1.2-27 町での出来事18
「ワルツ様。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。それで、こちらのオリハルコンについてなのですが……」
「あー、そういえば買い取ってくれるって言ってたわね?」
「はい。先ほどはキロ2万ゴールドと申しましたが、本日は特別に、キロ2.2万ゴールドで買い取らせていただきます」
「あら、そう……。太っ腹ね?じゃぁ、これも頼むわね?」
ズドォォォォォン!!
「…………えっ?」
◇
機動装甲のカーゴコンテナの中に持ってきたオリハルコンと、手持ちの鉄塊。それらをジーンに売ってから、錬金術ギルドを後にしたワルツとルシア。
その結果、合計で250万ゴールドもの大金を手に入れたワルツたちは、どこかうれしそうに、町の中を歩いていたようである。
「ねぇ、お姉ちゃん。次、どこに行くの?」
「そうねぇ……。敢えて、秘密にしておこうかしら?」
「えっ……」
「まぁ、行けば分かるわ?」
そう言って、ルシアの手を握りながら、街の中を歩いて行くワルツ。そんな彼女は、前日同様に、狐耳と尻尾をホログラムで作り出して、自身の頭と腰に装着していたようである。どうやら彼女は、ルシアと一緒に歩く際、そうしている方が姉妹らしく見えると考えたようだ。
そんなワルツの隣にいたルシアの方は、行き先を言わずに町の中を歩き続けていた姉へと、どこか期待するような視線を向けていたようである。次はどんなことで、自分のことを驚かせてくるのか……。姉と共に歩く街の中の景色は、彼女にとって、遊園地のアトラクションのように見えていたことだろう。
そして街の中を歩くこと十数分。ワルツたちがやってきたのは、商店が建ち並ぶ通りの一角にあった、とある1軒の店だった。
「んとー……アクセサリーショップ?」
「そ。多分だけど……アクセサリーにも、エンチャントがかかってるやつがあるんじゃないかなー、って思ったのよ。この前、ルシア、鉄の精錬をしてたときに、熱がってたじゃない?」
「うん……。火傷するほどではなかったけど、急に熱さが伝わってきたから、びっくりしちゃったかなぁ……」
「でしょ?だから、熱さを和らげるようなエンチャントがかかってるアクセサリーが無いか、探しに来たのよ。私の推測じゃ、多分、耐火とか、耐熱とか、そんな感じのやつが付いたアクセサリーが売ってると思うのよねー(まさか、鎧を着せるわけにもいかないし……)。で、さっき、臨時収入があったじゃない?これはもう……やるしかないでしょ?」
「えっ……も、もしかして……お姉ぢゃん……」ぶわっ
「……泣いたら、帰ろっかな……」
「?!」びくぅ
ワルツの指摘を聞いて、泣き顔から、渋い表情へと、一気に顔色を変化させるルシア。
そんな妹の必死な様子に目を細めつつ、ワルツは彼女の手を握って、店の中へと進んでいった。
◇
「「うわぁ……」」
多くの客たちで賑わう店の中に入った瞬間、重なる姉妹の声。そこには、大小様々な宝石や水晶、貴金属の類いが陳列されていて、その一つ一つに、少女たちの心を吸い付けるような魔力が込められていたようである。
宙に浮かぶ魔法のランタンは、ガラスのようなもので装飾が施され、まるでシャンデリアのような見た目になっており……。商品を陳列する棚も、隅々まで装飾が施され、職人の魂が込められているのが素人目にも分かるほどで……。まるで、この店自体を一つの装飾品のように感じさせるような——そんな雰囲気が店の中に漂っていたようだ。
ただまぁ、そこに並べられていた品に——
「(へぇ、思った通り、エンチャントが付いてるみたいじゃん。でも……何これ?”メシウマ”のエンチャント?その隣に”良味”ってエンチャントもあるから……何か別のエンチャントなのかしら?っていうか、この”姑避”って何?)」
——といったように、武具屋では見かけなかったような意味不明なエンチャントの数々が見受けられたのは、使う者を選ぶ武具では無く、万人向けのアクセサリーだったためか……。
そんな商品の数々を一瞥した後で、ワルツはルシアにとって適切だと思う品を探し始めたようである。とはいえ、消去法で考えると、ほとんどの商品が選択肢から外れていき、結果として残ったのは、1種類だけになってしまったようだが。
「ねぇ、ルシア?ルシアに……こんな”バングル”をプレゼントしようと思うんだけど、どう?」
「むむむむむ!」ぷるぷる
「……嫌?」
「ううううう……」ぶわっ
「……うん。ごめんね?頑張ってたのね……」
泣いたらアクセサリーを買ってもらえない、と姉に言われてからというもの、口をへの字にして、今にも泣きそうになっていた顔を、必死にごまかそうとしていたルシア。そんな妹にワルツが話しかけた結果、彼女の顔に建造されていたダムは、崩壊寸前な状態まで追い込まれてしまったようである。
その結果、ワルツは、それ以上、ルシアのことを刺激しないよう、無理には話しかけないことにしたようだ。
「それじゃぁ、バングル系でいくわね?」
「…………」こくこく
「それじゃぁ、どれにしようかなー……って、一つしか無いか……」
そこにあったバングルの中で、”耐火”、あるいは”耐熱”といった類いのエンチャントが掛けられている商品は、たった一つしか無かったようである。
それは、その名の通り、”耐火のバングル”。そこに書かれていた商品の説明には、こう書いてあったようだ。
「なになに?……”耐火+2のエンチャントが、ドラゴンのブレスの直撃から、あなたの大切な人を守ります”?(いや、バングルだけじゃ、普通、死ぬでしょ……。ドラゴンブレスが、どんな威力なのかは知らないけどさ……)」
ワルツがそれを口に出して読むと、今まで泣きそうだったルシアが、不意に怪訝な表情を浮かべて、こう口にする。
「私、ドラゴンさんと戦わないけど……」
「まぁ、精錬もドラゴン退治も、似たようなものじゃ無い?っていうか、他に熱に関するエンチャントが付いたバングルってなさそうだし……」
「えっ……じゃぁ、まさか……」
「うん。これにしましょ?」
ワルツがそう口にした瞬間だった。
「ちょっ……お、お姉ちゃん?!ちょっと高すぎるよ?!」
ルシアが驚いたように、声を上げたのだ。それも無理の無いことだと言えるだろう。”+2”の効果が付与されていない”普通のエンチャント”が掛かったアクセサリーですら、10万ゴールドを超えるような金額だったというのに、”+2”が付くだけで、桁が1つ増えていたのだから……。
「じゃぁ、出世払いで。まぁ、精錬1回分で、すぐに元取れるどころか、何個か買えると思うけどね?」
「う、うん……(なんでかなぁ……お姉ちゃんに買ってもらうのに、金額が高すぎて、嬉しいのか嬉しくないのか、よく分かんなくなってきちゃったかもしれない……)」
「すみませーん!これくださーい!」
そう言って、店員を呼び、”耐火のバングル”を購入するワルツ。その際、店員や客たちが、年端もいかない少女たちに対し、どんな視線を向けていたのかについては——どうか、お察しいただきたい。
こうしてワルツたちは、目的のアクセサリーを購入し終えて、その場を後にしたのである。
ただし——
「…………ん?」
「……?どうしたのお姉ちゃん?」
「……ううん、何でも無い……(気のせい……じゃないわよね?)」
——自分たちの背後に向けられた、何者かの視線を感じながら……。
修正によってかなり文が減ってしまったのじゃが、その辺はお察しください、なのじゃ?
駄文が減って、スリムになっただけなのじゃ。
……多分の。




