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黒鱗の狩人~龍人少女の狩猟日記~  作者: アルニクツエル
凍てつく北風の元へ

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35/41

35話:村の意思

 山頂は抉られ、ドーム状の洞窟になっていた。

 理由は簡単だ、そこで眠りにつく巨大な真龍が過ごしやすいようにしたのだろう。

 何せ、その巨体は目算でも50mはある超大型の真龍だ。白い、純白と言う言葉がそのまま形になったかのような白い真龍。


 片翼だけでも10mはある巨大な翼、染み1つない純白の爪、先端は透明となっている長くしなやかそうな尻尾、何よりもそのティアラのような角は特徴的だ。


 以前……ハンターに憧れて実家の蔵書室で様々なモンスターの書物を読んだことがある。その中には勿論真龍種について記された書物もあった。

 伝説にもなる真龍種について書かれた書物なのだ、本に穴が開くほど何度も読み返した物だ。勿論目の前に居る真龍についても記されていた。


 その名は……。


「スカーディレ……別名氷天龍」


 全てを凍てつかせる力を持ち、あらゆる存在に汚される事無き純白の真龍にして、高い山に住まう女帝。

 暴走状態……そんな印象を受けるが、詳細な事は分からない。そもそも真龍は絶対数が少ないし、生態も謎が多い存在だ。


「一先ず……情報は得られた。村に帰還しよう」


 そう思い、ドームから出ようと足を端にかけた時だった。脆くなっていたのか踏んだ衝撃で崩れ、危うく不安定な体勢で落ちる所だった。流石に不安定な体勢で落ちたら白蓮に掴まれるか分からなかったからな。


 次の瞬間、凄まじい圧力を感じ背を冷や汗が流れる。この極寒の環境でも強烈なプレッシャーを受ければ冷汗は流れるらしい。


 脇目も振らずすぐさまジャンプして白蓮に掴まってその場を離れる。一瞬前まで俺が居た場所を人1人いや、中型のモンスター1匹くらい難なく屠れそうなほど巨大な氷塊が着弾した。


「白蓮!最大最速でこの場から離脱!急いで!」


『言われずともやっている!』


 次々と先ほどの2mはあろうかと言う氷塊や、直径1m程の氷の刃が俺達に襲い掛かる。

 まるで氷柱が全て一気に降って来たかのようだ。天を覆いつくすほどの氷の槍や巨塊が見える。

 尻尾と左手で星天の彗星(ラピスリメット)を構えてこちらに振ってくる攻撃を何とか防ぐ。一撃一撃がまるで中型モンスターの突進を受けている気分だ。


 衝撃で起爆できるように改良した煙玉を3個ほど投げて目くらましをする。


「今のうちに距離を稼いで」


『承知した』


 どうやらスカーディレは追ってくる気が無い様で、あれ(煙玉)からブレス等も撃ってこなくなった。

 自分の領域から出ないモンスターは多い。スカーディレもそう言った種なのかもしれないな……。


「何か違う気がする……」


 直感だが……そのような気がする。

 まぁ、現状脅威になっているのは変わりない。彼の女帝にどの様な考えがあろうと滅ぼすほかないのだ。


 山を下り、地上に降り立つ、安心感から薄暗くなっている空に真っ白な吐息を吐き出す。


「確認は済んだ。報告するまでがクエストよ」


 八重の居る仮拠点に向けて歩き出す。

 低温で凍り付いているジャーキーを白蓮にやり、自分も1つ齧る。炙ったりすればもっとおいしいのだが、この地に数分置いておけば大抵の物はそれで釘が打てる程度にはカチカチになる。

 凍り付いていても唐辛子の効いたジャーキーはしっかり口内を刺激し、温かさを感じられる。

 薬で体温を維持するのは実は体力を消費している。寒い時に体を震わせるシバリングを薬で体力を消費してやってるような物だからな。

 短時間なら問題ないが長時間食事などもせず使っていると渇死したりする。戦闘中なら回復薬等を飲んで栄養補給になるが平時だとこまめに何か食べておく方が良い。


 帰る道すがら対策を考える。現状の装備でどこまでやれるかを頭の中で組み立てる。

 あのドームで戦うとして正面戦闘になる。あの弾幕を躱し、見るからにタフそうなあの巨体にダメージを与えることが出来るのか……。

 そもそも真龍討伐なんてことは記録でもそう多くない。単騎または少数で狩猟に成功した者は数名いるが、どれも英雄と呼ばれるに値する存在だ。


 切り札が必要だ。星天の彗星(ラピスリメット)の装備スキルも村への帰還までに試験運用した限りでは十分通用すると思う。だが、それ以上の何かが必要だろう。




 北部の森林地帯にあるセーフハウスで一晩夜を明かし、明朝村へ……いや、洞窟へと帰って来た。

 洞窟の雰囲気は依然よりも少し悪い。この村は先の見えない暗闇を歩いているような状況だ。村の畑を帰ってくる途中に見たが、野菜を畑から取ってきて使っているようだ、穴倉では植物を育てられない以上それも限界が近いのだろう。食事は生活において重要だ、食べ物が少なくなって来れば気分が落ち込むのも分かる。外には碌に出られず。俺の作った指輪は多くないので食糧調達もそう簡単ではないはずだ。


