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死者の声  作者: 岡本ゆきえ


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13/13

説得

私はたかおと相談して次の休みに岩月神社のさくらさんに合うことになった。さくらさんは電話で心よく待っていると言ってくれた。私とたかおは仕事をして帰りにご飯を食べた。相変わらず人影は現れた。私は温かい眼差しを向けたが人影は何も言わない。人影を見ながら私とたかおは普通に仕事をして生活していた。

休みの日になると私とたかおは駅で待ち合わせた。2人ともラフな格好で私はジーンズを履いていた。たかおは私の方に手を挙げると近づいた。

「早く来たのね。」私は微笑んだ。たかおは少し照れた。

「加奈の事が心配だしな。」

「昨日も会社であったわ。あれから呪う者は現れない。」

「何か落とし穴が有るのかも知れない。」とたかおは用心深い。「行こう。」とたかおが言う。

私とたかおはバズのターミナルへ歩き出した。駅前のターミナルは人が盛んに行き交っている。私とたかおは葉隠山のバスに乗った。

バスはハイキング客で賑わっていた。誰も葉隠村の呪いの事は知らない。親子連れや若いカップルがいる。

私は複雑な気持ちになった。たかおとドライブに行って楽しいはすが呪いの藁人形を二人で見つけた。呪いの声を聞き葉隠神社の如月の巫女を助けようとしている。

周りのはしゃぐ声とは裏腹に私とたかおは沈み込んでいる。

バスが葉隠山に近づくに連れて何か澱んだ空気が感じられた。

たかおも何か感じたのか顔を歪ませている。

岩月神社の大きな鳥居をくぐり抜けご神木の楠木まで来るとさくらさんが待っていた。

さくらさんは私と同じジーンズを履いている。さくらさんは頭を下げた。

「待っていました。こちらへ」さくらさんは私とたかおを神社の神殿へと案内する。

私とたかおは黙ったままさくらさんに従った。

私とたかおはさくらさんと一緒に神殿へ上がった。神殿には鏡が祀られ御神酒と洗い米と塩が備えられていた。確か鏡は天照大御神の証だ。

私とたかおは祭壇の前に正座した。

「ここへ来るまで空気が澱んでいたでしょう。」さくらさんは祭壇の前に座る。

「はい。」私はたかおの顔をちらりと見る。

「僕も感じました。」

「私も感じました。空気が澱んでいたって。

」私はたかおと顔を見合わせる。

「呪う者がいるんです。」さくらさんの言葉に私は怖くなる。

「呪う者は神社には入れません。私が呼び出さなければ。」

「呼び出す。」私はぞっとした。たかおもびっくりしている。さくらさんは霊媒師か。

「御魂を呼び出すのですよ。呪う者の御魂を呼び出すんです。」

「それは汚れでは。」たかおが言った。

「いいえ。彷徨う御魂を浄化するのです。御魂が納得しなければ死者はこの世を彷徨うのですよ。」さくらさんは静かに言った。

「御魂を清めるんです。」

私はさくらさんがどうやって呪う者の御魂を呼び出すのかと思った。たかおも不思議そうな顔をしている。

「では始めましょう。」さくらさんは柏手を打ち手を合わせる。

「八百万の神よ。如月の巫女の願いを聞き入れ給え。」さくらさんは堅く目を閉じた。

しばらく静寂が訪れる。鳥たちのさえずりが聞こえてさらさらと風の声がした。

すると神殿の空気が澱んだ。それは何かの前触れのようだ。

「あの女は私のものだ。」地獄の死者が訪れた。神殿の片隅に大きな人影が現れた。私とたかおはのけぞり身を凍りつかせた。

さくらさんは邪悪な人影を見つめる。

「いつまで彷徨うつもりなの。」恐れもせずさくらさんは言った。

「永遠にだ。永遠に私のものだ。あの女は永遠に閉じ込めている。」

「諦めなさい。如月の巫女は神に仕える者。清らかなまま死んで行かなくてはならない。」

「そんなことは知ったことか。私はあの女を愛している。」

「貴方は邪念を持っているわ。」

私は怖かった。たかおは私を抱きしめた。

「怖がるな。加奈。」たかおは言った。

私はたかおの腕の中で小刻みに震えた。たかおはしっかりと私を抱きしめている。たかおは震えてはいなかった。

邪悪な人影の横で弱々しい人影が現れる。

「助けて。お願い。魂を解放して。」弱々しくもう一つの人影は言った。

「あの封印がある限りお前は私のものだ。」

封印、あの葉隠神社の藁人形のことだ。夢の中で藁人形の銀のくさびを引き抜こうとして私の両手首がもぎ取られ本当に両手首にあざがついた。そして災いの視線が私を苦しめた。

「貴方の気持ちは本当の愛情じゃない。」

強くさくらさんは言った。

「お前に何がわかる。愛することを知らない者に。」邪悪な人影は弱々しい人影を隠した。

「可哀想な御魂ね。」さくらさんは柏手を打ち目を閉じた。

「さてどうすればいいかしら。」

邪悪な人影は弱々しい人影と共に消え当たりに静寂が戻る。さくらさんは深くため息をつく。私は何も言えなかった.

「葉隠神社の藁人形の銀のくさびを引き抜けばいいんじゃないですか。」と力強くたかおは言った。さくらさんは困った顔をした。

「呪う者が浄化しないわ。抵抗されるわよ。」

「さくらさんにはチカラがある。」

「呪う者は本当の愛情がわからないのよ。わからせてあげたいの。」さくらさんは私を見た。私は怯えから解放されてたかおを見た。

「私もね。男の人を愛したたっことないの。如月の巫女として生まれて異性に興味が無かった。呪う者の言う通りよ。」さくらさんはたかおを見た。

「えっ。」たかおは小さく声をあげた。

「どういうことですか。」私も聞き返す。

「呪う者の封印を解いて葉隠神社の如月の巫女を解放するには加奈さんとたかおさんが必要なのよ。」さくらさんは言った。

「どういうことですか。」私はさくらさんの目を見た。さくらさんは少し悲しそうだ。

「あなた達が本当に相手を思いあっていれば呪う者の封印を解くことができる。あなた達の愛が本物ならね。」さくらさんはたかおを見た。

「僕は加奈を愛しています。」たかおはさくらさんを見た。

「私もたかおを愛しています。」私もさくらさんを見た。

「もし2人の愛が偽りならば呪う者に殺されるわよ。それでもやってくれるのね。」さくらさんは私とたかおに念を押す。

「呪う者の封印を解いてみせます。」力強くたかおは言う。

「私も自信があります。」私はたかおを愛している。私はたかおの愛情を信じた。


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