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1.2-19 町での出来事10

 ルシアによる服選び。

 その午後の部は、凄絶なものだった。棚に置いてあった古着を手に取っては戻し、手に取っては戻しと、何時間も繰り返していた狐娘がいたのである。それもほぼ同じ服を……。


「…………」げっそり


「お姉ちゃん、大丈夫?」


「……ぜんぜん大丈夫よ?(もうダメかもしれないけど……)」


 顔では優しげな笑みを浮かべながらも、その内心は、ボロ雑巾のようになっていたワルツ。

 ただ、幸いなことに、すべての服を選び終わるのに数日掛かる、というわけではなく、どうにか1日で片が付いたようだ。どうやらルシアは、午前中の内に、あらかたの目星を付けていたらしい。


 結果、彼女たちは、夕食時よりも少し早い時間に服屋を出て、そして町中を歩いていたようである。そんな中、ワルツの後ろを付いて歩いていたルシアは、不思議そうに姉へと質問した。


「ねぇ、お姉ちゃん。どこ向かってるの?」


「そうねぇ……宿屋の店主へのプレゼントを買いに行くところ?」


「……弓矢?」


「えぇ、大体そんな感じ……いや、冗談よ?」


 ルシアを放っておくと、本当に宿屋の店主のことを襲いそうな気がしたのか、念のために釘を刺すワルツ。一方、それを聞いたルシアが、どこか残念そうな表情を浮かべていたのは、未だ今朝のことを根に持っていたためか。

 そんなルシアは、小さくため息を吐いてから、気を取り直した様子で顔を上げると、姉に対し、武器屋――もとい武具屋に行く理由を再度確認した。


「じゃぁ……どうして武器屋さんに行くの?私もお姉ちゃんも、武器は必要ない気がするんだけど……」


「確かに武器は必要ないかもしれないわね。だけど、防具は必要でしょ?酒場の店主さんに美味しい食事を貰うためには、狩りを続けなきゃなんないわけだけど、狩りに出てる間にもしものことがあったら、大変じゃない?絶対安全、ってわけじゃないしさ?」


「そっかぁ……そうだね」


「それに、魔法使いって言ったら……やっぱり、杖が必要だと思うのよ」


「……えっ?」


「いやさ?もしかしたらだけど……ルシアも杖を持ったら、小さな魔法が使えるようになるかもしれないじゃない?それを試してみようと思うのよ」


 そんな姉の言葉を聞いて――


「えっと……うん!そうだね!試してみなくちゃ……分かんないよね!」


――と、目を輝かせながら頷くルシア。どうやら彼女は、ワルツが思った通り、小さな魔法が使えるようになりたいと、切望していたようだ。



「さて……あそこが武器や防具を扱う武具屋なわけだけど……」じーっ


「……うん。お姉ちゃんが何を考えてるか、何となく分かる……」じーっ


 武具屋まであと50mほどの距離に到着したは良いものの、何故かそこで立ち止まってしまうワルツとルシア。何しろそこでは――


「あァ?!テメェ、もういっぺん言ってみろやコラ!」ドゴォッ!

「知るかカスッ!冗談は顔だけにしろや!この※$#%が!」ボコォッ!


ドカバキッ……


――体格の良い冒険者たちが取っ組み合いの喧嘩をしていたり、明らかに目つきの怪しげな者たちが階段に座り込んでいたり、体中ピアスだらけの冒険者とは思えないパンク(?)な人物が地面で寝転がっていたり……。まぁ、端的に言うと、非常に治安が悪かったのである。


「狩人さんが言ってた治安の悪くなる場所って、ここのことかなぁ……」ぷるぷる


「かもねー……」ぷるぷる


 その光景を見て、足踏みをしてしまうワルツとルシア。

 しかし、目の前には武具屋があって、村に戻った後も妹を危険から守らなければならなかったワルツは、覚悟を決めると――


「……行きましょうか」


――妹の手を握りしめて、前へと進むことにしたようである。


 対してルシアの方は、かつてのトラウマが蘇ってくるのか、ガラの悪そうな男たちに視線を向けられるのが怖くて堪らなかったらしい。その結果、彼女は、ワルツの腕にピッタリとくっつき、視線を伏せて、できるだけ周りの者たちが自身の視界の中に入らないようにしたようだ。

 こうして彼女たちは、残り50mほどの距離を、一歩、また一歩と、進んで行ったのである。


 ただ、何故か、彼女たちが武具屋に辿り着くまでの間、か弱そうに見える少女2人に対し、男たちの方から声が飛んでくることは無かったようだ。むしろ、こんな声さえ聞こえてくる。


「んぐっ?!」

「お、お助けっ?!」

「お前ら、何やっ……ひぃっ?!」


 ルシアが目を伏せて歩いていると、男たちのそんな呻きとも取れるような声が響いてきたのだ。

 それを聞いた彼女は、思わず視線を上げた。もしや姉が、自分のために、何か恐ろしいことでもしているのではないか――ルシアはそんなことを考えてしまったようである。

 しかし、ルシアの想像とは裏腹に、その場の道がグロテスクに赤く染まっていたり、得も言われぬ肉塊が落ちていたり、大きな穴が開いている――などということは無かった。そればかりか、男たちの姿は健在だったようである。しかも、皆が、自分たちの方へと視線を集中させていたようだ。


 その様子を見て――


「ひぐっ……!」


――と身体を硬直させてしまうルシア。その際、弱くない風魔法が、彼女の周りで渦巻いていたようだが……。とはいえ、それは、一瞬のことだったようである。

 彼女の前で、姉がこう口にしたのだ。


「世の中、おかしいわよね……。手を出してきたら、肉塊にしてやろうか、とも思ってたけど、私たちの姿を見るや否や、逆に向こうから全力で避けていくのよね……。見ただけで避けるとか、喧嘩売ってるのかしら?」ゴゴゴゴゴ


「えっ……」


 姉の言葉を聞いて落ち着きを取り戻したのか、その場へと冷静に視線を向けるルシア。するとそこでは、地面に尻もちをつき、そのままの状態で後ずさりして、中には失禁すらしていた男たちの姿があった。

 それを見たルシアは、首を傾げて、姉へと質問する。


「……お姉ちゃん、何かしたの?」


「んー、それが良く分かんないのよ……。あの勇者とかいう人も言ってたけど、なんか、私から殺気出てるみたいよ?(失禁してる人がいるのは……ルシアが魔法を使ったせいなんだけどね?)」


「そっかぁ……。私にも良く分かんないかなぁ……。お姉ちゃんから殺気が出てるとか、そんな感じしないし……」


「殺気を出す機能とか付いてないはずだから、私も気のせいだと思うんだけどね……まぁ、いいわ。じゃあ、行きましょっか?」


「うん……(やっぱりお姉ちゃん、理不尽……)」


 内心でそんなことを考えながら、姉の腕にくっついて歩くルシア。ちなみに、周りの者たちからすると、強力な魔法が使える彼女のほうが、よく分からない存在であるワルツよりも理不尽だと思われていたりする。


 こうして。彼女たちは、目的の武具屋へと無事に(?)たどり着いたのであった。



まずいのじゃ……。

修正前の1.2-01話は、およそ12000文字だったのじゃが、今この字時点で25000文字を突破しておるのじゃ……。

巻いていかねば、どうでも良い駄文で、10万文字を越えてしまうような気がする今日このごろなのじゃ……。

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「25000文字を突破」 おめでとうございます?
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