第2章 : 堕ちた砂丘の要塞 (4)
再び、右目の中で何かが動いた。
糸のように細い、灯った円が一度だけ回転する。
そして、消えた。
「今のは何?」
モモが尋ねた。
みおは崩れた壁の一つへと振り向いた。
「この壁の向こうに何かある」
まだ息を整えきれていない声で、彼女は指し示した。
エイナルが警戒しながら近づく。
アオイは殺気を帯びた静けさの中で弓を引き絞り、ニジはすでに槍を構え、距離を測っていた。
「何かいる」
みおは繰り返した。
今度は彼女の紫色の瞳が電気のような強い光を放ち、まるで石の向こう側を見通しているかのようだった。
エイナルとニジは視線を交わした。
戦闘による疲労は消え去り、代わりに警戒が取って代わった。
「壁を崩す」
エイナルが決めた。
「喜んで」
ニジが答えた。
二人は正確に瓦礫を取り除いていった。
測られた打撃、戦略的な斬撃。
構造物は余計な音を立てることなく崩れた。
その奥には、忘れ去られた墓のような重苦しさをまとった封印された部屋が待ち構えていた。
空気は空っぽではなかった。
それは淀んだ濃密な塊となっており、嵐の前に漂う、あの金属的なオゾンの痕跡が染みついていた。
肺の中に空洞ができたような感覚があった。
まるで部屋の中心にある何かが、自らの存在を維持するために酸素を貪り食っているかのようだった。
粗削りな石の台座の上には、黒い刀身を持つウルフベルフトが置かれていた。
輝いてはいない。
むしろ、その周囲の空間が波打っているように見えた。
それは熱による歪みであり、凍てつく夜の焚き火の上に揺らめく空気のように、現実そのものをぼやけさせていた。
エイナルは焦れたように手を伸ばした。
だが、指が掴んだのは虚空だけだった。
剣は鈍い光の瞬きの中で消え、後には腕の毛を逆立てるような、鈍く冷たい振動だけが残った。
消えたわけではない。
ただ、彼の触覚とは一致していなかった。
エイナルは眉をひそめた。
今起きたことが理解できなかった。
みおが一歩前へ出た。
まだ早春の柔らかさに包まれているような彼女の顔立ちは、十年に及ぶアーケインの鍛錬を物語る厳格さへと硬く変わった。
彼女が見ていたのは剣の形ではない。
世界の織り目に生じた誤差だった。
「視覚的な幻惑じゃない、エイナル。これは彷徨う鉱物の刃よ」
彼女は呟いた。その声はメスのように静寂を切り裂いた。
「この刃は、この時間に属さない瞬間に鍛えられた。あなたが見ているのは、剣が存在するはずの場所の反射にすぎない。でも、その物理的な本体は、異なる鼓動の中に存在している」
右目。
かつて淡い紫色だったその虹彩が濃くなり、深い色合いへと変化すると、鈍い光を放って燃え始めた。
彼女は宙に浮かぶ埃の粒子を観察した。
粒子は落下していなかった。
目に見えない障壁にぶつかるたび、その軌道を波打たせ、人間の目には見えない異常の輪郭を描いていた。
「反射を掴もうとしたら、いつまでも失敗する。世界が隠そうとしている影を掴まなきゃ」
みおは知覚を調整した。
剣の柄の鮮明な像を無視するよう精神に強いながら、数センチ左側で起きている、現実の小さな震えへと意識を集中させる。
物体を探したのではない。
金属の鼓動を探した。
彼女は機械的なほどゆっくりと手を伸ばした。
そして、見たところ何もない空気を指で掴む。
ちょうど、アーケインの眼がマナの「重さ」を捉えた場所だった。
乾いた音が弾けた。
空気が内側へと収縮し、鼓膜を震わせる。
黒い柄が、固く、冷たく、そして確かな衝撃とともに彼女の指の中へ収まった。
「金属の鼓動と自分自身の存在を一致させるために、無理やり自分の存在を合わせたの」
精神的な負荷で荒くなった呼吸を整えながら、みおは言った。
「太陽が動く前に、影を踏もうとするようなものよ。瞬きをすれば、現実に追い出される」
刀身の金属は、人間の知覚そのものへの挑戦だった。
あまりにも深い黒。
