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1.2-33 町での出来事24

「……すっごく気になるわね……」


「うん?」もぐもぐ


「ルシアは気にならない?狩人さんが、騎士みたいな格好して、他の騎士たちと一緒に、どっかに出かけてったのよ?もう……どんだけ魔物狩りが好きなのよ……」


「「…………」」


「ん?何?2人とも黙り込んで……」


「えっと、うん……。私も、もちろん気になるよ?(魔物が狩りたいから騎士さんみたいな格好をしてるわけじゃ無いと思うけど……)」


「そうですね……私も気になります(魔物を狩りに行くとは限らないと思うんですけど……。それとも、そういった特殊な趣味をお持ちの方なんでしょうか?)」


 と、ワルツの言葉を聞いて、色々と言いたいことがあった様子のルシアとカタリナ。ただ、それを口にすることが無かったのは、彼女たち自身、ワルツの言葉を否定できなかったためか。


「様子を見に行きたいわよね……。ちょっと、覗きみたいなことになるかもしれないけどさ……。でも今は……時間が無いと思うのよね……」ちらっ


「……私のことを気にされているんですか?」


「色々準備があったり、身体が限界だったり、まぁ、色々あったりするじゃない?」


「私はこの町に残って、準備を進めておきますので、ワルツ様方は狩人様の様子を見てきてください。……って言っても、必要なものはあらかた持ち歩いているので、買い物に行く必要はありませんけどね……。後で何があったのか、教えてくだされば、私はそれで十分です」


「そう?……じゃぁ、行ってこようかしら?」


 ワルツは、そう言って、カタリナをその場に残し、稲荷寿司を食べ続けていたルシア共に町の外へと出ようとするのだが……。



「あの……ワルツ様?」


「ん?様なんて付けなくても、単に”ワルツ”で良いわよ?」


「……なら、ワルツ”さん”?」


「まぁ、”さん”なら……いっか……」


「それで、ワルツさん。どうして……私もここにいるんでしょうか?」


 町に置いてくるはずだったカタリナが、どういうわけかワルツたちと共に町の外にいたようである。まぁ、ワルツが彼女の手を引っ張って連れてきただけなのだが。


「んー、せっかく仲間になったんだし、私たちが普段どんなことをしてるのか、早速知ってもらおうかと思って」


「…………」ぶわっ


「えっと……もしかしてだけど……狐族の人たちって、みんな涙もろいの?」


「うん?」もぐもぐ


「そ、そんなことは無いと思いますよ?なんというか……仲間だ、って言ってもらえるの、初めてだったので……」


「そ、そう……(勇者パーティーで、どんな扱いを受けてたのよ……)」


 先ほどはカタリナに対し、”超雑用係”という言葉を口にしたばかりのワルツ。しかしどうやら、カタリナは、勇者パーティーの中で、ワルツの想像よりも遙かに酷い、雑用以下の扱いを受けていたようだ。


「まぁ……頼りにしてるわよ?カタリナ」


「は、はいっ!」ぶわっ


「…………(私もこんな風に見えてるのかなぁ……)」もぐもぐ


 ……というルシアの反応はとりあえず置いておいて。

 そんなやり取りを交わしていたワルツたちがいたのは、サウスフォートレスを出てすぐの場所。町の検問に並ぶ旅人たちの、そのすぐ後ろ辺りである。

 検問所があった正門は、防衛の観点からか、見通しのいい場所に作られていた。ところが、そこから見る限り、騎士たちの姿はすでに無く……。彼らは、ずいぶんな早さで、どこかへと移動してしまっていたようだ。


「……ねぇ、カタリナ?なんか、騎士たちが揃いも揃ってって全員いなくなってるんだけど……体力強化の魔法的なものってあるの?あんな重そうな甲冑を纏って走るとか、人間業じゃ無いと思うんだけど……」


「えぇ、もちろんありますよ?一時的に筋力を強化させる魔法のことですね」


「ふーん。やっぱりあるんだ」


「あるにはあるんですけど……長時間は使えません。疲労や痛みを軽減させる反面、知らず知らずのうちに筋肉に疲れが溜まっていきますので、ずっと使っているとそのうち……」


「筋肉が、ブツンッ、ってなるわけね?」


「はい。ですから1日の使用回数が定められています」


「なんか、消炎鎮痛剤みたいな魔法ね……」


「えっ?」


「ううん。なんでもない」


 と、現代世界において、多忙な人々に欠かせない存在となっている薬剤のことを思い出すワルツ。


 対して、カタリナの方にも、何か思うところがあったのか……。彼女は眉を顰めてこう口にした。


「ワルツさんは、筋力強化の魔法を使って騎士の方々が高速に移動したのではないか、と考えておられるようですけど、転移魔法を使って移動した可能性もあるのではないでしょうか?」


「問題、それよね……。転移魔法だったら、追いかけようが無いし……。でも、ちょっと待ってね?」


 ワルツはそう口にすると、自分の中にあったシステムの内、とある便利なシステムを起動した。人や動物など、動く生体を検出できる”生体反応センサー”である。それを使い、見えない場所にいる騎士たちを探そう、という訳らしい。

 その際、急に黙り込む形になったワルツのことを、カタリナやルシアは、怪訝そうな表情で眺めていたようである。なんということはないやり取りをしていて、急に黙るようなことがあれば、心配になってしまっても仕方ないと言えるだろう。

 それからいよいよカタリナが、ワルツに対し、何事が起こったかを質問しようとした——そんな時だった。


「……見つけたわ。ここから南西に600m……大体、丘を2、3個超えたところを、かなりの速度で走ってるみたいね」


 生体反応センサーを使って動体の探索を行っていたワルツが、町からまっすぐに離れていく騎士たちと思しき一団の姿を捉えたようだ。


「「えっ……」」


「ん?どうやって探したかって?……聞かないでね?(センサーの原理を説明するの、すっごく面倒くさいから……)」


「う、うん……(やっぱりお姉ちゃん、理不尽……)」


「は、はい……(やはりワルツさんは……神なのでは?)」


「はいはい、2人とも。そんな辛気臭い顔してないで、早く追いかけるわよ?」


 自身に向けられた2人の視線が何を物語っているのか、なんとく察しながら、いまなお自分たちから離れつつあった一団が向かう方向へと、足を進め始めるワルツ。

 そんな彼女のことを、2人の狐娘たちが追いかけて……。一行は騎士たちと共に消えた狩人の追尾を始めたのであった。



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