初ダンジョン
久東は手に持っている腕時計の秒針を見つめる。いよいよダンジョン試験の始まりだ。
「いよいよ始まるな、ヒナタ」
「うん!はじめてのダンジョン、すっごく楽しみ!」
試験というよりダンジョン自体を楽しむつもりなのか、ヒナタは。それでも良いか。ヒナタに取っては試験と言うのはそこまで重要じゃないんだな。
『一次試験、スタートです。皆さんダンジョンに入ってください!』
どこかから、アナウンスが聞こえる。これも誰かのなにかスキルなのだろうか?
「よし行こう!」
「ありがとうねくーちゃん!ヒナタ、ダンジョンに入れちゃった」
お礼を言われた俺はなんて言っていいか分からなかった。
とりあえず、照れ臭かったので聞こえないふりをした。
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ダンジョンの入り口は真っ暗でなにがあるのかさっぱり分からない。俺は恐る恐る歩を進める。
「わーい!ダンジョン!ダンジョン!ダンジョンだぁー」
ヒナタがバンザイをしながら猛スピードで突っ走っていく。
「おい!バカ!ダンジョンだぞ!何がいるか分からないのにそんな大きい声出して走るなーー!!!」
俺も急いでヒナタの後を追う。しかし、三日間のサバイバルとは事前に聞いていたため大量の荷物をリュックに詰めている久東はヒナタになかなか追いつかない。
「ギャーーーーー!!!」
「おい!どうした!」
やっと追いついた先でヒナタは尻餅をついていた。
「どうした?何があった?」
「……なんかにぶつかった……」
「え……」
久東はゆっくりと前方に目をやる。そこにはスライム状のモンスターがいた。
「すっごい、ぷにぷにするねぇ〜」
ヒナタは物怖じせずスライムを触りまくる。
「……なんだ。スライムか。よかったよかった」
俺は胸を撫で下ろした。スライムはダンジョンにおける最弱のモンスターだからだ。
「あっちこっちにいるよ!カラフルで綺麗ー」
俺たちの入口付近はジャングルのような森林地帯となっており、主にスライムが生息しているみたいだ。
どうやらナンバープレート100を持つ俺たちは比較的優しいモンスターしかいない所が入口だったんだな。この辺まで気配りしてくれてるみたいだ。
「ギャーーーーー!!!噛んできた!!このぉ!!」
【第一のスキル 風巻】
プギャァァァ
ヒナタは前田くんのスキルを使って噛み付いてきたスライムに攻撃した。スライムは一瞬で消え去ってしまった。
「前田くんのスキルすごいね!スライムすぐに倒せちゃった!」
ヒナタは上機嫌でスライムを倒しまくって行く。前田くんのスキルで。
俺は夢中でスライム討伐をするヒナタへ言った。
「ヒナタ、今のうちにどんどんやっておいて欲しい事がある。」
「へ?なに?」
ヒナタはスライム討伐を一旦やめた。
「ステータスのコピーだ。ヒナタ、お前のコピースキルでモンスターのステータスももしかしたらコピーできるかもしれない」