見つめるだけで視界が血を流すかのような黒さで、井戸の底に溜まった水が真夜中に放つ光のような、弱く歪んだ反射を映していた。
刀身にはルーンの刻印――ᚠ――があり、死ぬことを拒む熾火のように、暗い赤色で脈動していた。
その傍らにあった古びた革の鞘と、擦り切れた羊皮紙も、ようやく地面に固定されたように見えた。
まるで、何世紀もの間で初めて、それらを手にするに足るほどの効率を持つ者が現れたことを受け入れたかのように。
エイナルは慎重に羊皮紙を広げた。
古く、震える文字は、生きたインクで記されていた。
まるで、インクそのものがまだ呼吸しているかのように。
まるで、その文字たちが忘れ去られることを望んでいないかのように。
⟦
知性のウルフベルフトは、握られた瞬間に{覚醒}へと到達する。
そのとき、持ち主の精神は千の戦いの知識によって燃え上がる。
この刃が「見る」ということを教えた後、何もかもが再び単純なものに戻ることはない。
だが、注意せよ。
ウルフベルフトの飢えは果てしない。
その光を与える代わりに、お前の息を飲み込むだろう。
ᚠ イヴァルディ
⟧
みおは何も言わなかった。
ただ柄に触れた。
触れた瞬間、熱はなかった。
代わりに、凍えるような貪欲な引力が手のひらから生まれ、腕を這い上がって胸へと達した。
すでに乏しくなっていた彼女のマナが、裂け目から水が吸い込まれるように、金属へと吸い取られていくのを感じた。
だが、その空白はすぐに別の何かによって満たされた。
明晰さ。
彼女の瞳に宿る紫色の輝きが瞬き、電気のような閃光となって広がった。
突然、世界は廃墟となった部屋ではなく、データの網へと変わった。
みおはもはや壁だけを見ているのではなかった。
石に走る亀裂の正確な角度を見ていた。
隣にいるエイナルの速まった心拍を感じ取り、濃密な空気の中を漂う埃の一粒一粒、その軌道さえも苦もなく計算していた。
彼女の知覚があふれ出した。
疲労はそこに残っている。
だが今や、彼女の精神は肉体が追いつけない速度で走っていた。
ウルフベルフトは彼女に肉体的な力を与えているのではない。
世界を解読された状態で渡しているのだ。
「呪われてる……でも、待っている運命がある」
エイナルは黙って彼女を見つめた。
「それを取るのか?」
みおは首を横に振った。
モモは横目で彼女を見た。
「ここで唯一呪われてるのはエイナルよ……魔法のせいじゃないけどね。ほら、見てみなさいよ」
全員が吹き出した。
アオイさえも笑った。
それでも警戒は解かなかった。
エイナルは穏やかに彼女を見た。
「幸運は、呪いに姿を変えた祝福だ……あるいは、祝福のように微笑む呪いなのかもしれない。向き合った者だけが、それを知る。だから、その武器は……お前のものだ」
みおは深く息を吸い、ウルフベルフトを手に取った。
エイナルの言葉は慰めではなかった。
真実だった。
彼女は一行へと振り返った。
彼女の刀は正確に斬り裂いていた。
ドラコニドの首領の腕の一本が、彼女の手の中にあった。
緑色で、砕けていた。
エイナルの手のひらは血で汚れていた。
粘つき、熱を帯びた血だった。
それは、勝利でさえ代償を伴うのだと思い出させていた。
エイナルは、もう声が震えることを恐れない声で言った。
「みんな……ギルドへ戻ろう」
一行は急ぐことなく斜面を下っていった。
要塞は背後に残され、戦闘の轟音とは対照的な、音のない空虚に包まれていた。
モモは珍しいほどの静けさの中、エイナルの隣を歩いていた。
アオイは細心の注意を払った様子で弓の弦の張りを確認し、すべての準備が整っていることを確かめていた。
その一方で、ニジは中央の食料庫から回収した物資の包みを背負っていた。
みおは観察しながら最後尾を歩いていた。
彼女の目は道に向けられていない。
彼らが後にした影へと向けられていた。
要塞の墓場のような静けさが本物なのか確かめるため、慎重な距離を保っていた。
村に到着すると、彼らは敬意をもって迎えられた。
歓声はなかった。
