第10話「うおりゃああああ!」
◇
クズ村……鈴村龍之介と灰崎寅宗。尾井萩高校の自称「タイガーアンドドラゴン」の二人は共に帰宅部のエースだ。
いやいや、見た目思いっ切りスポーツやってそうなのになんなのあんた達。
ソフトモヒカンの頭に手を当ててクズ村は大きな声で答える。
「モテとスポーツに! 因果関係はない!」
「『果報は寝て待て』。そういうことだな」
さっぱりわからない二人だった。ソシャゲとことわざにハマっているらしい灰崎くんは今日も絶好調のドヤ顔を決めていた。
週末、金曜日の昼時は明日の予定について楽しく話すクラスメイト達で賑わっている……けれど、それは一部の人達の話であたし達には当てはまらない。
知ったかぶった大人達は「スクールカースト」なんて言葉を持ち出してあたし達をわかりやすく仕分けようとするけれど、そんなに単純なものじゃないのだ。教室は色々な善意や悪意や欲望や嫉妬に満たされていて、独特な生ぬるさの水槽にいるような気分になる。
口をぱくぱくさせて言葉と二酸化炭素を吐き出すあたし達は、話に尾ひれを付けたがる醜い魚なのです。
「つまり、鈴村くんはモテに関係ないことはしないってこと?」
教室内なので鈴村くん、と呼ぶあたし。これは人見知りのせいじゃなくて、教室での立ち位置が理由だ。異世界にいる時のように話したらあらぬ誤解を呼ぶ可能性もあるしねー。
「そうだ。モテとスポーツは必ずしも結ばれない。だからオレはスポーツはしない」
「みーとぅー」
深々と首肯して同意する灰崎くん。スポーツマンのようなスポーツ刈りなのにねー。
「違うよー、影島さん」
クズ村の後ろからひょこっと顔を出した佐伯さんは、そのままクズ村の首に細い腕をまわして絡みつく。
「やめろっ!」
腕をほどこうとするクズ村に遠慮も容赦もない佐伯さんは、
「こいつら、二人とも運動音痴だから。見た目こんなんなのに、からっきしなんだよねー」
発言も容赦なかった。
◇
「うおりゃああああ!」
佐伯さんの言葉に二人が項垂れたタイミングでチャイムが鳴って、その後すぐにあたしとクズ村は異世界に呼び出された。
いつにも増して声量を上げて戦うクズ村は、どうやらさっきの佐伯さんの発言をなかったことにしたいらしい。
「大声出すのは別にいいんだけどさー」
あたしはクズ村にとどめを刺す。
「あんたの『静』の力ってただの無効化だから、棒立ちで叫んでるだけのイタい人にしか見えないよ?」
「うるせぇ!」
あたし達の向かいでは詠唱を繰り返すチート青年が、今にも泣き出しそうな表情を浮かべていた。
◇
「うおりゃああああ!」
怒声と共に大剣を振り下ろす。魔物は頭部から真っ二つに割れて、黒い靄を放ちながら霧散した。
「まだまだーっ!」
怒りのままに、男は暴れ回る。
男の名は灰崎寅宗。異世界「ブラックリッパー」、冒険者ギルド「窮鼠」サブマスター。
共に戦うギルド仲間の内に、彼の怒りの源を知る者はいない。
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