能だろう。異世界とは一種のパラレルワールドだと認識している。パラレルワールドなら転移可能だと思う。問題は時空のずれが僅かにある場合だ。時空にずれが生じると同一人物と認識されない。やって後悔するのはやらないで後悔するよりもまだましだ。時空転移の準備は出来た。自分の救助作戦も準備した。自分が死ぬ3日前のウクライナの自分の元へ時空転移した。新ためて自分の死んだウクライナの都市が荒涼として唖然としていた。先ずは自分探しで苦労した。そして自分に自分である事を理解させる事に辟易した。いざ医療活動をするに及んでマリエールの事を何と説明すべきか本当に困った。変幻自在の魔法を使って20代半ばの日本人の女性の容姿になったけどIDカードもなくて医者と認識される手段がない。ようやく自分を見付けて納得させたけどまだ周りの納得が得られない。激戦の中で人手が足りないと言う理由で取り敢えず利用出来る者は利用する事に落ち着いただけだ。
マリエールは自分に話しかけた。
「後3日目の夜にこの場所でロケット弾の砲撃を受けてここいる人々と共に死ぬのは確実なんだ。出来れば何処かに移って欲しい。出来なければ私が守ろう。」
こんな激戦地区だ。間違っているとは言い難い。
「たとえそれが本当の事としても自分だけが助かればいいと思っないと言う事は、あなたが自分だと言うなら判っているはずだわ。」
確かにそうだ。安全な日本にいて忘れがちだが自分は自分だ。他人を犠牲にして自分だけ生きていけない人間だと自分が一番判っている。
それから治療に励む。異世界から持ち込んだ。抗生物質や消毒薬が役だっている。お菓子の類は子ども達に人気だ。刻々と運命の時が迫った。マリエールはその夜地下壕全体にエアシールドを張った。ロケット弾が着弾した。大きな揺れは有ったけど誰も死ななかった。
翌日マリエールは自分から、
「確かにロケット弾の着弾があった。普通なら我々はみんな死んでいたはずだ。君のお陰で誰も死なずに済んだ。本当にありがとう。」
自分の知らない自分は新たな境地に至ったようだ。新たな自分はその後ウクライナの地で三度被弾してその度にマリエールが救った。ウクライナでのボランティア活動が終了しようとする時マリエールは自分に精神とアイテムボックスの共有化と知識、能力、魔法の付与を行なった。これで2人目の死なない自分が出来たわけだ。
一旦日本に帰った自分は盛んにウクライナの実態を訴え再度のウクライナへの医療ボランティアに自分を派遣するように訴えた。国としても自衛隊員が世界に貢献する事は許容出来てもそれは強い要請に応えての事だ。国内でも医療支援を要請する自治体は多い。上司は、
「先ずは国内の医療支援が優先だ。それなら業務の内だ。ボランティア休暇をそんなに頻繁に出せない事は君も承知しているだろう。」
支援を求める声に耳を傾けるのは国内でも海外でも同じだ。上司の言う事は判る。しかし緊迫度が違う。
ウクライナから帰ってウクライナの現状を細く広く訴え、上司に再度医療ボランティアとして派遣してくれるように頼んだ。




