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わがまま令嬢とその侍女  作者: たなぼた まち
魔女の追憶 番外編
56/120

04

 ユーリスは昔、街で医者をしていたらしい。

 しかしある日、崩れる建物から幼い子どもを守った男が緊急搬送されてきた。

 全身血塗れの男。

 腹に突き刺さる太い木材。

 誰もが彼の命は終わった、と思った。

 しかし、ユーリスだけは違った。

「先生、それは駄目です! まだ国の承認がおりていません!」

 看護師はユーリスが薬品棚から取り出した物を見て、やめるように声を荒げる。しかし彼はその制止を振り切り、それを男に注入した。

「医者として生きていけなくなりますよ!?」

 ユーリスは男の治療を続ける。

「もうやめてください! この人がこのまま死ねば、先生はまだ先生でいられるんです!」

「生きている人の前で死んだらなんて言わないでください!」

「っ!」

 ユーリスは青ざめて涙をこぼす看護師を見た。

 分かっていた、彼女が善意でそう言ってくれていることを。

 でも、それは治療をやめる理由にはならなかった。

 看護師はユーリスの手を見た。

 男の血で塗れたその手は震えていた。

「先生……」

 ユーリスは優しく笑った。

 その顔は泣いているようにも見えた。

「僕は先生だから、助けたいと思ってしまうんです」

 そのあと、無事手術は成功した。

 しかし、ユーリスは承認がおりていない薬品を使ったということで医師免許を剥奪され、そしてこの場所オポズにたどり着いた。

 彼は非公認の闇医者として働きつつ、雨漏りするこの部屋で薬学の知識をエリーに教えていた。

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