 洞窟の村の中を進んでいく、今までの様な活気が無く、暗いこの雰囲気の中を進む足取りは重い。

 村のみんなの視線が刺さる中村長の家兼集会場へと向かう。一階の様子は外から見えるのだが、見知らぬ人物が一人見える。近づいていくにつれはっきりと見えていく。着ている衣服はどうやら制服のように見える。最近もよく見た制服だ。


「ただいま帰ったわ」


「おかえりなさい、アルテイシアさん」


「おかえりだハンター殿」


「それで、こちらの方は?」


「私はロサリアと申します。王都のドラウドラギルドより参りました」


 王都の……つまり本格的なギルドの調査員という事か。ギルドの制服は所属しているギルド本部によって色が違い、ドラウドラギルドは赤い制服でブレザーのような形だ。

 彼女の種族も特筆すべきか、獣人族の女性……多分熊かな?熊の獣人族の気の強そうな女性だ。


「アルテイシアさん……報告を聞かせていただけますか?」


「分かったわ」


 調査員が来たことは予想外だったが、やることは変わらない。調査に行ったのだから報告はしなければな。


 俺は見て来た物をそのまま、ありのまま話した。

 時の凍り付いた山間部の様相、天氷山に住まう真龍とその種類も。


「スカーディレ?本当ですか?」


 ロサリアがかなり驚いた顔でそう聞いてきた、王都との距離を考えれば気象異常程度と聞いて来たのかもしれないな。


「えぇ、間違いないわ」


「文献は私も読んでいますが……正直信じられませんね」


「そうですか……”貴女”がそう言うのでしたら間違いないのでしょう」


「…………」


「そうと決まれば、避難すべきでしょう。此処(洞窟)だって何時まで持つか分かりません」


 そうロサリアが言うが、セシリアも、村長も、そしてこの話を聞いていた村民たちは黙りこくってしまった。


「そうすぐには決められないでしょう……あと三日待ちます。アルテイシアさんが作ったらしい指輪や、私が運んで来た食料を考えてもそれでギリギリでしょうから」


「そう……じゃな。ロサリア殿……住居を用意しておいた、ゆっくりしておられると良い」


「では、遠慮なく」


 村人に案内され、ロサリアは消えて行った。

 ロサリアが消えた後、俺達はそのまま残っていた。案内していった者以外は去らずに村の者はほぼ全員が此処に居た。


「ハンター殿……率直に、正直にお聞きしたい」


「なんでしょうか……」


「勝てますか?」


 何に……とは聞かなかった。聞かなくても分かる。


「……難しいですね」


 勝てると……そう言い切りたかった。

 たとえ真龍が相手であろうと今までのように「任せて」と言いたかった。


 それを言い切る力は俺には無かった。


「そう……ですか」


「ごめんなさい」


「いいんです。元々アルテイシアさんは最終的な実地研修でこの村へやって来たんです。気にせんで下さい」


 そう言って村長は優しく言ってくれた。他の村のみんなも同じような顔だ。


「この村はのどかで、魚も良く取れて自然も豊かです。毎年麦が西側一杯にあって、村のみんなで収穫するんです。たまに来る行商の者や旅行者と取引をして、セシリアが王都のギルドでギルド職員の試験に受かった時なんて村中でお祭り騒ぎをしたものです。村にハンターが派遣されると聞いて、ついにうちの村にもハンターがやってくるんだと急いで準備したんですよ」


 その声の最後は震えていた。周りの人の中には泣いている者も居る。他の村民もこの村で過去にあった思い出話を思い思いに話し始めた。

 あのザリガニもどきを一人だ倒したとか、わざわざこの村の食堂のソースの為に来た旅人の話、他には王都からわざわざこんな辺境へ隠居しに来た鍛冶屋(おやっさん)の話。

 皆……この村が好きなのだ。


 一通りみんなが話し終えた後、真剣な表情で村長が代表して話し始めた。


「昨日……あの調査員殿が来る前に我々で話し合って決めました」


 村長は息を軽く吸い、少しのタメの後こう言った。


「私達はここに残ります」


「……そうですか」


「ハンターアルテイシア殿……貴方は去ると良い。あんたはこの村で共に過ごした仲間だが……まだ我々は貴方の事をよそ者だと思っている。いや……正直に言おう。我々の我儘に付き合いう必要はないんだ」


「私はギルドに入って日の浅く経験も、何もない新人ですが……アルテイシアさんは腕のいいハンターだと思います。この村と……私達と心中する必要は無いんです」


「セシリア……」


「それ、ハンター殿。ずっと遠征やらなんやらでお疲れだろう?今日はゆっくり休んで、明日にでも去られると良い。あの調査員殿にも後で村の意思を伝えるつもりだ」


 その後俺は村のみんなで胴上げでもするように運ばれ、半ば無理矢理新しい家へと押し込まれた。反論は認めない気なのだろう。

まぁ、ギルガメッシュの王の財宝みたいな攻撃受ければ勝てるとは言えんのよ

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