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1.2-40 町での出来事31

 ワルツたちが狩人に対し治療を行ってから、およそ半日ほど経って。


「う、うぅ…………こ、ここは?」


 今まで気を失っていた狩人が、ようやく目を覚ました。

 そのことに真っ先に気づいたのは、床に伏せる狩人の枕元で彼女の容態を伺っていたワルツだった。


「狩人さん、具合はどうですか?痛いところがあったり、気持ち悪かったり、しませんか?」


「あ、あぁ、大丈夫だ……。少し頭がクラクラするが……多分、長く寝てたせいだろう。寝坊したときの感じに、良く似てるからな……。ところで……ここは実家か?」


「はい、領主さんの館です。あ、まだ寝ていたほうがいいと思いますよ?」


 と、今にも立ち上がろうとしていた狩人の肩をそっと押さえて、寝かせようとするワルツ。

 それに対し、狩人は、大人しく従うことにしたらしく……。彼女は再びベッドへと横になった。


「私は……どうしたんだ?全然覚えてないんだが……どうしてここで寝てるんだ?」


「狩人さんは……マギマウスという魔物を討伐している最中に、領主さんのことを庇って……」


「……死んだのか?!」


「いや、生きてます。生きてるから、こうして話が出来ているんじゃないですか……」


「そりゃそうか……。前に聞いた話によると、人というのは、死んだ後、案外、自分が死んだことに気づかない、って話だから、てっきり私も死んだかと思ったよ。でも……私の正体が、ついにワルツにバレた————いや待て。そう言えば、父様は無事か?!」


「えぇ。もちろん、無事です。狩人さんのおかげで」


「そうか……。それはよかった……本当に……」


 そう言って、大きな安堵のため息を吐く狩人。それから彼女は、そこにあったワルツの手を取って、こう口にする。


「ワルツがここにいるってことは……ワルツが私の命を救ってくれたんだな?ありがとう」


「えっ?い、いえ、そんなことは無いですよ?……ねぇ?カタリナ?」


「はい。ワルツさんは、まるで魔法のように、狩人様の命を救っておられました」


「いや、回復魔法を使ったの、貴女たちの方じゃない……」


 そう言って、自身とはベッドを挟んで反対側にいたカタリナに向かってジト目を向けるワルツ。

 ちなみにルシアもそこにいたのだが、彼女はワルツの隣にあった椅子に座りながら、ぐっすりと眠っている。流石に6時間連続でワルツたちに付き合うのは、まだ幼い彼女にとって少々難しいことだったようだ。


 それからワルツは、赤い顔をごまかすかのように、狩人へと質問した。


「そう言えば狩人さんが寝ている時、泣きそうな顔をしたり、怒った顔になったり、嬉しそうな顔になったり……色々変わってたんですけど、どんな夢を見てたんですか?」


「そうだったか?んー……なにか夢を見てたのは確かなんだが、思い出せないな。多分、何か変な夢でも見てたんだろう」


「狩人さんが嬉しそうな顔をしてたってことは……ドラゴンか何かを狩った夢でも見てたのかもしれませんね」


「あー、それだ。間違いない。何か気にくわないモノを殴打した記憶が残ってるからな」


 と言いながらも、夢の中で副長の顔を殴ったことだけは覚えていた様子の狩人。とはいえ、覚えていたのは、本当にそれだけだったようだが。


 するとそんな折。


「あの……一つ、いいですか?」


 ワルツとはベッドを挟んで反対側に座っていたカタリナが、不意に2人の会話へと割り込んでくる。そして彼女は何を思ったのか——


「……すみませんでした!」


——突然頭を下げて、謝罪を始めた。

 そんな彼女の姿に見覚えがなかったのか、狩人は怪訝そうな表情で誰何する。


「えっと……どちら様だったかな?というか、見ず知らずの者に謝られるような覚えは、まったく無いんだが……」


「彼女……カタリナって言うんですけど、この前、襲ってきた勇sy……冒険者たちの一人で、あの時、彼女のパーティーの仲間が狩人さんに襲いかかったことを、申し訳なく思っているみたいです」


「そうか……。それならなおさら、あなた――いや、カタリナが謝ることではないと思うぞ?カタリナ自身が斬りかかってきたわけではないしな。それに私としては、強いやつと手合わせができたんだから、怒っているとか、そういったことは一切無い。でも……ちょっと残念なのは、あれが普通の冒険者ってことかな……。一応、腕には自信があるつもりだったから、まさかあんな風に簡単にやられるとは思ってなかったよ。アレが勇者だって言うなら、納得できるんだが……」


「「…………」」


「……ん?どうした?2人とも。そんな真っ青な顔をして黙り込んで……」


 そう言って、なんとも表現しがたい表情を浮かべていたワルツたちの反応を前に、首を傾げる狩人。

 そんな彼女に隠し通せないと思ったのか、あるいは隠すことでも無いと思ったのか……。カタリナが真相を話し始めた。


「あの人……狩人様に斬りかかった方は、本物の勇者様です」


「ふーん、そうか…………えっ?」


「私もよく分からないのですが、あの時、勇者様は、ワルツさんや狩人様に、何か恐怖のようなモノを感じたいみたいで、身体が止まらなくなった、と言っていました。申し訳ございません……本当に……」


「いや……それなら良い。なんというか……心の中にあった憂いのようなモノが、キレイに吹き飛んでいったよ。そうか……私は勇者に斬られて……生きてたんだな……!」にっこり


「「(すっごい嬉しそう……)」」


 狩人が浮かべる笑みに、陰りの”か”の字も見られなかったためか、ただただ苦笑するしかなかった様子のワルツとカタリナ。


 それからカタリナは、狩人に対し、今は勇者パーティーではなくワルツパーティー(?)の一員であることを伝えたようである。

 その結果、狩人が、直前まで笑みを浮かべていたというのに、急になぜか驚いたような表情を浮かべて、目をまん丸にしたまま小刻みに震えていたようだが……。ワルツもカタリナも、その理由については、まったく分からなかったようだ。



『〜のようだ』、『〜のようである』、『〜らしい』。

これらの表現を多用しておるのには、れっきとした理由があるのじゃが……まぁ、妾の書き方じゃと捉えてもらえると幸いなのじゃ。

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