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異世界修繕紀行  作者: スイスロー
1/6

有休なら大量にあります

目の前で燃え尽きたはずの城が再生されていく。

遺跡として有名な古城だったが、先の落雷で焼失。

貴重な文化財が燃え尽きた


はずだったが、



古城はゆっくりと土台から始まり、外壁の塗装まで進行、最後に新しい城からよく見知った古い城へと変化していく。



「なんなんだ、一体!」

古城を含めた周辺は国の公園として管理されている

公務員の公園管理人が、車から驚いた表情でこの様子を見つめていた



その車を、死角からこっそり覗く女の子が1人。

「まさか人が来るとは、でももう元通りですから問題ない・・よね?」

ガッツポーズをして、自分を励ましている。

冷や汗が出ているのは、これから上司に報告しに行くのが億劫だからだ。



「?!だれかいるのか?!」

しかも気づかれた。



慌てて隠れてその場を離れる。

あいにく転移魔法とか、ワープする機械は無く

自走しかない。


しかも徒歩。


膨大に広い公園を今から徒歩で踏破して、誰にも見つからず帰るのだ。


「もういや!こんな仕事」



「誰もいない?気のせいか」

公園管理人は、誰もいないことを確認し、深呼吸して古城に入った。



「し、信じられない、」

手入れがされていたとはいえ、所々錆やカビがあった古城は、内装が完全に綺麗になっていた

色褪せただけで、調度品や書物は十分使える復元ぶりだ。











「まあた、アンタは見つかったって?何度目よ」

上司の形原伊丹(かたはらいたみ)は嫌悪感を露わにした

ここは全てのモノを元に戻す作業が主の復元課である

よく、バトルモノで岩などを破壊するだろう。

主人公の服が毎度破れることもあるだろう。


そんな壊れてしまったものを元に戻すという地味な職種がここである。


天久手の勤務先は地球。文明は比較的発展している



別の課ではトリップ課という、あらゆる夢世界に通じる花形の課もあるというのに、ここは治す、直す、

復元するの裏方作業。

現地でずっと直す、という派遣もあるが、今のところ誰も帰ってきていない。

もちろん家族も一緒に赴任先で暮らしている

何年、何百年単位の仕事だ。



「申し訳ありません。作業は滞りなく終了しましたが

管理されている方が突然来まして。姿は見られていませんので、大丈夫です」


主人公の名は天久手 直生(あまくて なお)

