大評定
義教は、各地の様子を楠木党に探らせ、いよいよ畿内から地方を治めるべく評定を始めることとし、花の御所に主だった者を集めた。
義教のそばには梶井義承、経覚、そして楠木党当主、楠木正秀と補佐役 津田正信が控えていた。
「皆、大儀である。ここにいる、楠木党の政秀が探ったところでは、九州、関東、奥羽は手強く、すぐに手を出すは危ういとの見立てである。ならば、それ以外の地は、すぐに手を入れやすいとも言えるがどうだ。」
「御所様、宜しいでしょうか?」
「なんだ経覚?」
「寺社、公家の領地に関してはかなり整理が進みましてございます。寺社の領地はこの我らが抑えし場所にある寺社に寄進してるものが多いため、寺社が土地を放棄すれば、切り取り次第となります。公家の方は、日々の生活が維持できれば良いという感じでしてな。こちらは、御所様の政が動き出していますので、切り取りは差し支えないと。」
「左様か。短い間に、よう調べた。
皆、聞いた通り、寺社は兵を解き、本来の姿に立ち戻れば、良しとする。公家の荘官はこの都に一旦お帰り頂く。
義承、皆にこれからの戦略を述べよ。」
「はい、されば、皆様には御所様からお預かりした地にお戻り頂きます。既にお留守の兵でお守り頂いていますが、御所様直臣の皆様から御所様のお考えを伝え、国人、地侍を説得し、当方の味方として頂きたいと思います。」
朝倉教景が直臣を代表して尋ねた。
「それでも味方にならないものは、打ってよろしいか?」
義承は続ける。
「出来れば、この動きは水面下で進めて頂きたい。国人衆、地侍をある程度味方につけたら、一気にその土地を手に入れる為です。」
織田久長が呟いた。
「孫子の兵法の基本だな…」
「皆、畿内平定は、この日の本を統べる前の戦さであった。今後ともよろしく頼む。」
義教が頭を垂れると皆が一斉に平伏した。
基本戦略は決まったが、それから細部に渡る評定が続き、終わったのは夜中であった。




