黄色の百合
アラム国内では着々と戦闘準備が進められていた。やはり推理通り、戦争が起こるのだ。
二人の少年が路地裏で話し合っていた。
「本当に、許せないよな」
少年は友達に話しかけた。友達は何度も頷いた。
「ああ本当に。まさか謎のヤツラが侵略してくるなんて。良くないよ!」
少年は木の棒を振り回した。
「でも大丈夫、兵隊さんがやっつけてくれるんだよ。悪い人達なんて一瞬だよ」
「うん。でも、本当かなぁ」
少年は友達を訝しげに見つめた。
「本当かなあって、何が?」
「その…僕達、今度戦争をするんでしょ?本当に攻めてくるのかな。やっぱり怖いよ。話し合いでなんとかできないの?」
「話し合いって…そんなの出来っこない。もう敵はガリヤ城下町を襲って、今既に交戦中なんだよ!」
「ガリヤ城下町、大丈夫かなぁ。ケデロさん、元気かな」
「あの人なら大丈夫だよ。あんなに格好良い人、見たことないもの」
それに、と少年は笑った。
「こっちには、リビア様もついてるんだもの!リビア様とケデロさんが揃えば敵なしだよ」
城の一室で、神官は悲しげに呟いた。
「やはり無知とは罪か。リビア」
リビアはにやけながら窓から庶民を見下ろした。陽気な街だ。呑気な街だ。
「そうだと思いますよ」
「…」
神官は俯いた。
「どうしたんです。まさか」
リビアは神官に近づき、見つめた。
「今更怖気づいたとか…?」
「…そうではない」
神官はフーっと息を吐いた。
「私にも君のような力が欲しいと思ったのだ」
「こんなもの、何に使うのです」
「蹂躙と殺戮」
リビアは思わず顔を引きつった。この男はいかれてると思った。
「…辞めたほうが良いと思いますけどね」
「ほう。じゃあ君はどう使うんだ」
リビアは考えた。
「…イミカの虐待?」
神官は思わず顔を引きつった。この女はいかれてると思った。
「ま、まぁ良い。とにかく国民には謎の勢力が攻めてきた、とだけ伝えた。『謎の勢力』だ」
「たちが悪いですね」
「なんとでも言え。まさか我々が悪側だとは考えてもいないだろうな、国民は」
リビアはちょっと驚いたような顔を見せた。
「おや。自分達が悪側だと、わかっているのですか」
「当たり前だ。平和の崩壊など、悪以外の何者でも無いのだから」
「ではなぜ…?」
神官は曇天を拝んだ。
「我々は神の思惑を遂行するのみだ」
「神官様」
扉が開いた。神官とリビアは振り返った。
「どうした」
「『革命軍』という謎の輩が、ムージュ様のもとに現れたそうです」
「なんだ、それは。殺したか」
「はい」
神官はリビアを見た。
「どう思う」
「どうって…一応調べておくのが良いのでは」
神官は頷いた。扉は再び閉まった。
「面倒だな」
リビアは空をうっとりと見つめていた。神官はリビアを睨んだ。
「おい、どうしたんだ呆けて」
「あ…。いえ、イミカから花を貰ったのですよ」
リビアは嬉しそうに懐から花を取り出した。可愛らしい、黄色い百合だった。
「へえ、それは良かったな」