すでにここに勤めて8年目のベテランだ。

なのだが。


「貴方が復元の全てを担う自覚が足りないわよ」


容赦ない上司の言葉に苦笑いで答え、部屋を後にする




「だったらステルス機能か瞬間移動かリアルに車か飛行機手配してよ。ね?シマラ。」

愚痴をこぼす相手は飼い猫のシマラだ。

決して某アパレルではない。


雑種の縞々柄で、愛くるしい白い毛並みのお腹を見せて癒してくれる。


「あー、癒されるううう」

猫のお腹に顔を埋めて、天久手はやさぐれた心を癒してもらった。


翌日の仕事は、難易度がさらに上がり、自然災害で崩落した山を修復する作業だった。

破壊前の山のデータをダウンロードしてある


天久手の持ち物はリュックと長距離を歩くときに使う杖である。魔法が出ない普通の杖。

服装は動きやすい作業服である。

ぱっと見工場で働く人にしか見えない


先の上司に睨まれてからはろくに予算も貰えず、ほぼ天久手のポケットマネーで賄っている。


ため息を深呼吸に変え、真剣な表情で山の情報を一つずつ構築していく。

山の形、土、草木、動物、建築物。


新人なら何日もかかるが天久手なら数時間で済む


土砂崩れで大きく山の形を変えた光景から、盛り土が

ニョキニョキ生えてきた

草木が芽吹き、どんどん成長し、元の姿に戻っていき


ズザザザサ


何かが滑り落ちてきた。

黒い、何か塊のような。


作業に集中してい天久手は気がつかない。

だが落ちてきたモノは確実に天久手の方へゆっくりと這い寄ってくる


「一回休憩っと。」

30分ですでに半分以上終わった為、作業中断し、

持ってきたお茶を飲もうとした


「?!」


足元に黒い塊が漂っている。

黒い手がびっしりと張り付いており、グゲゲという呻き声も聞こえる。



「ああ、ごめんなさいね、山に埋まってたのね」

怯える様子もなく、慣れた手つきで手を握り返す

黒い手は固まったのち、おずおずと天久手の手に沢山の手を重ねてきた。



「不法投棄のようだから、貴方は誰かに見つけてもらうわね」


そう言うと、修復している山のどの辺りから出てきたのかを検索する。

検索は手持ちのスマホで施行する


杖や水晶玉などもあるが、ここの世界で不自然なく使えるのはこの道具だ。


その後完全修復した山を確認し、黒の塊が埋められていた場所に移動、つまり山を登る。


「きっ、きっつぅいなあ」

獣道のような場所を移動し、目的の場所へと向かう

ここは人間の作った道があるが、そこを使うのはよろしくない


途中、熊らしき焦げ茶色の物体がこちらを見ていたが、黒の塊が天久手を守るように威嚇した為、すぐに何処かへ行ってしまった。

当の天久手は、汗だくになりながら登山中である


「くう、先輩ならよくわからない道具で浮いて移動するんだろうなぁ」

復元課の数少ない先輩で、現在育休で不在のメンバー

がいる。

育休前最後の不思議アイテムは

空飛ぶ紙コップだ。


職場内でお茶を配布するのに便利だと言っていた







天久手がやっと目的の場所に辿り着いた頃には夜中だった。街灯なんてない暗闇が広がっている


普通の女性なら怖くて動けなくなるだろう。



「まあいいか。周りに何も居なそうだし」


暗闇のまま突き進む


まだ満月が照らしているだけマシだ

森林が深くて、隙間からしか見えないが



程なく何か埋めてある土が真新しい場所に来た

とはいえ暗いため、盛り上がっている土しか見えない


「さーて、掘り返しますか!」

素手で掘るのはちょっと、そのため鞄から取り出す

小さなスコップ。


女性とは思えない速さでガンガン掘っていく

掘った土がどんどん積まれていく

塊は、のんびり後ろでウゴウゴたゆたって待っている



五分ほどで目的のものに辿り着いた。



死体ではない。


なにかの宝具のようだ。

宝石の付いた金色に輝く首飾りに、黒い染みがこびり付いている


「所謂曰く付きか。まあ、供養してもらうために一旦預かりますか」

などと独り言ばかりいうのは良くない。


あとは無言で作業を終えた。

黒い塊はずっと足元にくっついている


「帰ろうか。あと、君はとりあえずクロね」

名前をつけたら別れる時に悲しくなる、が、ちゃんと成仏?させるまでは呼称は必要だ。









「うわぁ!」

「ひ、ひいいい」

「どこのやつだ!あんな物を連れて帰って!」

会社に帰ってきた瞬間から、ほかの社員が悲鳴をあげて逃げていった


血だらけでも泥だらけでもないので、何か心霊が肩からのぞいているのか?

