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ウォルシード視点3

書斎でウォルシードとディードは今後の予定について確認していた。

「この件はこのまま進めておいてくれ。」

「かしこまりました。」

「あと、ユーフェミアは今日何をしていた?」


「ウォルシード…そんなに気になるなら本人に聞けばいいだろ。」

ディードは呆れた声で言った。

ディードはウォルシードが生まれたときから常に傍にいて共に育ち、ディードの家系は代々アゼル家の執事をしている。ウォルシードより一つ年上だが執事の時はきちんとした対応をしているが、それ以外でウォルシードと二人きりになると友人のようなしゃべり方をする。


ウォルシードは言葉に詰まっていた。

その様子を見て

「はぁ~分かったよ。あの子はお前が造った園庭で朝から散歩してその後は庭のテラスでお茶と読書、午後からは刺繍をしていた。」


「そうか…。」

ウォルシードはユーフェミアがいつもと変わらない様子だということに安心していた。


「そしてまたあのメイドに叱られていたよ。」

メイドにユーフェミアが叱られる姿は毎日恒例だ。

「ったく、お前達は似た者同士だな…。」

「そうだな…。」

そういいながらウォルシードはユーフェミアと初めて出会った日の事を思い出した…。



あれは昨年のルードジニアの誕生際の夜会の事だった…。ウォルシードはアゼル家の当主だが騎士として参加していた。

交代の時間になり部下と交代したが当主として会場に居ないといけなかった。しかし会場内の熱にやられ少し休憩しようとバルコニーへと向かった。

そこには先客がいた。どうやら一人はメイドでもう一人はキレイなドレスを着た女性だった。

ドレスを着ている女性は椅子に座りメイドから叱られている処だ。


「ユーフェミア様!!ここがどのような場所かお分かりですね!!」

「ええ、分かってるわ」

どうやら怒られている女性はユーフェミアというらしい。

ユーフェミア…確かイデスがバートソン家に可憐で美しい娘がいるとだが実際は冷たい表情をして男をバカにし、玉の輿を狙いているような娘だと…。

そんな女が何故メイドに叱られてるんだ。


「分かってらっしゃるなら人見知りもほどほどになさいませ!!折角男性に声をかけられたのに無表情で固まり、挙げ句の果て逃走というのは相手に失礼ですよ!!」

「だって知らない人や男の人が怖いんですもの…。」


「怖いじゃありません!!このままでは結婚相手を見つけるどころかこのような場に出ることが出来なくなりますよ!!」

「分かったわ…。頑張って話し掛けてみる。」泣きそうになりながらユーフェミアは言った。


そこへ小さな女の子が泣きながらやって来た!!

二人は女の子に気付き近づいて行った。

「どうしたの?」ユーフェミアはしゃがんで女の子に言った。

「ひっくっ…お姉ちゃんだぁれ?」

「ごめんなさい、私はユーフェミアというの。あなたは?」

「リリア」

「どうして泣いているの?」

「ひっくっ…パパとママとはぐれちゃってさがして歩いていたら…ひっくっ…知らないお姉さんにぶつかったの。それでジュースが…お洋服にこぼれて汚しちゃったの…うわぁ~ん」

「そう。泣かないで、お姉ちゃんがキレイにしてあげる。」そういいなら女の子の髪を撫でメルに「メル私の裁縫道具箱を持って来て!!」

メルは慌てて「はっはい」と走りながら控え室に行き裁縫道具を持って来てユーフェミアに渡した。

するとユーフェミアは自分のドレスにハサミを入れ切っていった。その布で沢山のリボンを作り女の子の洋服に縫い合わせていった。


「あなたのドレスが私のと同じ色でよかったわ。これで大丈夫。汚れなんて見えないわ。」

女の子はかわいいリボンを沢山付けてもらって笑顔で「わぁ~かわいい!!ありがとうお姉ちゃん。」

ユーフェミアも笑顔で「どういたしまして。」

「あとはパパとママの所に帰りましょう」

「うん。」


「メル…私はこんな格好だから一緒に探せないわ、お願い出来るかしら?」

「もちろんです。お任せください。」

そうしてメイドと女の子は会場に戻りはぐれた両親の元へといった。

そうして彼女は会場を後にして帰って行った。会場では彼女のドレスが切られていたのを見た人達に、人のものに手を出して相手から切りつけられたとか悪い噂が流れたが…

ウォルシードは彼女が噂と違いとても優しい人間だと知っていた。何よりも女の子に向けた笑顔が忘れられなかった。それがウォルシードが初めてユーフェミアと出会ったことだった。


ウォルシードが思い出に浸っていると…

ディードが

「彼女はよくやっているよ。慣れない家で表情はまだ堅いから誤解されるが、マナーや礼儀はしっかり身についていている。」

「あんな噂のあるような女性と妻にすると聞いたとき反対したがお前は聞き入れなかったな…。絶対騙されてると思ったし、何よりもアゼル家の財産がなくなると思っていた。お前が珍しく説得するから負けて結婚を許したが私自身信用してなかった。」


「そうだったのか…。」


「だが結婚してからずーっと監視していたが噂と全然違うことにびっくりしたよ!」


「日中、本を読むか刺繍をしている。結婚式の御礼状も彼女がしたいと言い出して任せたが素晴らしい出来だった。お前が居ない間も本を読んでばかりでお茶会など開かないし行きもないし。ドレスや宝石に至っては結婚祝いで贈っただけでその後も要求しないしな。そしていつもあのメイドに叱られてる。その様子を見ればいい子なのだろう。」


「ああ…だから最初から言ってるだろ。」



「しかし、これから社交シーズンに入る。夫婦揃って行くこともあるし、人は外見で判断する。何とかあの無表情と人見知りを治してもらわないと、アゼル家の評判が下がる。」


「いや…ユーフェミアは一切夜会に連れていなかい。」


「侯爵夫人だ!!そんな事は許されないぞ。」


「ならば…具合が悪い事にするまでだ。」


「ウォルシード!?彼女を一生この邸から出さないつもりか?ますます彼女の噂が悪くなるぞ、それだけじゃないお前に心を開かなくなる。いいのか?」


「さっき部屋を抜けて奥様の部屋に行き何をしていたか言わないが…。」


「じゃどうすればいい…。彼女には金で買ったと思われて嫌われている。だがあの笑顔を他の誰かに見せて欲しくない。」


「焼きもちか…。だったら少しずつ歩みより心を開いてもらい好きになって貰え。」


「ったく…お前は仕事も出来て部下からの信頼も厚いのに好きな女の事となると全然ダメだな!!」


「うるさい!」


「ユーフェミアの事頼んだぞ…。」


ディードは執事モードになり「かしこまりました。」

と返事した。


「そういえば、奥様から友人を邸によんでいいか旦那様の許可を頂きたいとおっしゃっておりましたが…。」


「友人とは女か?」


「はい…セシル・レメール嬢です。」


考える込みながらウォルシードは「第二王子の婚約者か…。」


「分かった。許可しよう。」


「その様にお伝えしましょう。では失礼します」といい ディードは部屋から出ていった。


ウォルシードは一人部屋でウィスキーを飲みながら思い悩んでいた…。

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