06
「暗くなっちゃったな」
買い出しを頼まれ外に出たのが夕方。
買い出しを終えた後、一雨降られ、やむのを待っていたらだいぶ遅くなってしまったマーガレットは急ぎ足で帰路につく。
田舎育ちの彼女にとってこの道は、まだ街灯があるので明るい方だが、閉まっている店の前に座っている若者や、路地裏で煙草をふかす男たちが視界に入って、鼓動が早くなる。
早歩きが小走りに変わる頃、恐れていたことが起きた。
「急いでどこ行くの?」
マーガレットの前に三人の男が立ちはだかった。
「あ、あの……」
怯えた目で男たちを見たことが、裏目に出た。
その目を見た男たちは嬉しそうに声をかけてきた。
「大丈夫だよ、怖がらせたりしないって」
「そうそう、俺たちと一緒に呑もうよ」
持っていた紙袋から林檎が落ちた。
林檎は坂道のせいで下へ転がって行った。
「あ、奥様の!」
取りに走ろうとすると、男の一人がマーガレットの腕を掴んだ。
「奥様ってことは、どっかのメイドさん?」
「こんな可愛い子が給仕してくれるの、最高じゃん」
掴まれた腕が離れない。
「あの、離してください……」
マーガレットの目には大きな涙が浮かぶ。
「うわぁ、お前泣かすなよ。こいつ、怖いよねぇ」
ひっくとしゃくり上げて泣くマーガレットは全員怖いと言うことも出来ない。
「ほら、一緒に落ち着けるとこ行こう」
「嫌っ! やだ、やだぁっ」
掴まれた手を振り回すが離れるどころか、力強く握りしめられる。
「ったく、暴れるなよ!」
怒鳴りつけられマーガレットは「ひっ」と叫んで小さくなってしまった。
大人しくなったマーガレットに男たちは満足したようで引っ張って路地裏へ連れて行こうとする。
しかし、その瞬間、マーガレットを掴む男の腕を別の手が掴む。
「離してもらえませんか?」
その聞き覚えのある声にマーガレットは顔を上げる。
「アソ、ラさん……?」




