第3章 : 魂を慰める旋律
休むために宿へ向かって歩いていた二人だったが、たどり着く前に、ある音が二人の足を止めた。
それは柔らかな旋律だった。ほとんど隠れるように響いている。まるで誰かが、自分自身のためだけに、ひそかに奏でているかのようだった。
何も求めることなく、心に刻まれたひび割れを癒やしてくれるような音楽。
ミサオが先に足を止めた。
エイナルに起きた変化を感じ取っていた。まるで彼の魂が、ほんの少しだけ光のほうへ向きを変えたかのように。
「どこから聞こえてくるのか、聴きに行ってみる?」
ミサオは低いが、芯のある声で尋ねた。
弟子は頷いた。
師とともに、二人は廊下を蛇行するように進んでいく音の余韻を追った。そしてその先は、ひっそりとした一つのテラスへと続いていた。
そこでは空気さえ軽かった。
つい先ほどまでの任務でまとわりついていた硫黄と死の臭いから、遠く離れた場所だった。
そして、そこに彼女はいた。
一人の月エルフが、急ぐこともなく楽器を奏でていた。
その素朴な静けさは、二人の肩にいまだ重くのしかかっていた凄惨な暴力とは、あまりにも対照的だった。
髪は象牙のような白。
無造作にまとめられたその髪の間には、半透明の結晶の糸が紛れ込んでいた。音楽が不協和音に触れるたび、それらは白の中で曇っていく。
静かな青い瞳は、世界よりも、そこには存在しない楽譜を見つめているようだった。
身にまとっているのは旅装束。
縁は擦り切れ、必要なところには繕った跡がある。
エイナルは彼女の笛に目を留めた。
それは高価な品ではなかった。
黒く漆塗りされた竹の篠笛。
その表面には、白い鶴が木の上を浮かぶように見える、繊細な意匠が施されていた。
使い込まれた痕跡。小さな傷や擦り減った箇所。
それらは何千キロもの旅路を物語り、本当の熟達とは、忍耐と傷跡によって積み重ねられるものだと知る者の姿を語っていた。
彼女の音楽は、完璧な魔法ではなかった。
エイナルが広間や式典で耳にしてきた、隙のない演奏とは違う。
そこには不完全さがあった。
旋律が途切れ、再び高みへと昇っていくときに聞こえる、わずかな息遣い。
木の上を滑る指の擦れる音。
そして、息を整えるために必要な、小さな沈黙。
それこそが、最後には若者の心を慰めた。
そこにいたのは、天上の旋律を奏でる神ではない。
自らの魂に刻まれた縫い目を隠そうともしない、一人の女性だった。
途切れも、間違いも含めて、自分の才能をありのままに見せることを選んだ人。
その音色を聴いているうちに、エイナルは肩に積もっていた緊張を感じた。
それは目に見えない罪悪感の板のようだった。
けれど、その板にようやくひびが入り、そこから外へ逃げていく隙間が生まれた。
あの音楽が、不完全なまま美しくなれるのなら。
数分前、振り下ろした一太刀を失敗した自分も、いつか自分自身を許せるのかもしれない。
音が消えると、目の変わった若者が一歩前へ出た。
「こんにちは……僕はエイナル。こちらは僕の師匠、ミサオ。君の名前は?」
「ライラ。私は冒険者よ」
澄んだ、旋律のような声だった。
けれど、その声は守るためには鋭くなれる。
そして必要とされるとき、彼女は織り手でもある。
意志を鍛え、目には見えない傷を閉じる者。
ミサオは穏やかな優しさを湛えて彼女を見つめた。
その肌から生まれたように見える、古い光を感じ取っていた。
「こんにちは、ライラ。あなたは月エルフなのね」
「母もそうだったわ」
彼女は明かした。
「それから、父はハイエルフだった」
ライラはほんのわずかに微笑んだ。
そこには、何かを思い出したような淡い光が宿っていた。
そして、優しい眼差しでエイナルを見つめた。
まるで、彼の中に自分自身の歩んできた道の残響を見つけたかのように。
何も告げず、彼女は新たな曲を奏で始めた。
その旋律は深く、古かった。
若き剣士は目を閉じた。
そして、砦を出てからずっと背負い続けていた見えない鎧が、ついに崩れていくのを感じた。
それは、ただの慰めではなかった。
痛みを伴わずに、過去を思い出すための一つの方法だった。
「ライラ、ありがとう……どうして冒険者になったの?」
最後の音が風の中へ溶けていったとき、彼は尋ねた。
「すべての道が、肩書きへ続いているわけじゃないから」
誰もいない世界に語りかけるような穏やかさで、彼女は答えた。
「私たちの中には、世界をその縁から支えることを選ぶ人もいる。名誉なんていらない。ただ、意志だけ」
濁りの薄れた眼差しで、若者は頷いた。
英雄というものは、それもまたそういうものなのだと理解していた。
孤独の中にある音楽。
静寂の中にある錬金術。
ミサオは穏やかな声で付け加えた。
アインは、さまざまな場所から耳を澄ませている。
大地から。
音楽から。
優しさから。
そして、すべての道は同じ光へと続いているのだと。
「私たちの道は、ここで分かれるわね」
ライラは悲しげでもなく言った。
「でも、歩みが遠ざかれば、出会いまで終わるわけじゃない」
エイナルは目を開いた。
「また会える?」
ライラは、ほんの少しだけ微笑んだ。
幸せそうな笑顔ではなかった。
どこか古い笑みだった。
「ええ」
彼女は答えた。
「でも、今日のような形ではないわ」
「もしかしたら、姿を見るより先に、私の音を聴くかもしれない」
「もしかしたら、あなたがもうこの名前を名乗らなくなった頃に、私があなたを見つけるのかもしれない」
「あるいは、音楽だけが残るのかもしれない……それでも、それはきっと意味があるわ」
ミサオは頭を傾けた。
まるで、その言葉に隠された代償を理解しているかのように。
二人は、何も責めることのない夜に迎えられながら、宿へ向かった。
翌日になれば、再び任務が待っている。
それでもエイナルの歩みは、もう違っていた。
一歩ごとに、英雄へと近づいていく。
あるいは、マナにも、肩書きにも、まだ名を与えることのできない、もっと深い何かへと。