だが、犠牲者も騒ぎも出さずに任務を果たした者へ向けられる、言葉なき敬意はあった。
エイナルは成功の証として、砕けたドラコニドの首領の兜を差し出した。
その一方で、アオイは契約の完了に署名した。
ヘレナは受付でそれを受け取った。
いつもの中立的な態度は変わらなかったが、記録を確認すると、その声はわずかに柔らかくなった。
ヘレナは読み取りパネルへと振り向いた。
低い唸りがカウンターを走り、全員のトリケトラが青みがかった光を放った。
結晶の表面で数字が点滅し、そして停止した。
「モモ| 3,635 PG |青銅級ランク」
「アオイ| 3,641 PG |青銅級ランク」
「ニジ| 3,648 PG |青銅級ランク」
「みお| 3,679 PG |青銅級ランク」
「エイナル| 3,683 PG |青銅級ランク」
「ちょっと、冗談でしょ!?」
モモは硬貨の入った袋を放り出した。
袋は重々しい音を立てて床にぶつかり、彼女はカウンターの前でつま先立ちになった。
その尾は電気のような憤りを露わに激しく揺れていた。
「私はニジの腕を助けたし、あの槍兵の目にボルトまで撃ち込んだのよ! 今すぐ、そのプリズムを監査してちょうだい!」
ヘレナは瞬きひとつしなかった。
記録を整え、眼鏡のフレーム越しにモモを見つめる。
そして、パネルの上でエイナルの得点がもう一瞬だけ輝いた。
「正直に言うと、この任務は別の冒険者たちが依頼していたのよ……三十歳前後、あるいはそれ以上の者も何人かいたわ。注目してもらうには年を取りすぎていたけれど」
ヘレナは小さく微笑んだ。
「でも私は、あなたたちのような英雄たちのために取っておくことにしたの。良い判断だったと思わない?」
エイナルは答えなかった。
ただ微笑んだ。
ヘレナがパネルを閉じる。
任務は正式に完了した。
外へ出る前に、アオイはコミュニケーション・モノリスを起動し、みおの信号を一行へと接続した。
「もう同期したわ」
アオイが言った。
「別々の村にいても、話すことができる」
エイナルはこの機会を利用し、ライエルへ録音メッセージを残した。
[ライエル、今回は新しい仲間のみおと一緒に、みんなで昇格を申請しに行く。元気でいるといい。君の近況を聞かせてもらえたら嬉しい。]
みおはいたずらっぽい口調で眉を上げ、そんなライエルという女性が誰なのか尋ねるような素振りを見せた。
だが、他の仲間たちはただ意味ありげな笑みを交わし、エイナルだけを自分の秘密とともに残した。
宿へ向かう道は、必要な静けさに包まれていた。
疲労は肉体だけのものではなかった。
それは、成功した任務の後に残る、戦術的な重みでもあった。
彼らは急ぐことなく身を清めた。
湯気が鏡を曇らせ、聞こえるのは落ちる水の規則的な囁きだけだった。
モモは浴槽の中で眠り込んだ。
アオイは相変わらず魔導書に没頭し、ニジはただの習慣から槍を研いでいた。
部屋に戻ると、みおは光の反射なのか疲労なのか、顔を青く染めながら、少し離れた場所からウルフベルフトを見つめていた。
剣は壁に立てかけられていた。
まだ黒い粉塵で汚れていたが、彼女にはそれを掃除する気力が残っていなかった。
彼女はその黒い金属を、まだ完全には信用していないかのように見つめていた。
あるいは、その金属が代償として彼女に求めているものを。
夕食にはパンと煮込み料理、そしてシードルを口にした。
料理から立ち上る温かな湯気が、彼女の頬に少しだけ色を戻した。
だが、乾杯も議論もなかった。
木に当たるスプーンの音と、勝ったからではなく、ともに生き残ったからこそ安心できる者たちが共有する空間だけがあった。
食事を終えると、エイナルが沈黙を破った。
「明日、北へ向かう」
「どの村へ?」
モモが目をこすりながら尋ねた。
「スキャルダルヴィーク」
みおが答えた。
「そこに監視者の聖域がある」
「その聖域で私たちの昇格を申請する。そうすればギルドが承認して、正式に記録へ刻まれるわ」
アオイが地図を閉じながら付け加えた。




