わかばのいえ
ヒナタが暮らしているという孤児院「わかばの家」はオレが寝泊りしている河原から歩いて四十分ほどのところにあった。
都会の街並みが段々と薄れ深緑豊かな風景へと変貌していく。時にはヒナタの見つけたという「近道」という名の舗装されていない山道を通りながら、2人は「わかばのいえ」へたどり着いた。
「ここがヒナタの家だよ!いいでしょ?」
山道を抜けるとわかばの家の裏口の所に出てきたみたいだ。俺は部外者だがここから入ってもいいのだろうか?
「ヒナタ、俺ここから入っても大丈夫なの?」
「大丈夫!大丈夫!そんなの誰も気にしないよー」
ネジ式のカギを開け、古びた木製のドアを開ける。そこには大小様々な子供たちが所狭しと動き回っていた。
「あー!大ちゃん、私のお菓子取ったぁぁ!!」
「ぜんぜん食べないからいらないと思ったもんねー!!」
「センセー!大ちゃんがぁぁぁ!!!大ちゃんがああぁ」
なんて迫力なんだ。こんな多くの子供を一度に見たのは何年ぶりだろう。
「はいはい、また買ってあげるからねぇ、ミクちゃん」
「なんでなんでなんでよぉ!大ちゃんが悪いじゃんかぁ」
丸いメガネをかけた初老のおじさんが出てきた。
「あの人がここの園長さんだよー」
ヒナタがおじさんの元へ駆け寄る。
「えんちょー、くーちゃん連れてきたよ!」
「おや、こちらがヒナタの。待っておりました。少し騒がしいですが、こちらへどうぞ」
おじさんは奥にある小さなちゃぶ台の所に座った。
****
「ヒナタから聞いておりました。あなたがくーちゃんですね」
「は、はい。初めまして。久東凛と申します。この度はヒナタの保護者としての許可を……」
「あぁ、そうだったね。許可なんて堅苦しい言い方しなくても大丈夫じゃよ」
今日ヒナタに「わかばの家」に案内してもらったのはここの児童福祉施設の長に保護者代理の許可をもらうためだ。法律上、今のヒナタの保護者はこの園長になっている。この園長から保護者代理の許可をもらう事で俺とヒナタはダンジョンの試験に参加できるのだ。
「ヒナタの試験の話ですな。わたしが付いて行ければええのですが、ご覧の通り他の子の面倒も見てやらねばならなくて。久東さんがわたしの代理として参加していただけるなら、有難い限りです」
「ほ、本当ですか?ありがとうございます」
久東は深く頭を下げた。
「今までにも何回か試験の話はあったんじゃが、ご覧の忙しさでヒナタには我慢してもらってました。今回試験に参加できるなら、お礼を言うのはこちらの方です」
園長も頭を下げた。
****
「じゃあな、ヒナタ3日後にダンジョンで集合だぞ」
「りょーかい!!頑張ろうね!くーちゃん」
「いやいや、お前の試験だぞ」
玄関までヒナタと園長が迎えにきた。
「あっ、ミクちゃんだ!」
ヒナタはミクちゃんという子の元へ走っていってしまった。
「すいませんな、ヒナタは騒がしい子ですから」
「いや、ホントそうですよ」
園長と俺は遠くに走り去るヒナタを見て笑った。
「ミクちゃん!はい、コレ。さっき私がコピーしたお菓子だよ!コピーしたけど中身はおんなじだから安心してね!」
「えぇ!ヒナタちゃん!ありがとう!」
「うん、わたしも食べる!一緒に食べよ!」
ヒナタはコピーしていたお菓子をミクちゃんと食べはじめた。
「でもね、ヒナタは本当に優しい子なんです。不思議なスキルを授かっていますがね」
園長先生の芯のある目に見つめられて、俺はヒナタの保護者となった事に責任を感じ始めた。
「ヒナタが選んだ人ですから、信用しています。スキルの使い方であったり、ダンジョンの危険も含めて、よろしくお願いします」
お菓子を食べ笑うヒナタ少しいつもと違った視点で見ていた。
保護者代理だけど、俺はあの子の保護者なんだ。久東は身の引き締まる思いになった。
--------------------------------------------------------------------
今日のヒナタの戦果
大ちゃんからぶんどり、コピーしたお菓子
実はこっそりコピーした園長のステータス
■如月ヒナタのステータス
学生 Lv3 → 学生 Lv5
HP 90/90 → HP 100/100
攻撃力 46 → 攻撃力 50
防御力 46 → 防御力 50
速攻性 46 → 速攻性 50
命中力 46 → 命中力 50
知力 5 → 知力 5
創造性 5 → 創造性 5
【スキル】
名称 : コピー
属性 : 無所属
Rank : D
※所持コピースキル【風体】
更新しました。いよいよ、次から試験始まります〜。よろしくです〜。




