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-10.4-15 時間15

「ここに狩人さんがいなくて良かったわ……」


「どうして?」


「だって、狩人さんのところに伝わってるサウスフォートレスの成り立ちって、大昔にアレクサンドラがなんかこう頑張って作った、って感じの内容だったでしょ?まぁ、確かに、これから先の未来で、アレクサンドラがサウスフォートレスの発展に寄与するのかも知れないけど、実はその前に私たちが町を作ってましたー、なんてことが知れたら、狩人さん多分ショックを受けると思うのよ……」


「そうかなぁ……。逆に喜ぶと思うけど……」


「でしょ?ルシアもそう思……えっ?」


「えっ?」


 そんなやり取りをしながら空を飛んで、先ほど転移させた魔王城(?)へと向かうワルツとルシア。その際、2人の間で、なにやら意思の疎通がうまく出来ていなかったようだが、その認識の差異を埋める前に、ルシアがこう口にする。


「ねぇ、お姉ちゃん。ところでなんだけど……あの火事消さないと、捕まってた人たち大変なことになっちゃうんじゃないかなぁ?ほら、空から見ても分かるけど、お城をぐるりと取り囲んでる壁も燃えてるから、外に逃げられなさそうだよ?」


「まぁ、大丈夫じゃない?エンデルスなら水魔法使えるし、それに一応勇者なんだし……」


「でも、さっきまでヘトヘトになってたみたいだけど……」


 その言葉を聞いて、現状を整理し始めるワルツ。彼女が思い浮かべたことは次の3つである。今、城にいるメンバーの中でエンデルス少年以外に水魔法を使っている者を見たことがないこと。そのエンデルスが"卵"の救出のために魔力を使い果たしていたこと。そして、この世界の人々には、魔法を使える者がそれほど多くないこと……。


 結果、ワルツは——


「……やっば!」


——と慌てた様子で、未だ黒い煙を噴き上げていた城へと加速するのだが……。そんな折、城の方で、大きな変化が生じる。


ズズズズズ……


 突然、城の直上にモクモクと黒い雲が生じると——


ザバァァァァ!!

ピカッ!ドゴォォォォン!!


——そこから城を目掛けてピンポイントで、豪雨が降り始めたのだ。まさにゲリラ豪雨である。

 それ自体は、自然界でも生じ得る現象だった。空気中の水分が、火災で生じた煙の粒子を核にして成長しながら"火災積雲"を形成して、そこから降雨するという現象である。

 しかし今回に限っては、不自然な点が多かった。火事の規模がそれほど大きくないこともそうだが、雲の成長から降雨に至るまでの時間が極めて短かったのだ。

 その原因として疑われるのはただ一つ。


「あれ、誰の魔法かしら?少なくともエンデルスじゃなさそうね?」

「かなり大きい魔法だよね?」


 誰かが大規模な魔法を使った……。それしか考えられなかった。


 そしてワルツたちは、誰が魔法を使っているのかを想像しつつ、みるみるうちに小さくなっていく炎の中へと降下し始めたのである。



「……ハードレイン!さぁ、雨よ!この地にあるすべてものを洗い流せっ!」どごー


「えっと……リア?」


「はい。なん……ですか……?」


「……いえ。なんでもありません……」


「(やっぱり、リアのやつ、記憶が戻ってるんじゃないか?)」


 どこかハイテンションな様子で雨を操るリアを前に、首を傾げるメイド勇者と賢者。突然、城に雨が降り始めたのは、どうやらリアが放った魔法の結果だったようである。


「リア?随分と強力な魔法を使えるようになったのですね?」


「これでも抑えたつもりなんだけど、力の加減が上手くいかないわ。カタリナの奴、私の身体に何をしたのかしら……」


「えっと……リア?」


「はい。なん……ですか……?」


「あまりこんなことは聞きたくないのですが……それ、わざとですか?」


「はい……?」


「……いえ。いいです……」


 強力な魔法を使っている間だけ(?)、記憶を失う前の状態に戻るリア。そんな彼女を前に、メイド勇者と賢者は、煮え切らなさそうな反応を見せていたようである。


 一方、同じ場所にいたエンデルス少年は、というと——


「…………」


——メイド勇者たちから数メートルほど離れた場所にあった馬小屋のような場所で、一人で静かに雨宿りをしていた。そこで彼は助け出した"大きな卵"を、両手で抱えて守っていたようである。

 ただ、どういうわけか、彼はメイド勇者たちに背をむけていた。その様子を例えるなら、何か悪いことをして、そのことを大人に隠そうとしていた子どものように……。


 そんな時、ワルツたちが戻ってくる。


「お待たせー」

「ただいまー」


 それに対し、メイド勇者たちが返答した。


「おかえりなさいませ」

「おつかれさん」

「おつかれ……さまです……」


「ねぇ、レオたち?この雨って……」


「リアの魔法です」


「私の……魔法……?」


「……まだ、記憶が混乱してる感じ?」


「えぇ。こうして静かにしているリアと、魔法を使っているリアとでは、記憶が共有できていないようです」


「そう……(多重人格になっちゃったのかしら?)」


 メイド勇者の説明を聞いて、リアの頭の中で何が起こっているのかを想像するワルツ。しかし、この場では、リアの症状の判断も詳細な調査も出来なかったので……。とりあえずワルツは、リアの件を棚上げにして、エネルギアに戻ってからカタリナに相談することにしたようである。


 というのも、彼女には、もう一つ気になることがあったのだ。


「あれ?エンデルス。貴方、挨拶は?」


 戻ってきた際、メイド勇者たちはすぐに近づいてきたというのに、エンデルス少年だけは、未だワルツたちに背を向けたまま座り込んでいたのである。それがどうも気になって仕方がなかったらしい。


 しかし、彼女が話しかけても、エンデルス少年から返答が戻ってくることは無かった。結果、ワルツは、エンデルス少年の前に回り込むのだが——


「……えっ……貴方、なんで泣いてるわけ?」


「うぅ……」ぶわっ


——彼は、どういうわけか、人知れず号泣していたようだ。


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