足元にクロがすり寄っているくらいで、何もない。

エレベーターで復元課の階にいく


開いた先で、形原課長が鬼の形相で待っていた


「なんてものを起こしてくれたの」

冷たい声で天久手を口撃するが、


「宝具ですが?この子が成仏できるように、浄化をお願いしたいのですが」


「あなたが持っているそれは!!邪神を封印していた

聖杯なのよ!宇宙の彼方、深淵の奥に封印された代物

・・玄関に飾ってあったの見たことあるでしょう」


たしかに光と闇の神の戦いというベタな絵画はエレベーターホールにある。


「今回崩落した山の中にありましたよ?ブラックホールにしまってあったわけじゃないですよ?」

よく似た別物じゃないのか。


だいたい、封印解けてたらあそこはとっくに焦土だ



だが形原課長は汚いものを見る目で天久手を見る

「今、上の人間に連絡しているから、そこを動かないで。」


どこからか大勢の声が聞こえてきた

武装した警備員が、武器を構えてガラスで透けた廊下を遠距離からくるのが見える


あっという間に目の前に銃を構える複数の人、

形原課長は後ろに隠れる


「邪神に汚染されている可能性もあるわ、殺してかまわない!」


「課長こそ、厚化粧に汚染されてますよね?」

それだけ言ってエレベーターを閉じた


悪口をとうとう言ってしまった。

殺すとか頭がどうかしたのかあの人は。

だが、あの武装した人たちの目は本気だ


トリップ課に降りる。



全速力で、会社1変人の元へ走る





「こ、んにちは!」

「うん、きみ凄いの連れてきたねぇ」

と言いながら、天久手を部屋に入れ、ブラインドを閉める。


会社1の変人、

トリップ課のジンさん。

ゾウリムシとミトコンドリアの果てしない恋愛長編を作りあげてしまったトリップ課のトリックスター


部下も全員顔はヒール寄りだ。優しいけど。




「よくそんなの持てれるな。普通なら発狂して死ぬんだけどな。」

「この宝具、そんな危険なオカルト物ですか」

たしかに血の染みらしきものがびっちゃり付いていて

宝石の煌めきがくすんでいる


「そうだな、保守派は君ごと処分しようとするからな

・・君は修繕能力は復元課一だ。死なせるなんてとんでもない。形原くんは面倒なことにしてくれたよ。

これで内々にできなくなった」

ジンは、引き出しから何やらガチャガチャ探しているが、デスクに出てくるのはひたすら飴だ。

氷砂糖に黄金糖、黒飴梅飴

渋い飴ばかり出てくる


「あった。」


宇宙のポスターだ。

壁に素早く貼る。


「天久手、ここの会社は後ろめたいことがある。

だから、真実を知られるのを嫌がるんだ。

まあ、邪神って会社が言ってるだけだから。

社長には俺から言うから、とりあえず別次元の世界へ飛ばす。

生き延びて頑張れ。また連絡するからよ」


と言うと、天久手をポスターへと押しやる


ぐにゅっ


「ご迷惑をお掛けしましたぁぁぁって、あ!シマラのお世話お願いしまっ」

天久手が吸い込まれ、クロもジンに手を振りながら消えていく


ジンの足元に宝具が残された


「 動くな!」

武装した警備員だ。

形原課長がジンに銃を向けさせている


「はあ、誰に向かって言っている?」

ジンの凄みで、警備員全員銃を落とし、形原は崩れ落ちる


「宝具はそこだ。彼女は呑まれた。ソレにな。まあ

触りたくないから後は君が持ち帰りなよ」

形原課長に、ジンが一瞥すると


「そんな不浄、触れたくありませ「持って行け、お前の部下が持ち込んだものだ。二度言わせるなよ」

もう一度凄むと、形原は裏声で返事をして、ハンカチで掴んで持ち上げる。


「お前らは、ソレを護衛しろ。上の報告は俺が引き受ける」


そうしてトリップ課に静寂が戻る



「シンドウ」


「はいはい、俺が護衛ですね行きますよ」

ひとりの男が、片手をひらひらさせながらポスターに入っていった。



「さあて、報告書をまとめるか。」

拙い手つきで、ジンはPCに向かい始めた。

手書きなら即だが、機械オンチなジン、上への報告書が書き終わって対策を講じるのは長い時を必要とするようだ。


そう、天久手の苦難がここから始まる






…………………………………………………………………――――      ――――――――――――――――――――


「あー、漏らしたかもしれないー」

あの状況下でトイレに行きそびれたのだが・・・・・尿意が消えており、下半身が冷たい。

まさかの粗相に軽く絶望を体感する天久手。

頭を抱えた際、髪の毛がぐっしょり濡れている事に気づく。


目を開けると、草むらにずぶ濡れで倒れていた

起き上がると思い出す尿意。


草むらで済ませて出てくる。

服を乾かしたいが先ずは状況を把握しなければ



周りは山と森と草原

近代文明の様子がない


「出た、トリップ課お得意の異世界!いや今までも似たようなものか」

地球は公衆トイレがあって非常に良かった。

コンビニやスーパー、図書館、公園、道の駅

おトイレを借りれる機会がいくらでもあった


