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1.2-29 町での出来事20

いつもよりもちょっとだけ文量が少ないのじゃが、事情についてはお察しいただけると幸いなのじゃ……。

 どこかのRPGの登場人物が着ていそうな青一色の服装、頭の上にのせた円筒形の帽子、そして腰から生える赤みがかった金色の尻尾……。そんな彼女の見た目は、まさに、女僧侶だった。それも、先日、ワルツたちのことを襲ってきた勇者パーティーの、である。


 彼女は、ワルツに呼び出された結果、隠れていた森の中から出てきて、2人まであと50mほどのところまで歩いてきたようだ。だがどういうわけか、彼女は——


バタッ……


——何かに躓いたのか、あるいは他に原因があったのか、不意に倒れてしまったようである。そして、それからというもの、ピクリとも動かなくなってしまった。


「……お姉ちゃん、今、何かした?」


「いいえ?()()何もしてないわよ?多分、勝手に倒れただけだと思うけど……」


 そう口にしながらも、先ほど話しかけた際に、自分の声を高強度の超音波に乗せて飛ばしたことを思い出すワルツ。

 なお、人は耳で超音波を聞けないものの、その影響を受けないというわけではないので、高強度の超音波を受けると、失神してしまう可能性があったりする。

 つまり。僧侶が倒れてしまったのは、ワルツが原因である可能性がかなり高かったのだ。


「……ちょっと、様子を見に行きましょうか?」


 そのことに気づいたワルツは、僧侶の様子を見に行くことにしたようである。彼女としては、僧侶に触れず、そのまま放っておきたかったようだが、そうすると、そのうち、彼女が魔物に襲われないとも限らなかったので、一応、面倒を見ることにしたのだ。まさか、自分たちのことを付けてきたことが気にくわないというだけで、気絶させたあげく、見殺しにする、というわけにもいかないのだから。


 一方で、ルシアの方はというと——


「えっ……」


——姉の判断を聞いてからというもの、耳を疑った様子で戸惑っていたようだ。どうやら、彼女も、ワルツと同じく、僧侶のことはできれば放っておきたかったらしい。

 その様子を見て、ワルツが問いかける。


「やっぱり……嫌?」


「うん……あの人、この前、私たちのことを襲ってきた勇者さんの仲間だよね?それなのに……助けるの?」


「そうねぇ……正直、私も、あまり触れたくないわね。でも……どうする?放置して、魔法の練習に出かけて、戻ってきたとき……あそこに骨だけが残ってたりしたら……」


「…………うん。助けよっか……」


「うん。それが無難だと思う……」


 あまり見たくない光景を想像したのか、姉妹は2人そろって眉を顰めると。少し先で倒れていた僧侶の元へと近づいて、彼女の様子を確認することにしたようである。



「……この人、どうして倒れちゃったんだろ?」


「んー、どうしてかしらねー?」しれっ


「お姉ちゃん、なんかあやしぃ……」じとぉ


 姉が原因なのではないか、と疑った訳でもないのに、どういうわけか彼女の目が泳ぎ始めた様子を見て、何となく事情を察した様子のルシア。ただ、ルシアとしては、今回を含めて、常に自身のことを守ってくれる姉の行動にとやかく言うつもりは無かったらしく、それ以上、僧侶が倒れてしまった原因については追求はせず……。彼女は、その場でしゃがみ込むと、そこに落ちていた枝を拾って、その先端で僧侶の顔を突き始めたようだ。


 その結果——


「う、うん……」


——頬を走る痛みのせいか、目を覚ます僧侶。

 そして薄目を開けて、そこにいたルシアとワルツの姿を見た彼女が、開口一番に口にしたのは——こんな言葉だった。


「……ひ、ひもじい……」


 その言葉だけを残して——


グッタリ……


——と、再び意識を失う僧侶。どうやら、よほどの空腹感が、彼女のことを苛んでいたようである。


「……勇者たちに何があったのかしら?」


「んー……どうなのかなぁ?(っていうか、勇者さんたち、お姉ちゃんの魔法を受けても、ちゃんと生きてたんだね……)」


「……ま、いっか。でも、一緒に魔法の練習に連れて行くっていうのも、どうかと思うから、彼女のこと、町の衛兵さんたちのところに連れて行って、保護してもらいましょ?で、それが終わったら……今度こそ魔法の練習よ?」


「うん。約束だよ?」


 そんなやり取りをしてから、意識の無い女僧侶を空中に浮かべて、来た道を戻るワルツとルシア。

 その際、やろうと思えば、ルシアは転移魔法を使って、僧侶のことを町の正門前まで送り届けられたはずなのだが……。しかし、彼女がそれをしなかったのは、まだ転移魔法の扱いに慣れていなかったためか、単に失念していただけか。


 あるいは——それが、ワルツとルシア、そして”僧侶”の運命だったためか……。



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