05
「今日、芋がめっちゃ安かったんですよ! あとこれ農家のおばちゃんがトマトおまけしてくれました」
太陽のように笑う少年の名はロン。
リーシャの元で働く料理人見習いだ。
土がついたままの芋を手に取り、リーシャは「いい野菜だ」と満足げに頷いた。
「お前も良い目をしてきたな」
芋を持った反対の手でロンの頭が揺れるくらい撫でまわす。
褒められたロンは満面の笑みを浮かべた。
「ほれ、今日のレシピだ」
「ありがとうございます!」
先程書き終えたレシピをロンに渡すと、彼は野菜を洗う為に厨房の奥にある裏口に出る扉へ向かっていった。
「だいぶ懐かれているね」
アソラが言うとリーシャは少し困ったように笑った。
「あいつはもっと人を疑うことを覚えた方がいいな。俺が悪い奴かもしれねぇのに」
「きっとロンにはリーシャが良い人か悪い人かなんて関係ないと思う」
「ん? どういうことだ?」
アソラは全身でリーシャに褒められて嬉しいと語っていたロンが眩しく見えた。
この屋敷には眩しく見える人が沢山いる。
「リーシャが悪い人でも、ロンにはリーシャはリーシャなんだよ。だからきっとあなたが何をしてきたとしても、彼は受け入れてくれる」
ロンが出て行った扉を見たままリーシャは黙った。
しばらくしてようやく、「そうか」と呟いた。
「アソラいいもんやるよ。口開けろ」
急にそう言われ眉間に皺を寄せるアソラにリーシャは「毒なんか入ってねぇよ」と笑った。そして渋々口を開くと、中に丸い硬い物が転がってきた。
「甘い」
「あぁ、黒糖の飴だ」
「黒糖?」
口内でコロコロと転がしながらアソラは尋ねる。
「俺がガキの頃よく食べてたんだ。美味いだろ」
くどくない甘みが口の中に広がる。
「うん、おいひぃ」
アソラがそう言うと、彼は満足そうに頷いた。