だが、今やサバイバル。そこらで毎回するとなると

衛生面を考えなければならない


足元に何かあったかい感触。


「キュー?」


クロだ。黒い塊に、口が生えた。

丸い口の中は吸い込まれる模様の紫で、歯はない

ちょんちょん突くと、キュウキュウ鳴いて喜んでいる


「っぶし!」

くしゃみが出る。震えも出る。


とりあえず、何か燃やして暖を取ろう。

森と草原の中間に、程よく休憩できる場所を見つけた

いつも持ち歩く道具は持ったままだった為、火をつけるのも地球産のチャッカマンと、適当な枯れ枝、着火用にメモ帳に形原の悪口を書きなぐり、一枚破ると

チャッカマンで勢いよく火をつけた。



枝と蔓や蔦で作った物干しに服を掛け、全裸で座る天久手。クロが前半身を隠すようにくっついているので黒い布をかけているように見えるが

全裸である。


後ろから見れば背中とお尻が丸見えだが、どうせ誰もいないので、そのままだ

クロが意外とモフモフしていて温い。



日が暮れて真っ暗。

空には満天の星と月。


「月が二つ、ない、ひとつだけと。色も地球と同じ色、星の星座は異なるか、はあ、」


お腹が空かないので、寝れそうだ。

ストレスで食欲不振なのかもしれない。



だが、服を着てから寝ないと何かいたら大変だ



そう思いながら


熟睡した。







後から来たシンドウは、焚き火の煙を見つけ走ってきた


だが、それを伺っているのはシンドウだけではなかった


野盗だ。


馬車と馬に乗った野盗たちが天久手の方へ向かっている。このままだと彼女が危険だ


「仕方ない」


野盗めがけて走るかと思いきや、真っ直ぐに天久手の方へ向かう。

人数が多い分、撃ち漏らした相手が天久手を襲うとも限らない


シンドウはすぐさま逃げるよう起こそうと天久手を揺り動かす。

クロも一緒に寝ていた為、ずり落ちる


そしてちょうど都合よく月明かりが出てきてよく照らす。


シンドウは硬直した



そう天久手、全裸で寝ていた

しかも結構胸が大きくシンドウ好みの顔だった

野盗が来なければもう少し目に焼き付けるが、頭を振り荷物を持ち、クロも持ち、火を消して彼女を横抱きにして走りだす


野盗たちがそれに気づいて追いかけようとしたが、

シンドウはすでに離れた距離にあるちょうどいい洞穴に場所を移していた。


「さすがジン先輩のチョイス。都合よくことが運んで大助かりですよ」

シンドウがそう言って安堵した

瞬間。


「私、穢されちゃったんですか・・」

天久手が起きて、胸を腕で隠しながら怯えた顔でシンドウを見つめていた


「い、いや!違う!ジン先輩に言われて君の護衛に来たんだ。シンドウ、シンドウと言います。この度は、

「「申し訳ございませんでした!」」



二人同時に土下座する


「私こそ、助けてもらったのに冗談言って困らせてごめんなさい!」

「俺の方こそバッチリ見ちゃってすんませんっ」


そこで始まる謝罪合戦。


全裸土下座の天久手にクロは背中に被さり、隠すように身体を広げた



服が乾くまでの間、シンドウのジャケットを借り、

シンドウは周りを警戒しながら体を休めた。




朝。

天久手はクロ、シンドウとともに人のいる集落を探すべく出発した。

舗装された道路でなく草原をひたすら歩いている。

遠くに道は見えてきたが、コンクリートではない


途中、立派な桃の木があったので朝食をとり、食料として数個カバンにしまう。



「どんなとこだろうな。野盗なんている時点で電気は

ないだろうし」

「そうですね、何か修繕できるものがあれば直して商売にする方向で生活していこうと思いますが」


天久手はにへらっと笑う。

さすが修繕作業で多様な場所を行き来しているだけあって肝が座っている。


ふっと笑ったシンドウ。



さすが世界各地を身一つで出歩いているだけあって度胸が据わっている。



「改めて、新道誠保(シンドウサネヤス)だ」

「天久手直生です」


和解した二人に容赦なく朝日が注ぐ。





仮眠を取ってから出発した為、昼前になった。


道を見つけ、ようやく人が通る所まで下りてきた

だがやはり、見えてくるのは自動車ではなく荷馬車、馬、牛、羊、鶏。



牧場の横を、歩いていく。



「言語や食べ物は大丈夫です。そこの環境に溶け込んで仕事をするのが、地味な復元課ですから」

泥水も、お手製の浄化キットで飲めますから!と


早速飲もうとするのでシンドウは全力で止めた


服は、地球のスーツを気に入って着ている。

天久手は可愛いのに勿体ない作業服だ。


すれ違って行く人たちは麻や綿の簡素な服で、見るからに中世くらいのレベルだ


こちらをチラチラ見ながら通り過ぎ、後ろでヒソヒソ話しているのは、心苦しい。



やがて村と呼べる集落まで辿り着く頃には、村人に囲まれるという不測の、ある意味案の定な展開となった



クロは天久手の腰回りにベルトのように張り付いている。



「何か御用でしょうか。私どもは旅のものです。

つい先日野盗に襲われ、命からがら逃げてきました。

