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第1話 時の始まり

あなたは異世界、平行世界、そういうSFを信じますか?

初めて行く場所なのにどこか見覚えがある。経験したことないのにデジャブを感じる。そういうことあったことはありませんか?

あなたの選択肢は無限にあり、その分世界が広がっている。そういう可能性の世界を経験した男の話。

2026年4月1日

目が覚めると知らない天井だった。

(なにこのよくある展開、てか俺昨日ふつーに仕事行って寝たよな)

そして、横を見ると見知らぬ美女が座っていた。

「進!?やっと目覚ました!」

そう言いながらその美女は俺に泣きながら抱きついてきた。

(な、なにが起きてんの!?夢?夢なの?てかまじ誰!?)

「あ、ごめん。今お医者さん呼ぶからね」

「はあ。。あの、あなたは誰なんですか?」

「え、、」

その美女は戸惑い、涙は止まった。

「え、えっと、ごめんなさい!その、どこかでお会いしてたらほんと申し訳ないんですけど」


「記憶喪失!?」

少ししてから家族も来て医者から話を聞いた。

どうやら医者が言うには記憶喪失らしい。

(いや、記憶喪失じゃない、ちゃんと覚えてる。俺は今井進いまいすすむ、23歳。高校まで地元静岡で過ごして、大学からは東京、就職も東京を選び、昨日は何事もなく家に着いて晩酌して寝た。俺にはこんな爆美女の知り合いもいないし、そんな友達もいない。それに)

「進の体は大丈夫なんですか?」

もう1人美女がいて、心配そうにそう聞いた。

「体、頭にも異常はないです」

ここには医者とさっきの美女、そして俺を含む家族しかいない。となると

「え、じゃあほんとに、、進!姉ちゃんわかる?」

俺には姉はいない。

俺には5歳離れた兄しかいない。

だが、どこかで母に聞いたことがある。兄が産まれた3年後、おそらく女の子がお腹の中にいたと、そして流産してしまったということも。

「あ、ええっと」

「わからないの?」

「うん」

「じゃあ、ママとパパ、あにいちゃんは?」

(兄ちゃんの呼び方一緒だ)

「わかる」

「なんで私だけ、、」

「大丈夫大丈夫、すぐ思い出すって」

そう言って両親と兄は姉?の背中をさすった。

俺は小さい頃に"お兄ちゃん"と言えなくて、"あにいちゃん"と言っていたのが今でもそう呼んでいる。自称姉がそう呼んでいるのが不思議でしかたなかった。

そして、先程の美女は何者なのかというと

「そんな、、果胡かこさんまで、、」

「私はいいの。彼女の未来みくちゃんまで忘れるなんて」

「いやいや!家族の果胡さんの方がよっぽど辛いですよ。。。」

目を覚ました時にいた美女は俺の彼女だった。

もちろん俺には彼女はいない。まず、彼女なんていたこともない。

(本当になにがどうなってんだ)

お通夜状態の中、両親だけが診察室に残り、兄、姉、彼女と俺が病室に戻った。

「俺飲みもん買ってくるわ」

そう言って兄は出ていった。

(こんな空気にされてもまじで知らんだけど。にしてもあにいちゃん逃げやがったな)

「進、本当にわからない?」

そう言ったのは彼女の方だった。

「ごめん」

「そう」

(いやまて、たしか未来っていったよな。未来、未来、未来)

頭の中で俺が知っている未来という女の子を検索しまくった。

「もしかして、後藤未来ごとうみく?」

「そう!!後藤未来!思い出した!?」

「あ、いや名前だけというか」

「そっか」

後藤未来、彼女は俺の初恋の人だ。今のいままで顔も名前も忘れていた。中学時代ずっと好きだった人だ。数回話した程度で連絡先も聞けず、何もできず、初恋は終わってしまった。

(10年前とかだよな。当時からめっちゃ可愛かったけど、増し増しで可愛くなってんな。未来の事は思い出したっていうか、存在してた人だからわかるけど、この人、自称姉はまじで知らんぞ。だっていないんだもん)

「すすむ〜、姉ちゃんは!姉ちゃんはわからない?」

そう言って抱きついてきた。

(うわ、めっちゃいい匂いする。じゃなくて)

「ごめん。お、思い出せない」

「なんでよー、なんで私だけなのー。こんなに大好きなのにー」

(世の中の姉がいる弟はこんな思いしてたのか、羨ましいぜ。でも産まれてからずっとはうざいか)

