15の夜 2
15の夜 2
「俺は納得出来ん」
「私も」
あちこちでささやきではなく、聞こえるような声でみんな訴え始めていた。担任は、まだ話を聞いてくれる方だったが、
「いいか?今までのことを考えてみるといい。決して過ごしやすい学校だとは思わなかった。授業は途中で中断した。それでは学校は機能しない」
「それは先輩の話でしょ?俺たちには関係ない」
ついに声を荒げる仲間がいた。それも、担任だから甘えられる。
「確かにそうだ。ただ、去年はそれがよかったから今年は何でダメだって思っているだろ?」
その通りだと、ほぼ全員がうなずいた。こんな言葉は、返って、教師サイドの都合を悪くしないかと思ったが、
「その気持ちはよく分かる。そこで君たちに考えてほしい。では、どこでその線引きをする?」
線引き
投げかけられた言葉に、反応したのは、やや暴力的な仲間。そんな小難しいのはいらないと吠えた。
「そうなるだろ?考えなくなってしまうだろ?君たちにはそうなってほしくないんだ」
言っていることは・・・なんとなく分かる。だけど、この中でそれが、何人分かったというのだろうか。ほぼ全員、下を向いていた。
ボクは声をかけられた。
「お前さ、担任の言っていた言葉、分かったか?」
「なんとなく、、だけどな?」
「ほんとか?分かろうとしてるだけなんじゃないか?」
「どういうこと?」
「成績とかさ、もともと担任のこと、頼ってたじゃん」
「そんなんじゃないし、別にさ、敵とかじゃないよね、先生って」
そう話してると「敵じゃん」
そう言って近づいてくる仲間たち。「今や、もう敵。担任も、今の話聞いてたら、何?新採に丸め込まれたの?」
そう言うのではないのだろうけれど・・そうか・・そういう眼になってしまったのだろう・・。
みんな、ほとんど、親と一緒に暮らしてるから、この年ころは、親って、うっとうしいいや、大人自体がそう感じる年だって言うからな。
「そういえばさ、お前引っ越したんだよな、しかも、親と違うんだろ、部屋って言うかさ、まあ、難しいな」
「ああ、別にいいよ、ストレートに言っても」
そう、ボクの家はこの頃、地上げ屋というのがあって借金にとられ、追い出された。そしてアパート住まいになった。今では考えられないかもしれない。田舎でも風呂もないアパート。築40年。すきま風が入るほどのアパート。そこを2間借りた。親とは別になった。
「ぼろアパートだよまあ、住めば都だけどね」
「でさ、親、いないんだよね」
いない。2間借りたと言っても、1間でもよかったくらいだ。父親は昼働いて、夜遊びに出かけてる。母親は、昼は父親の仕事の電話をつないで、夜、ボクが帰ってくる前に働きに出かける。
「ああ、いない」
「でも、あんたの家ってさ、お兄さん、いなかった?」
その兄も借金取りのせいでぐれてしまってね・・家に帰ってくる頻度少なくなってしまったのさ・・・。
「ああ、まあ、いないことの方が多いかな」
「ふーーん」
「じゃあさ、おまえんち、集まってさ」
はあ?
こっちが拒否するまもなく、話が進んで、
「じゃあ、今日の7時集合な」
「えっと、その時間はいないけどね」
「ああ、塾だったっけ」
「そう、塾」
「鍵は?」
「は?」
「いや。鍵なんか、かけないよ」
当時は、鍵をかけない家は多かった。校内暴力がある時代・・・。治安がいいんだか、悪いんだか・・・。
「じゃあ、部屋で待ってるわ」
勝手に決められてしまった、15の夜。この日に起きたことは、結構思い出になった。