この服は、野盗たちから逃げる際に着ていたものでふ


大事な所で噛んだ。



天久手が見るからに落ち込むのを他所に、シンドウが続けて説明する。



「あなた方に危害を加える事はありません。俺たち、

いや私たちは、安全な場所へ行きたいだけです」


集まっている村人たちは鍬や鋤をもっている。

鉈や斧もある。


静かに周りを分析しながらシンドウは守るように天久手の前に立っていた。



「昨日、空に星が降りました。七色の星が貴方がたの来た方角へと落ちていった。

そして、野盗たちは今朝、全員倒されているのが発見されました。盗品は全て持ち主が判明し、戻されております。」


村長らしい髭の長い白髪の老人が一歩前に歩みでる



「貴方達がそうなのではないですか」


「いや、この子を助けた後すぐ野盗から離れたから俺、私たちじゃあないな。」

シンドウは正直に伝えた



天久手は後ろ手に守られながら、村の様子を見た。

焦げた壁、穴の空いた屋根。


火山は周りにはない


女が少なく、男も少ない。

子供と老人が主のようだ



「あのう、もしかして悪い領主か、盗賊団でもいらっしゃるのですか?働き手の年代の方々が少なく見えますが」


天久手は何気なしに聞いたが、シンドウはしまったと思い、修正しようと口を開きかけ



「よくぞ気づいてくれました!実は近隣の森に盗賊団が住み着きまして。子供を人質にされて男は労働、女は身の回りの生活にと連れ去られてしまったのです」


歯が殆ど無いのにも関わらず、すごく流暢に話す長老

(仮)

自分の身分明かさず、本題に入るのはまるでロープレのやうだ。


天久手は気にしていないが、シンドウは面倒事になったと心中で舌打ちした


ジン先輩が便宜を図ってくれているから追っ手などは無い。

しかし、平民、モブの一人として静かに暮らすためには武勇伝イベントから離れなければダメだ


回想を終える頃、シンドウは噂の盗賊団を一人残らず狩りつくし、縛った盗賊団を馬車にお供え物の団子のように積み重ねていた。


鎖で繋がれた男や女たちも解放し、役人のところへ盗賊団を連行するため、村人たちから場所を聞こうとしたが、皆殺せと連呼してきた


どうやら役人たちは全く耳を貸さず無視していたらしく、連行しても自分の手柄にしてこちらには報奨金の類いは貰えないと。


奪われた金品や、殺された村人を考えるとここで全員殺してしまう方がいいと口を揃えて言ってきた



「子供は、女が連れて帰れ。こいつらはお前らが好きにしろ。俺はお前たちを解放しにきただけで、殺しにきたわけじゃない。」


どのみち役人に引き渡しても縛り首とか処刑コースだろう。


もう早く帰って天久手さんを守らないと。


「今までよくも、好き勝手やってくれたなぁ?!」


男たちがつるはしやスコップで盗賊たちを攻撃する光景を見ずにシンドウは村へ戻った。




「おかえりなさい、シンドウさん。」

天久手はシンドウを見つけると、手をブンブン振って駆け寄ってきた。


村人が天久手に向かって拝んでいる



屋根や壁が綺麗に修復されている




「あんた、直したのか。人前で。」

「ええ、材料はあったので、子供たちに手伝ってもらって直しましたよ?」



木材や漆喰を使える大人がいなかったのだが、

天久手はシンドウが救助兼討伐に出かけている間に村全ての家を直してしまったのだ。


半日で終わる仕事ではない。



「力使わなくても直せるなら、それに越したことはないですよ。ぐふふ」


やっぱ先輩が目をかけるだけある。


シンドウは、気配に気づき、後ろを向いた


馬車がくる。


男たちも歩いてくる




先に帰っていた女たちが亭主を迎えに集まり、子供たちも手を振って迎えた



馬車に乗っている男以外は皆走り出し、子供たちを抱き上げたり、家族で抱き合って泣いたりした。



「盗賊、捕まえたんですね」

天久手は、全員死体だろうなと思って覗き込んだ

だが、彼らはボコボコにされながらも生きていた



「人を殺す業は、我らが負うべきではなくしかるべき所に任せればいいと言われてな」

馬車に乗ってきた男が天久手に話しかけてきた


シンドウさんは、優しいな。

天久手は盗賊団の目が死んでいないことに気づき、

頭領らしき男に耳打ちをした。


みるみる間に、頭領から光が消え、聞こえていた周りの盗賊たちも震え上がる。


馬車の男はすでに家族の元におり聞いていなかった




「今から役人に引き渡しに行くんだが、やっぱりあの人長老だったな。髭が立派だもんな」

シンドウが天久手を呼びにきた。



恐ろしいものを見る目で盗賊団たちが天久手を見上げている。

天久手はいつも通りのフニャフニャした笑顔でシンドウを見ている。



きっとこれからの処刑を考えて青くなっているんだろう。


シンドウは気にせず、天久手を連れて長老の元へと戻った。















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