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1.1-13 村7

ルシアのお陰で、無事(?)に狩りを終えた一行は、村へと戻ることにした。


その帰り道の途中で、獲物たちを持ち帰ることの他にもう一つ懸念を持っていたワルツが、狩人に対し、問いかけた。


「そういえば、狩人さん?この村に冷蔵庫ってあるんですか?」


大量の獲物たちをどうやって腐る前に処理するのか……。

ワルツはそれが心配でならなかったらしい。

もしも冷蔵庫が無いのなら、村に送った魔物たちはいずれ腐ってしまうことになるだろう。


「ん?なんだその……れいぞーこ、っていうのは?」


「えーと、私の国にあった装置なんですけど、食べ物が腐らないようにするために、冷たい空気が出てくる入れ物のことです」


と、この世界に冷蔵庫そのものは無くとも、それに近い装置があるのではないか、と考えながら、説明するワルツ。


すると、狩人はどこか合点のいった様子で、手をポンと叩くと……。

とある道具について話し始めた。


「あぁ、倉庫に置いてある魔道具のことだな?あれ、夏になると、涼しくて気持ちがいいよなー」


「へぇー。”魔道具”なんてあるんですか……」


「えっ?魔道具じゃない、なんてことあるのか?」


「えっ……い、いえ、そうですね……。私の国にあった冷蔵庫も、魔道具のようなものでしたね……」


と少々焦りながら、冷蔵庫について補足するワルツ。

なお、言うまでもないことだが、冷蔵庫は魔動(?)ではなく、電動である。



それから獣道を30分ほど歩いて、ようやく村へと戻ってきたワルツたち。


その後、酒場の隣りにあった青い屋根の建物の入り口で、狩人と別れたワルツたちは、そのまま酒場には帰らず……。

2人で近くの山へとやって来ていた。


「さぁ。それじゃぁ、鉱石を採掘しましょうか?」


「こーせき?」


「そう鉱石。もう、金やら銀やら宝石やらが、ザックザクよ?」


「うん?」


と、ワルツが何を言っているのか分からない、といった様子で首を傾げるルシア。


なお、この世界に金や銀、それにダイヤやルビーなどの貴金属宝石類が無いわけではない。

ルシアには、何も無いただの山から、それらが採掘できるとは思えなかったのだ。


尤も、貴金属類はどこでも採れるというわけではないので、この山から採掘できるとは限らなかった。

だが、確率は限りなくゼロに近くとも、完全なゼロではないのである。


ワルツは、そんな淡い期待を(いだ)きながら、時折立ち止まっては、地下の様子をレーダーで確認していたようだ。


「まぁ、無くて当然。あれば儲けものねー」


「無いのが当然なのに……掘るの?」


「えぇ。本当の目的は、金とか銀とかじゃないからね。もちろん、あれば掘っていいとは思うけど……でもあったらあったで、ちょっと面倒になるかもね……。何処で売ったら良いとか……」


「あっ……そっかぁ。そう言えば、お姉ちゃん、売るのが大変とか……昨日、そんなこと言ってたよね?」


「えぇ。できれば、未来永劫、平和に過ごしたいから、面倒事はちょっとね……。って訳で、ここで掘ろうと思ってるのは……これよ!」サッ


そう言って、その場の地面に転がっていた赤い石を拾い上げるワルツ。


「これ、何か分かる?」


「…………石ころ?」


「まぁ、そうね。まったくその通りだと思うわ。でも……期待していた回答とは、ちょっとかなり違うわね……」


「えっ……」


と、ワルツが一体どんな回答を求めていたのか分からず、微妙そうな表情を浮かべて固まるルシア。


そんな彼女の事を見て、ワルツは苦笑を浮かべると……。

ルシアが持っていたポシェット――正確には、そこについていたベルトのバックルを指差しながら――


「この石を集めて作ろうとしているものは……これよ?」


と、口にした。


「えっ……この金具?」


「うん。まぁ、正確に言えばこの金具の原材料……鉄ね?」


「この赤い石が……鉄になるの?!」


「そっ。だってこれ、鉄だし……」


「…………」


一体どうすれば地面に落ちている石が、光沢を帯びた鉄へと変わるのか……。

それが分からなかったためか、ルシアは、物珍しげな様子で、赤い石をじーっと見つめていたようだ。


しかし、その場で立ち止まっていても、赤い石が勝手に湧いてきたり、鉱脈があったりするわけではなかったので……。

彼女たちはそこからさらに500mほど、山道を登ることにしたようだ。


そして、岩肌が剥き出しになっている場所まで来たところで、ワルツは足を止めると。

自身の後ろから少々息を切らしながら付いてきていたルシアの方を振り向いて、こんな質問を投げかけた。


「ねぇルシア?貴女、土魔法って……使える?」


この世界に土魔法という存在があるのかどうか分からず、期待を込めて質問した様子のワルツ。


するとルシアは、首を縦に振りながら、端的に返答した。


「うん。使えるよ?」


「おっけー。なら、この岩肌に、洞窟を掘るとかできる?」


「んー……やったこと無いけど、多分できると思う」


「それじゃぁ、試しにでいいから、ここから50mほど真っ直ぐに掘ってもらえる。やっぱり金銀は無さそうだけど……この先に鉄が沢山ありそうな感じなのよ……。あ、それと、穴はできるだけ広めで作ってね?」


「うん、分かった!」


「(…………ん?メートルって単位……通じるのね?それとも、メートルの意味は分からないけど、とりあえず適当に話を合わせてるだけかしら?)」


とワルツが首を傾げていると、ルシアは早速、その小さな手を岩に当てて……。

そして魔力を手の平に集め(?)、土魔法を行使しようとした。


それを見ながら……。

ワルツはこんなことを考えていたようである。


「(これまで、火魔法とか風魔法とか、凄まじい威力だったけど……土魔法って、どうなのかしら?)」


――もしかすると、山ごと爆散するのではないか。

あるいは、猛烈な勢いで、土砂が吹き出してくるのではないか……。

ワルツはそんな危険な展開を想像していたようだ。


結果、彼女は、念のために、重力障壁を展開し、ルシアのことを守ろうと身構えるのだが――


ブゥン……


「穴、開いたよ?お姉ちゃん」


幸いなことに、ワルツが思っていたような展開には、ならなかったようである。


「あぁ……ありがとう……(っていうか、掘った岩石とか、何処に消えたのかしら?)」


まるで転移魔法で飛ばされたかのように、その場から消えた岩石の行方を慮るワルツ。

なお、詳細については、ルシアも知らなかったので……。

結局、岩石は文字通り、闇の中へと葬り去られた、ということで落ち着いたようである。



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