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-10.4-14 時間14

ドシャァァァァンッ!!


 轟音を立てて崩れ落ちる大きな城。それを見た人々は、皆が絶句した。一部の例外を除き、ほぼ全員が、中に入ったワルツたちの安否を絶望視したのである。


 一方で、その"一部の例外の者たち”、もといメイド勇者たちは——


「……ぺっしゃんこ?」


「いえ、リア。ワルツ様方の場合、あの程度のことでは、かすり傷すら負いませんよ?」


「だろうな……。ルシアちゃんの魔力も、まだ消えてないようだ」


——という冗談(?)を口にしながら、周囲を警戒していた。牢屋にいた人物から聞いた話によると、城の主が"恐ろしい魔王"ということだったので、いつ攻撃を受けても良いように、気を抜く訳にはいかなかったのである。まぁ、見ず知らずの者に領地を害されて腹を立てるのは、魔族に限った話ではないのだが。

 そんなメイド勇者たちの心配は、徒労に終わることになる。


ドゴォォォォ!!


「ふぅ。ようやく外ね?」

「炎の中で思ったんだけど……この服のエンチャント、ちょっとやり過ぎだと思う……」ちらっ

「あぢぃ……」じゅぅぅぅ


 炎をくすぶらせる瓦礫の中から、ワルツたち3人が無事に(?)戻ってきたのだ。

 そんな彼女たちに気付いて、メイド勇者たちが駆け寄っていく。


「お帰りなさいませ。あの……救助された方は?」


「ん?あぁ、姿を見ないから心配したんでしょうけど、でも大丈夫よ?エンデルスが持ってる卵がその要救助者だから。ちなみにこれ、今日の晩ご飯ね?」


 そんなワルツの言葉を聞いた瞬間——


「?!」びくぅ


——と全身の毛を逆立てて、卵を両腕で抱きかかえるエンデルス少年。身体を張って助けた卵が食卓に並ぶというのは、あまりにあんまりだったようである。


「いや、今の冗談だからね?」


「じょ、冗談に聞こえなかった……」


「(ずいぶんな変わりようね?少し前までは、もっとこう殺伐としてたのに……)」


「……なんだよ?」


「ううん。なんでもない」


 ワルツはそう言ってエンデルス少年の怪訝そうな視線をすり抜けると、今度はメイド勇者たちに向かって問いかけた。


「どう?レオ。魔王とかドラゴンとか、襲ってきた?」


「いえ。時折黒い煙の向こう側に、ドラゴンと思われる影を見ることはありますが、こちらの方に近づいてくることはありませんでした。煙のおかげで、私たちの存在には気付いていないのかも知れません」


「あらそう……。じゃぁ、逃げるなら今のうちってことね」


「しかし、どこにどうやって逃げるのですか?ルシアちゃんの転移魔法を使おうにも、ここがどこなのか、分からないのですよ?」


「そうねぇ……ルシアの転移魔法……あ、そうだ!」


 メイド勇者レオナルドとの会話の中で、何かを思いついた様子のワルツ。それから彼女は、妹に対し、こんなことを問いかけた。


「ねえ、ルシア?転移魔法でこの城ごと、引っ越しできる?少し壊れてるけど城壁が残ってるし、何かあったとき籠城っぽいことできるかなー、って思うんだけど……」


「うん、いいよ?私自身は転移魔法で移動できないから、引っ越ししてる間は、空を飛ばなきゃならないけどね?」


「じゃぁ、ドラゴンたちが戻ってくる前に、ぱぱっと一緒に行きましょうか」


 それぞれそう口にして、宙に浮かぶワルツたち。その際、彼女たちは、牢屋から救い出した人々から、なにやら化け物を見たかのような視線を向けられていたようだが……。ここに至るまでに幾度となく、様々な人々から似たような視線を向けられてきたためか、今では感覚が麻痺してしまったらしく、彼女たちはその視線を向けられても特に反応しなかったようである。


 そして……。

 モクモクと立ち上る黒い煙よりも高い場所までやってきたワルツとルシアによる、魔王城(?)の引っ越しが始まった。


「お城の周り、何も無いね?森だらけ」


「多分、城の主が人嫌いだったんでしょ?(気分は分からないでもないわ?)」


「そっかぁ……。ところで、お姉ちゃん。この風景……どこかで見たこと無い?」


「あー、それ気のせいだと思うわ?」


「そうかなぁ……」


 そう言いつつ、眼下にあった城に向かって両手を向けるルシア。

 そして彼女はその手の先にあった空間を、転移魔法で切り取ると——


「あそこで良いよね?あの遠くに見える平原の真ん中」


「……分かって聞いてるわよね?それ」


「うん。じゃぁ、行くね?」


ブゥン……


——と、元の場所から歩いて4日ほどの距離に移動させた。

 すると、その景色を前にして、知らぬ存ぜぬを突き通せなくなったのか、いよいよワルツが唸り始める。


「んー、やっぱりこの景色……」


「うん……。あれって、サウスフォートr」


「ううん。皆まで言わなくても良いわよ?ルシア。実はね……私、この時代に来て、よく考えてることがあるの」


「うん?」


「……些細なことを気にしてたら、何も出来なくなるんじゃないかな、って……」


「う、うん……。そうだね……」


 そして、姉妹はそこから見えていた地平線に対し、遠い視線を向けた。具体的には——未来の時代でいうサウスフォートレスへと向かって……。


 ……そう。魔王城があったのは、未来におけるミッドエデン。それも国の南部にあるアルクの町周辺の地域だったのだ。


そして魔王は…………なんでもないのじゃ。

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