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-10.4-13 時間13

「あの人、誰かに似てるのよね……」


「うん?誰のこと?」


「さっき井戸から出たときに私に話しかけてきたおじさんのこと。どこかの酒場で店主をやってそうな感じのおじさんだったんだけど……ホント、誰かに似てたのよ。誰だったかしら……」


「う、うん……。誰だろうね……(そこまで分かってるのに、誰か分からないの?)」


 自身の知りうる"酒場の店主"はただ一人しかいなかったためか、姉が見たという"おじさん"が誰に似ているのか、すぐに気付いた様子のルシア。それでも彼女がそのことを姉に伝えなかったのは、姉が本気で悩んでいるようには思えなかったからか。


 そんなやり取りを交わしていたワルツたちは、今、炎に包まれている城の中を歩いている。ワルツの生体反応センサーが、城の中に逃げ遅れた者がいることを検出したので、その救出へと向かっていたのだ。なお、井戸から遅れて出てきたメイド勇者たちは、城の中には入らず外で待機している。


「なぁ、魔神様」


「ちょっとさー、エンデルス。その呼び名やめてよ。もうちょっとこう、フランクに呼んでもらえない?なんかむず痒くなってくるのよね……」


「じゃぁ、魔神で」


「それってあんまり…………まぁ、いいけど。で、何よ?」


 先頭を歩きながら、炎に向かって水球を飛ばしていたエンデルス少年へと、逆に問いかけるワルツ。

 するとエンデルス少年は、自分の横を通り過ぎていく水の濁流(まほう)に眉を顰めながら、振り返ること無く、質問の続きを口にした。


「その逃げ遅れた人っていうのは、どこにいるんだ?随分と奥の方まで歩いてきた気がするんだが……」


「逃げ遅れるくらい奥の方よ?っていっても、もう少しだけどね。ほら、あそこの扉の向こう側」


 ワルツはそう言って、廊下の行き止まりにあった大きな扉を指さした。その向こう側に、生体の反応を検出していたようだ。

 

 と、そんな時。


……ゴゴゴゴゴ!!


 城の至る所から、異音が聞こえ始めた。柱が燃えて強度が落ちてきたせいか、城の重さに耐えきれなくなって軋み始めたらしい。


「これ、崩れそうね……」


「そっかぁ。そうなったら大変だねー」


「ちょっ……人ごとみたいに言ってんじゃねぇよ!」


 そう言って、自分自身に水魔法を行使して、身体を湿らせ、少し先に見えていた扉へと走って行くエンデルス少年。そこで彼は、そのままの勢いで聖剣を振りかざすと——


「どりゃぁぁぁ!!」


ズドォォォォン!!


——と、扉を真っ二つに破壊してしまった。

 そして彼は勢いよく中に入ると、そこに向かって声を上げようとして——


「大丈夫か?!助けに来……」


——そこで言葉に詰まってしまう。とはいえ、そこに凄惨な光景が広がっていた、というわけではない。


「……あら。食料庫みたいね?」


「あぁ、そのようだな……」


「えーと?」


 そう言いながら、周囲を見渡すワルツ。

 そこは、エンデルス少年の言葉通り、ただの食料庫だった。壁際には穀物や樽などが天井近くまで整然と並べられていて……。エンデルス少年たちが部屋に入った時点で、すでに火の手が回っていたようである。

 そんな部屋の中には、一見する限り、人や魔族どころか魔物の姿すらなかった。結果、エンデルス少年は、ワルツに対し問いかけることになる。


「どこにいるんだ?その逃げ遅れた奴っていうのは……」


 その言葉に対し、ワルツは返答せず……。彼女はそのまま部屋の奥へと足を進めた。

 そして、まだ燃えていなかった食料の前で腰を下ろすと、そこにあったかごの中に両手を入れて、そしてある物体を掴み上げた。彼女は()()を後ろにいた2人へと見せながら、こう口にする。


「逃げ遅れたのは……この卵だったみたいね」


「「卵?」」


「えぇ。多分、中で、雛か何かが育ってるんでしょ?それがセンサーに反応しちゃったみたい」


「その()()()()っていうのが何なのかは知らないけど……じゃぁ、俺たち、食い物を助けに来たって事かよ……」


「端的に言えば、そうなるかしらね?」


 そう言って、エンデルス少年に対し、「はい」と手に持っていたラグビーボール大の卵を渡すワルツ。その他にもかごの中には大小の卵が入っていたようだが、それらはすべて無精卵。生体反応は無かったようである。


「任せるわ?でも、かなり熱せられてるから、もしかしたら……もうダメかも知れないけど……」


「……いや。それでも持って帰る。ここまで来たんだ。これも何かの縁だろ」


「そう。じゃぁ、頼むわ?」


 ワルツがそう口にした直後——


ガラガラガラッ!!


——と目に見えて崩れ始める城の柱。その中でルシアが水魔法を使って瓦礫を消火し、ワルツが重力制御システムを使って退路を確保する。

 そして彼女たちは、赤熱する瓦礫にできたトンネルの中を、外へと向かって歩き始めて……。その中で勇者エンデルスは、自身の服が焦げるのも気にすること無く、手にした卵を守り続けたのであった。


……余計なことは言わぬのじゃ!(ガクガク)

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