あの作戦
久東達はなんとか町田先生と合流することに成功し、ダンジョンを後にした。出口から出るとそこにはもう既に多くの参加者が集まっていた。
「もう既にリタイアしていたりクリアしている参加者はみんなここA1、最初に集まってもらったところで待機してもらってたのよ」
久東におぶってもらいながら町田先生が説明する。
「あの…早くおろして!!みんな見てるから!!」
町田先生が久東の大きな背中をバシバシ叩く。
「あぁ、すいません」
久東は町田先生の感触を背中越しに感じていた。いつもならそこまで性への欲は強い方ではない久東だが何故か少し強くなった気がした。
町田先生は下されるとさっきまで杖をついて歩いていたのが嘘かのように機敏に動き出した。
「皆さん!最終結果はすぐに発表致します!それまでしばらくの間お待ち下さい!」
ダンジョン入り口に集まっていた複数の参加者がざわめいた。
****
「えー!これより、結果の方を発表したいと思います。今回ナンバープレート3枚集めてクリア条件を満たしたものは15名。上限の10名を超えたため、持っているナンバープレート数の合計数が小さいものから順に合格とする。その一覧がこちらだ!!」
1 竹尾 学
2 三原 奈央
3 久永 英司
4 麻植 竜子
5 是澤 華子
6 阿佐 芳幸
7 池末 有華
8 常田 昌文
9 小綿 珠樹
10 雅 秀史
11 如月ヒナタ
・・・
15 木下 隆
どでかい紙を巻物のように広げて見せる町田先生。大学の合格発表みたいだ。賢明にヒナタを探す久東。
「ヒナタ…ヒナタ…あった!!」
「あれ?ヒナタ最悪じゃない!!11位よ!!」
ヒナタの順位は惜しくも11位だった。
「くるみの計算も外れるものなのねー。確実って言ってたじゃない。あんた」
なぜかくるみの計算が外れてちょっと嬉しそうなカレン。くるみは申し訳なさそうにうつむく。
「……すいま……せん。あんなに……学校側の……モンスター……多いなんて……」
順位表を見ると、たしかに上位陣は小数点の入っているナンバープレートを確保している。俺たちが思っていたよりも学校側が用意したナンバーは多かったみたいだ。
「ここで一つお知らせがある。私はこの一次試験が始まる前にいくつかルールを説明したが、このクリア者の中にルール違反を犯した者がいる!そのルールとは【被っているナンバープレートを提出したものは即失格】だ。まさかこのルールが適用されるとはおもわなかったがな……【被っているナンバープレート】を提出している輩がいた。ナンバー89だ!!」
なんと合格した参加者の中にナンバープレート89を持つものが2人いたのだった。
お気づきかもしれないが、そのナンバーはヒナタがカレンの使わないナンバープレートをコピーし、そのプレートをジンに置いてもらったものだ。
ある2人の参加者はジンが置いて行った【89】のプレートを拾い提出してしまったのだ。
「ルール説明でも言った通り、【被ったナンバーを提出したものは即失格】とする!!よって、ナンバープレート89を提出したクリア者、木下と常田は失格とする!合格者10名は以下の通りとする!!」
1 竹尾 学
2 三原 奈央
3 久永 英司
4 麻植 竜子
5 是澤 華子
6 阿佐 芳幸
7 池末 有華
8 小綿 珠樹
9 雅 秀史
10 如月ヒナタ
土壇場で久東とくるみの行っていた作戦がヒナタを救った形となった。被ったナンバーをあちこちに点在させ、それを拾い合格した参加者同士を失格にするという時限爆弾的な作戦を久東は行っていたのだった。
「以上の10名には二時試験の説明を後日、連絡する!以上だ!!」
おいおい、ちょっと待てよ!と被ったプレートを提出した参加者がクレームをつけるも、ルールに乗っ取っただけの処置のため町田先生は跳ね除けていた。
(まさか、ヒナタ対策で作ったこのルールを逆手に取ってくるなんて……きっとあの無職の入れ知恵ね……)
町田先生は最初は眼中になかった久東が只者ではないと感じ始めていたのだった。
ブクマ評価の方お願いします




