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チートスレイヤーズ!!  作者: 堀井ほうり
鈴村龍之介の思考/不幸/虚構
28/40

第27話「見たくないから」


「ダメでしたーっ!」


 現実世界から俺達のいる「キルトハイ」に戻って来たアリスの第一声がそれだった。

「おう……」

 お疲れ、なんて気安く声を掛けるのはためらわれた。アリスも日々子も葵も、体中擦り傷だらけだ。

 大きな外傷はなさそうで、それはよかったけれど、彼女達の表情から心を傷つけられた悲しみが読み取れた。


「何か言われたのか?」

「鈴村くん、それは訊かない方がいいんじゃないかな……」

 サギーに制されて、俺は口を噤む。けれど、三人はそれぞれに答えてくれた。ぽつりぽつりと、小さく唇を開いて。


「友達ごっこ、とか」

「優しい振りしてるだけ、とか」

「お金で解決なんてできない、とか」


 たぶん、もっとキツい言われ方をしたんだろうと思う。それと葵……金で解決しようとしたのかよ!?


「佐伯さん、凄かったよ。男子も女子も足蹴にして、女王様って感じだった」

「あの力……『雌豚』、やばいね……」

「私のスキルで近付くところまでは成功したんですけど……」


「それなのに傷を負ったのはなぜだい?」

 サギーの問いに葵が答える。

「灰崎くんが……いたから、です」

「寅宗!?」

「ええ。だいぶ加減してくれたようでしたけど、彼のスキルでこの通り。ふふっ、無様ですわね」

 自身の腕に目を遣りながら葵は微笑した。細い傷口から、赤色が滲んでいる。

「佐伯さんに近付いた刹那に切られました。死角にいらっしゃったので気付かなくて……」


 二度と会えないと思ってた寅宗はあっさりと現れて、どうやら俺達を友達だとは思ってくれていないらしい。

「あるいは、『雌豚』に侵されて佐伯さんの奴隷になってる可能性もあるね」

 サギーが嫌な仮説を唱えて、俺達は振り出しに戻った。



「でもね、あたし、諦めないから」

 傷の処置をされながら、アリスははっきりとそう言った。

「別に、元々そんなに仲良くなかったけどねー。影島さん、佐伯さんって呼び合う程度だしね」

「キャラ的にも相性悪そうだもんなー、お前ら」

 俺が茶化すと、アリスは快活に笑った。

「そうそう! 成績優秀で可愛い陽キャとかさー、あたしは妬むしかないからねー」


 それでもね、友達だと思ってるから。

「友達」という言葉に力を込めるように、アリスはそう言った。

「佐伯さんが何をどう思ってるかなんて、あたしは知らないし、わからないよ。でも、あたしは友達の寂しそうな顔とか、見たくないから」


「うん……アリスはやっぱり、いい子だよ……」

 日々子が強く頷いて、椅子に腰掛けたアリスの頭を撫でた。

 葵が椅子から立ち上がり、

「それで、これからどうします? 今度は全員で突撃しますか?」


「いや、一度移動しよう。二人の力はやっぱり、不可欠なんだと思うよ。二人は嫌かもしれないけどね」

 サギーは俺とアリスを指差して、

「移動先は異世界『バーガーランド』。君達は弱虫の抜け殻のひとつ、ジャッキーに会うべきだ」


「会って、どうするんだよ?」

「もちろん、チートスレイヤーズの再結成さ!」

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