「俺はお姉ちゃんのことを、その、なんて呼んでたんですか?」

「敬語やめてよー。姉ちゃん姉ちゃんって呼んでたよー」

「じゃあ姉ちゃんで」

「うわーん、久しぶりに聞いた気がするー」

一応姉ちゃんってことにしとくと、両親と兄が病室に入ってきた。

「今日はもう帰ろう。未来ちゃんも送ってくよ」

「いえ、わたしは」

「いいのいいの。それに進だって少し整理したいかもだし、ね?」

(さすが母ちゃんだな。わかってる)

「じゃ、じゃあお願いします」

「ほら、お姉ちゃんも行くよ」

「えー」

「ほら早く来る!」

「はい!」

「じゃあ進、明日もくるからね」

「ういー」

「それにしてもお姉ちゃんいつもよりべったりだったよね」

「いつもこんなんだってー」

母と姉はそんな小話をしながら家族と彼女は病室から出ていった。


その後はあらゆる情報を手に入れるために自分の財布を漁ったりスマホを見たりして、夕飯を食べて考えをまとめていた。

状況を整理すると、昨日家で酒飲んでいつも通り寝て、起きたらこれ。

で、俺には姉ちゃんがいて、彼女がいて、友達も多い。スマホのLOIN?よくわかんないけど俺が知ってるトークアプリじゃないけど、友達らしき人が何人もいて通知が100件ぐらい溜まっていた。他のSNSらしきアプリを見る限りではずっとバスケをやっているらしい。全然俺とは違う。しかも通帳アプリで見てみると年収600万ぐらいはいってる。社会人2年目になろうとするやつが年収600万。ありえない。でも免許証見るとたしかに俺だ。本籍地も生年月日も俺。

なにより一番驚いたのが、紙幣と硬貨のデザインが違う。しかも元号も違う。昭和は65年まで平成は30年まで、そしてその後、京平とかいう元号になってる。

これはほんとになんなんだ。。。いや、まてよ、なんかこんなのどこかで、、

平行世界。パラレルワールドってやつー!?


パラレルワールドとは、ある世界から分岐し、平行して存在する世界のこと。量子力学の多世界解釈など、物理学の理論上でもその存在の可能性が議論されている。

可能性というか今現在体験してんですけどー!


翌日、昨日と同じ人たちが面会に来た。姉ちゃんと彼女には悪いが、記憶が曖昧なフリをして色々聞き出した。

その結果、この世界の俺と違うところはこうだ。

彼女に関しては、後藤未来ごとうみく。高校からの付き合いらしく、当時はバスケ部のマネージャーをしていてそこから仲良くなったらしい。予想通り同じ中学で初めて会っている。高校からの付き合いということは、俺が行っていた高校とは違う高校へ行っている。

ちなみに野球は小学生の頃にやめており、中学から大学までバスケを続け、中高ではキャプテン、大学ではサークル長を務めたらしい。そりゃ友達いっぱいいるわ。

そしてなにより彼女と同棲しているらしい。昨日は彼女とのデート中に階段から落ちて頭を打って意識を失って病院に運ばれたらしい。

かくいうこっちの俺、正真正銘の今井進はというと、

まず、彼女はいない。というかいたことない。友達も少なく、現在はどこにでもある中小企業勤めで一人暮らし。野球は長く続けて小学校から大学まで続け、一応ずっとレギュラーで試合出てはいた。そして、アニメオタク歴10年の生粋のオタク。

なんだこれ、本当に同じ人間か?いやまあ少し違うんだけどさ、向こうは中学からはバスケ一筋のたぶん初恋を実らせ、もうすぐ付き合って10年。そして同棲中。あーあ上手くいきすぎて羨ましいですねー。

姉ちゃんに関しては、今井果胡いまいかこ。俺の2歳上で公務員として地元で働いて、今のところ彼氏はいないという。ま、姉ちゃんの彼氏いるいないはどうでもいいけど、高校大学は遥かに偏差値の高いところへ行ったらしい。

と、まあ俺の2歳上、つまり兄ちゃんの3歳下ということは、流産しなかった世界線っていうのが可能性が高い。

それにしても姉ちゃん、俺への愛情が強い。強すぎる。昨日みたいのを今日もしてきたし、姉ちゃんのためにも早く戻らなければ。

でもこっちの俺羨ましすぎんな、この世界にずっといてえな。。。

なんて、こんな上手くいきすぎの人生は俺には割に合わねえわ。それに野球とアニメがねえ人生は俺の人生じゃねえし、おもんねえ。たぶん向こうの俺からしたら彼女がいない人生の方がおもんないって思ってるかもしんねえけど。

にしても、まじどうやったら元の世界に戻れるんだよー!




その日の夜、夢の中で誰かに呼ばれた気がした。

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